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LGのスマホ撤退で韓国の電子部品消費量が減少する問題まとめ

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LGエレクトロニクスのロゴ

2021年4月、韓国財閥グループの一つLGエレクトロニクス(LG電子)がスマートフォン事業から撤退すると発表。

2015年くらいからスマホ部門の赤字が慢性化。累積で約45億ドル(約4700億円)の赤字を抱えていたとされ、将来的に利益が出る見込みがないので撤退。

赤字部門を整理するのはLGにとっては正しい判断かもしれないが、韓国のエレクトロニクス産業の物量やパワーが弱まっていくことは間違いない。今回はそのあたりの破壊力を確認。

販売台数とシェア

LGスマホの販売シェアはどれくらいで、いつから損失が増えていったのか。2012年からのデータ。(営業利益データは2015年から)

LGのスマホ販売台数の推移と営業利益の推移
年度 販売台数 世界シェア 営業利益
2012年 2665万台 4.0%
2013年 4770万台 4.9%
2014年 7800万台 6.0%
2015年 5974万台 4.1% -1009億ウォン(赤字)
(-101億円)
2016年 5513万台 3.7% -1兆2590億ウォン(赤字)
(-1259億円)
2017年 5578万台 3.8% -7211億ウォン(赤字)
(-721億円)
2018年 4590万台 3.2% -7901億ウォン(赤字)
(-790億円)
2019年 3400万台 2.5% -1兆120億ウォン(赤字)
(-1012億円)
1ウォン=0.1円で換算。
なお、スマホ撤退する2020年度の販売台数が2500万台。売上高は5兆2171億ウォン(約5100億円)。

規模拡大が裏目

LGの戦略はスケールメリット(規模の優位性)をいかした勝負をしようとしていた。

サムスンなどでも同様だが、韓国企業は市場規模が大きい分野に素早く集中的に投資して一気にシェアを囲い、他社を排除して市場を寡占化し、最終的に安定的な利益を確保しようとする戦略がある。

半導体メモリのDRANやNANDフラッシュでもそれをやってきたワケで、現在は車載バッテリーなどでもそれをやっている。

しかし、2015年ごろから中国企業の低価格スマホの生産量が急増したので、LGはしだいに自社の生産量と販売量のギャップが生じ、大量の在庫を抱えるように。そして、2016年には-1兆2590億ウォン(-1200億円)の赤字を出してしまう。

販売数としては2014年に7800万台、2015年は6000万台近く売り上げているが、しだいに業界で地位を確立してきたシャオミ、ファーウェイ、OPPOなどの中国企業との低価格競争に負けて販売台数が下がっていく。

そして、2019年には2014年と比較して4000万台以上も販売台数が減少。利益が出るどころか赤字。好転する見込みがなく撤退。損失額は累積で約45億ドル(約4700億円)。

韓国内のシェア

以下の画像は韓国国内の2020年のスマホシェア。

韓国内のスマホシェア

出所:カウンターポイント

LGは韓国内でも13%のシェアしかなかった模様。愛国心が強いはずの韓国人でさえ買わないのであればしょうがない。

なお、韓国では売れてるメーカーがサムスン・アップル・LGの3社しかないらしい。LGが撤退する今後はサムスンとアップルの2社だけの市場になるのだろうか。韓国は5000万人もいる市場なのだが。

市場規模

LGのスマホ事業は、好調時は1兆円以上の売上があったが、最後の年となった2020年度の売上高は5100億円まで落ち込んだ。LGのスマホ撤退は、この売上高がごっそり無くなるということ。

スマホの市場規模は2019年のデータでは、年間14億台ほど生産され、経済規模は約7,150億米ドル(日本円で78兆円)とされる。

エレクトロニクス産業の世界市場規模が約200兆円といわれるので、スマホ市場は電子部品などにおいてもかなりの物量だということがお分かりいただけるはず。韓国LGはこれを諦めることに。いつもの反日で乗り切るわけにもいかない。

物量を失うことに

韓国は、外貨獲得や雇用を含め、モノの輸出入で成り立っている貿易依存が高い国。そして、LGのスマホ撤退は「韓国企業がモノのやり取りをする貿易の物量が減る」ということになる。

以下はスマホの主要部品となるが、LGエレクトロニクスがスマホ撤退すればその部品の必要量がなくなることに。

スマホの主要部品

  • ディスプレーとタッチスクリーン
  • CPU
  • DRAM
  • NANDフラッシュメモリ
  • イメージセンサー
  • カメラ
  • ベースバンドプロセッサー
  • wifiモジュール・Bluetoothなどの無線通信関連
  • インターフェース(イヤホンジャック、USBなどの接続部分)
  • バッテリー
  • パワーマネージメント
  • オーディオ関連

上記の他にも「組み立て人件費」「販売人件費」「輸送・物流」なども重要。

こういったスマホ関連の経済波及効果はエレクトロニクス産業の市場規模においてもかなりの割合を占める。そう考えるとLGがスマホ生産を止めるというのは韓国経済にとってかなり破壊力がある話し。

雇用消失

LGスマホ撤退が韓国にとってかなり痛いのが雇用消失。基本的に事業撤退は会社の規模の縮小であり、それは従業員の縮小だったりする。

事業撤退にともなう約3000人くらいの従業員は配置転換でカバーするとLGは表明しているが、いずれリストラされたり、新規雇用が減ったりするといった調整現象は必ず起こる。韓国はもともと失業率が高い事情があるが、追い打ちをかける形となった。

安全保障パワーの低下

情報通信産業のパワーと、防衛・安全保障のパワーは比例するとされる。例えば台湾をアメリカが守ろうとするのも台湾の半導体産業が強いことが理由の一つだが、同様に韓国も電子産業が強いことが安全保障につながっている。

しかし、今回のLGスマホ撤退は韓国の情報通信産業の衰退であり、安全保障力が弱くなる一つの要因といえる。あとはサムスンのスマホと半導体メモリ事業が弱くなれば、韓国はアメリカからも「守る価値もない国」と判断されてしまう可能性アリ。

なお、サムスンの稼ぎ頭であるスマートフォンや半導体メモリもシェアが下がり続けている。

中国による韓国の属国化

中国は国力の弱い国の国債を買い続けて支配力を強めようとする意志をもっているが、韓国に対しても例外ではない。韓国国債をダントツで買っているのが中国であることがその証明だったりする。

中国は韓国への影響力を高めるために、サムスンやLGからスマホ、テレビ、半導体、ディスプレー、バッテリーなどの電子製品のシェアを奪いたいと考えており、すでに中国企業はサプライチェーンから韓国を外すような形が組まれていたりする。

つまり、LGスマホ撤退で韓国企業のパワーが減ってしまうということは、中国に飲み込まれる勢いが増してしまうということだったりする。どうなることやら。

完成品メーカーからサプライヤー専業へ

LGはスマホ製造から撤退したことで今後はスマホ部品の「サプライヤー」としてのビジネスとなっていく。LGグループが作っている主なスマホ部品は以下。

  • 有機ELパネル(LGディスプレー)
  • バッテリー(LG化学から分社化したLGエネルギーソリューション)
  • カメラモジュール(LGイノテック)

有機ELパネル

2019年のデータによると、LGディスプレーが生産するスマホ向け有機ELパネルシェアは15%ほどでサムスン(73%)と分け合っている状況。

スマホ撤退で有機ELパネルを自社製品に採用することができなくなったわけだが、それでも今後LGはスマホ用の有機ELパネルの生産を増やしていくと表明している。だが、今後は2021年からアップルのサプライヤー入りした中国BOEが追い上げてきているので占有率も変化していくはず。

LGディスプレーは、中国との競争に負けてテレビ向けの液晶パネルの生産縮小を表明しているが、それと同じ現象が有機ELパネルでも起こる可能性大。さらに有機ELの歩留り(良品率)が悪いようで、あまり利益が出ていない模様。

LGディスプレーの業績推移
年度 売上高・収益 営業利益(営業損失)
[営業利益率(%)]
2018年 24兆3366億ウォン
(2兆4336億円)
922億ウォン
(92億円)
[0.4%]
2019年 23兆4762億ウォン
(2兆3476億円)
-1兆3587億ウォン(赤字)
(-1358億円)
[-5.8%]
2020年 24兆2301億ウォン
(2兆4230億円)
-291億ウォン(赤字)
(-29億円)
[-0.1%]
1ウォン=0.1円で換算。

赤字が続く理由としては、液晶パネルで中国企業との価格競争に敗北しているため。

利益が出ない部分を有機ELパネルでカバーしたいところだが、まだまだ生産量が低く、さらに歩留り(製造良品率)が悪くて利益が出にくい状況。

バッテリー

スマホ向けバッテリー出荷量シェア

出所:テクノシステムリサーチ

スマホ向けバッテリーは、2017年のトップシェアは日本のTDKの香港子会社ATLで27%、2位サムスン15%、3位LG化学が14%。

LGは14%のシェアをもっているが、スマホ撤退によって自社スマホに採用することができなくなり、他社に販路を確立していくことになる。

顧客は必然的に中国企業になるが、中国はライバルの韓国企業をサプライチェーンから外したい事情があるので今後どうなることやら。というワケ。

カメラモジュール

2019カメラモジュール売上ランキング

出所:Yole Developpement

2019年のランキングでは、イメージセンサー(半導体)の1位がソニーだが、カメラモジュール分野となると首位がLGイノテックという状況。

LG電子がスマホ撤退したので、これもバッテリーと同様にすべて他社に向けて生産していくことになる。

韓国は資金力や技術力をもつ外国企業と戦うために財閥企業にリソースを集中させて経済成長してきたわけだが、多くのビジネスが財閥企業に集中しているため、顧客となる企業がライバル企業となるケースが多い。

そういった事情がある中でサプライヤーとしての地位を安定的なものにすることができるのだろうか。嫌な予感。

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