Intel Corporationの連結決算:通年の売上推移
年度 | 売上高・収益 | 営業利益 [営業利益率(%)] | 純利益・最終損益 [純利益率(%)] |
---|---|---|---|
1968年 | 2672ドル (7月18日インテル設立) | ||
1969年 | 56万ドル (初製品SRAM発表) | ||
1970年 | 424万ドル (世界初DRAM発表) | -145万ドル [-34.2%] | -97万ドル [-22.9%] |
1971年 | 943万ドル (世界初マイクロプロセッサ発表) | -51万ドル [-5.4%] | 91万ドル [9.7%] |
1972年 | 2341万ドル (DRAM量産開始) | 406万ドル [17.3%] | 308万ドル [13.2%] |
1973年 | 6617万ドル | 1914万ドル [28.9%] | 921万ドル [13.9%] |
1974年 | 1.34億ドル | 0.41億ドル [30.6%] | 0.19億ドル [14.2%] |
1975年 | 1.36億ドル | 0.33億ドル [24.3%] | 0.16億ドル [11.8%] |
1976年 | 2.26億ドル | 0.51億ドル [22.6%] | 0.25億ドル [11.1%] |
1977年 | 2.82億ドル | 0.63億ドル [22.3%] | 0.31億ドル [11.0%] |
1978年 | 3.99億ドル | 0.85億ドル [21.3%] | 0.44億ドル [11.0%] |
1979年 | 6.61億ドル | 1.49億ドル [22.5%] | 0.77億ドル [11.6%] |
1980年 | 8.54億ドル | 1.83億ドル [21.4%] | 0.96億ドル [11.2%] |
1981年 | 7.88億ドル (IBMから世界標準となったPC発表) | 0.29億ドル [3.7%] | 0.27億ドル [3.4%] |
1982年 | 8.99億ドル | 0.28億ドル [3.1%] | 0.30億ドル [3.3%] |
1983年 | 11.21億ドル | 1.38億ドル [12.3%] | 1.16億ドル [10.3%] |
1984年 | 16.29億ドル | 2.50億ドル [15.3%] | 1.98億ドル [12.2%] |
1985年 | 13.64億ドル (DRAMから撤退) | -0.60億ドル [-4.4%] | 0.016億ドル [0.1%] |
1986年 | 12.65億ドル | -1.95億ドル [-15.4%] | -1.73億ドル [-13.7%] |
1987年 | 10.34億ドル | 2.46億ドル [23.8%] | 2.48億ドル [24.0%] |
1988年 | 28.74億ドル | 5.94億ドル [20.7%] | 4.53億ドル [15.8%] |
1989年 | 31.27億ドル | 5.57億ドル [17.8%] | 3.91億ドル [12.5%] |
1990年 | 39.21億ドル | 8.58億ドル [21.9%] | 6.50億ドル [16.6%] |
1991年 | 47.79億ドル | 10.80億ドル [22.6%] | 8.19億ドル [17.1%] |
1992年 | 58.44億ドル (半導体売上高で世界トップへ) | 14.90億ドル [25.5%] | 10.67億ドル [18.3%] |
1993年 | 87.82億ドル | 33.92億ドル [38.6%] | 22.95億ドル [26.1%] |
1994年 | 115.21億ドル | 33.87億ドル [29.4%] | 22.88億ドル [19.9%] |
1995年 | 162.02億ドル (Windows95発売→PC普及へ) | 52.52億ドル [32.4%] | 35.66億ドル [22.0%] |
1996年 | 208.47億ドル | 75.53億ドル [36.2%] | 51.57億ドル [24.7%] |
1997年 | 250.70億ドル | 98.87億ドル [39.4%] | 69.45億ドル [27.7%] |
1998年 | 262.73億ドル | 83.79億ドル [31.9%] | 60.68億ドル [23.1%] |
1999年 | 293.89億ドル | 97.67億ドル [33.2%] | 73.14億ドル [24.9%] |
2000年 | 337.26億ドル | 103.95億ドル [30.8%] | 105.35億ドル [31.2%] |
2001年 | 265.39億ドル | 22.56億ドル [8.5%] | 12.91億ドル [4.9%] |
2002年 | 267.64億ドル | 43.82億ドル [16.4%] | 31.17億ドル [11.6%] |
2003年 | 301.41億ドル | 75.33億ドル [25.0%] | 56.41億ドル [18.7%] |
2004年 | 342.09億ドル | 101.30億ドル [29.6%] | 75.16億ドル [22.0%] |
2005年 | 388.26億ドル | 120.90億ドル [31.1%] | 86.64億ドル [22.3%] |
2006年 | 353.82億ドル (AmazonクラウドAWS設立) | 56.52億ドル [16.0%] | 50.44億ドル [14.3%] |
2007年 | 383.84億ドル (世界初のスマホiPhone発売開始) | 82.16億ドル [21.4%] | 69.76億ドル [18.2%] |
2008年 | 375.86億ドル | 89.54億ドル [23.8%] | 52.92億ドル [14.1%] |
2009年 | 351.27億ドル | 57.11億ドル [16.3%] | 43.69億ドル [12.4%] |
2010年 | 436.23億ドル (MSクラウドAZURE設立) | 155.88億ドル [35.7%] | 114.64億ドル [26.3%] |
2011年 | 539.99億ドル | 174.77億ドル [32.4%] | 129.42億ドル [24.0%] |
2012年 | 533.41億ドル | 146.38億ドル [27.4%] | 110.05億ドル [20.6%] |
2013年 | 527.08億ドル | 122.91億ドル [23.3%] | 96.20億ドル [18.3%] |
2014年 | 558.70億ドル | 153.47億ドル [27.5%] | 117.04億ドル [20.9%] |
2015年 | 553.55億ドル | 140.02億ドル [25.3%] | 114.20億ドル [20.6%] |
2016年 | 593.87億ドル | 128.74億ドル [21.7%] | 103.16億ドル [17.4%] |
2017年 | 627.61億ドル | 179.36億ドル [28.5%] | 96.01億ドル [15.2%] |
2018年 | 708.48億ドル | 233.16億ドル [32.9%] | 210.53億ドル [29.7%] |
2019年 | 719.65億ドル | 220.35億ドル [30.6%] | 210.48億ドル [29.2%] |
2020年 | 778.67億ドル | 236.78億ドル [30.4%] | 208.99億ドル [26.8%] |
2021年 | 790.24億ドル | 194.56億ドル [24.6%] | 198.68億ドル [25.1%] |
2022年 | 630.54億ドル (NANDフラッシュメモリ事業を売却) | 23.34億ドル [3.7%] | 80.14億ドル [12.7%] |
2023年 | 542.28億ドル | 0.93億ドル [0.2%] | 16.89億ドル [3.1%] |
出所:intel。本決算期は12月末。
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平均利益率
1995年から2022年までのインテルの営業利益率の平均が26.3%。比較として、エヌビディアの2003年から2023年までの営業利益率の平均が16.2%。AMDの1995年から2022年までの営業利益率の平均が0.4%。
会社の動向
- インテルの設立は1968年。「ムーアの法則」で知られるゴードン・ムーアなどにより設立。
- 1969年、インテルの初製品となったSRAMを発表。1970年にDRAMを発表し、1972年から世界初のDRAM量産。現在の中核であるマイクロプロセッサは、1971年に日本のビジコン社と共同で世界初開発。
- 1985年に最終赤字を出し、DRAMから撤退。極端に財務が悪化していたわけではないが、NECや日立などの日本勢に勝てない事を認識していた事や、マイクロプロセッサへの開発に注力するため、決断が速かった。インテル初の戦略転換。
- なお、1985年のインテルDRAM撤退の時期に「日本脅威論」が大きくなり、当時インテルの社長が米国政府に呼びかけ、「プラザ合意(円安ドル高是正)」や、1986年~1996年の「日米半導体協定」につながる。
- 1991年、インテル社の有名な「Intel Inside」、日本語で「インテルはいってる」の宣伝開始。
- 1992年に日本のNECを抑えて半導体メーカー売上高で世界トップになる。それ以降、ほとんどの年でインテルが半導体市場で世界首位。現在はサムスンと首位争い。
- 1995年、Windows95発売によりパソコンが本格普及。パソコン向けCPUで絶対的な存在となり業績拡大。
- 近年は、競合のAMDやNVIDIA(エヌビディア)に劣勢となる問題を抱え、さらに製造における問題も市場に認識され、株価もやや不調。
- 2022年、NANDフラッシュメモリ事業を韓国SKハイニックスに売却。この年に売上高が大幅減少。
- ファウンドリー競合の業績推移
- TSMC
- 台湾UMC
- サムスン(半導体事業)
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Intel Corporationの財政・経営状況
年度 | 総資産 [現金・手元資金] |
負債総額 [有利子負債] |
自己資本・純資産 [自己資本比率(%)] |
---|---|---|---|
1968年 (設立年) |
263万6916ドル | 258万3010ドル | 5万3906ドル [2.0%] |
1970年 | 700万ドル [282万ドル] |
167万ドル [19万ドル] |
533万ドル [76.1%] |
1975年 | 1.03億ドル [0.038億ドル] |
0.29億ドル [なし] |
0.74億ドル [71.8%] |
1980年 | 7.67億ドル [0.156億ドル] |
3.35億ドル [なし] |
4.32億ドル [56.3%] |
1985年 | 21.51億ドル [1.88億ドル] |
7.30億ドル [3.59億ドル] |
14.21億ドル [66.1%] |
1990年 | 53.76億ドル [16.19億ドル] |
17.84億ドル [5.91億ドル] |
35.92億ドル [66.8%] |
1995年 | 175.04億ドル [14.63億ドル] |
53.64億ドル [11.25億ドル] |
121.40億ドル [69.4%] |
2000年 | 479.45億ドル [29.76億ドル] |
106.23億ドル [10.85億ドル] |
373.22億ドル [77.8%] |
2005年 | 483.14億ドル [73.14億ドル] |
122.32億ドル [24.19億ドル] |
361.82億ドル [74.9%] |
2010年 | 631.86億ドル [218.85億ドル] |
137.56億ドル [20.77億ドル] |
494.30億ドル [78.2%] |
2015年 | 1030.65億ドル [253.13億ドル] |
410.83億ドル [226.38億ドル] |
619.82億ドル [60.1%] |
2020年 | 1530.91億ドル [238.95億ドル] |
720.53億ドル [364.01億ドル] |
810.38億ドル [52.9%] |
2021年 | 1684.06億ドル [292.53億ドル] |
730.15億ドル [381.01億ドル] |
953.91億ドル [56.6%] |
2022年 | 1821.03億ドル [283.38億ドル] |
806.80億ドル [420.51億ドル] |
1014.23億ドル [55.7%] |
2023年 | 1915.72億ドル [250.34億ドル] |
816.07億ドル [469.78億ドル] |
1099.65億ドル [57.4%] |
出所:intel
- 1968年の設立に関して、ベンチャーキャピタリストから250万ドルを調達後、事業開始。
- 1971年にナスダック株式上場。開発とファブ建設に向けて市場から資金調達。そこからは市況を見ながら安定的な開発と設備投資を続け、大きな経営難に陥る事なく成長。
- インテルの財務は今のところ安定しており、倒産リスクは少ないと言えるが、ライバルとの技術競争で負けてしまえば業績の低迷が続き、さらに工場が不良資産になってしまう大きなリスクを抱える。
連結社員数と開発投資について
年度 | 従業員数(連結) | 設備投資費 | 研究開発費 |
---|---|---|---|
1968年 | 42人(事業開始) | – | – |
1970年 | 211人 | – | 130万ドル |
1975年 | 4600人 | 1110万ドル | 1454万ドル |
1980年 | 1万5900人 | 1.52億ドル | 0.96億ドル |
1985年 | 2万1300人 | 2.36億ドル | 1.95億ドル |
1990年 | 2万3900人 | 6.80億ドル | 5.17億ドル |
1995年 | 4万1600人 | 35億ドル | 12億ドル |
2000年 | 8万6100人 | 67億ドル | 38億ドル |
2005年 | 12万4000人 | 61億ドル | 56億ドル |
2010年 | 8万2500人 | 52億ドル | 65.76億ドル |
2015年 | 10万7300人 | 73億ドル | 121.28億ドル |
2020年 | 11万600人 | 142億ドル | 135.56億ドル |
2022年 | 13万1900人 | 248億ドル | 175.28億ドル |
2023年 | 12万4800人 | 160.46億ドル |
出所:intel
- インテルは市況に応じて頻繁に従業員リストラをしてきた歴史がある。年間で数千人レベルから、2~3年かけて1万人単位でリストラした事もあった。
- 近年、設備投資額が上がっているが、これは新ファブ建設や、微細化製造に向けた製造装置の購入によるもの。
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インテルの売上の中核:パソコン向けとデータセンター向けの売上比率
パソコン向けCPU | サーバー/AI向け半導体 | その他 |
---|---|---|
50.3% | 30.4% | 19.7% |
出所:intel
売上構造・セグメント別の成績
営業利益がピークだった2020年と、業績悪化が鮮明となった2022年度の部門別の業績を比較。
部門 | 2020年/売上高 [営業利益/利益率(%)] |
2022年/売上高 [営業利益/利益率(%)] |
---|---|---|
パソコン向けCPU | 405.35億ドル [158.00億ドル/39.0%] |
317.08億ドル [62.66億ドル/19.8%] |
データセンター/AI | 234.13億ドル [110.76億ドル/47.3%] |
191.96億ドル [22.88億ドル/11.9%] |
ネットワーク・エッジ (ネットワークサービス) |
71.32億ドル [8.46億ドル/11.9%] |
88.73億ドル [7.40億ドル/8.3%] |
モービルアイ (自動運転関連) |
9.67億ドル [3.23億ドル/33.4%] |
18.69億ドル [6.90億ドル/36.9%] |
コンピューティング& グラフィックス |
6.51億ドル [-4.03億ドル/-61.9%] |
8.37億ドル [-17.16億ドル/-205%] |
ファウンドリー (受託製造) |
7.15億ドル [0.45億ドル/6.3%] |
8.95億ドル [-3.20億ドル/-35.8%] |
その他 | 50.91億ドル [-40.09億ドル/-78.7%] |
1.96億ドル [-56.14億ドル/-2864%] |
出所:intel
- インテルの売上の大半がCoreプロセッサーやCeleronなどのPC向けCPU。やはり基本的にはパソコン用CPUがインテルの収益の軸。
- 2022年度は、コロナ巣篭り需要も落ち着き、さらにインフレ不況でパソコン出荷数が極端に落ち込んだが、それでもパソコン用CPU部門の利益率は19.8%を確保。これがインテルの強み。
- サーバ用CPUのXeonプロセッサを軸に、データセンター市場で売上を伸ばしたい所だが、ライバルのAMDやNVIDIAの製品も良いため苦戦中。
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インテルの企業買収や事業撤退などの動向
2015年米国「アルテラ」を167億ドルで買収。アルテラはチップ内部のロジックをソフトによって書き換え可能な集積回路「FPGA」に強みをもつ。
2017年自動運転システム開発大手のイスラエルのモービルアイを約153億ドルで買収。
2019年AI処理チップメーカーのイスラエル「Habana Labs(ハバナ・ラボス)」を約20億ドルで買収。
2020年2005年に米国マイクロンと共同開発で参入したNANDフラッシュメモリー事業を、韓国の「SKハイニックス」に約90億ドルで売却。中国工場も売却。
2022年オハイオ州で新工場建設へ。2025年の稼働を予定。まずは200億ドルの投資で、最大総投資額1000億ドル。
2022年ドイツで最先端工場新設を発表。投資額は170億ユーロ。また、ヨーロッパ全体で880億ドルの投資を発表。
2022年インテルとマイクロンが共同開発した不揮発性メモリ「Optaneメモリ」の撤退を宣言。
- 近年は、車載向け、通信ネットワーク、セキュリティ、組み込み系、画像認識などを手掛ける企業を積極的に買収。
インテルの問題
- 巨大データセンターを所有する企業は爆発的な消費電力を抑えるために「少しでも良い性能の半導体」を採用する必要がある。その「少しでも良い性能」でインテルがAMDやNVIDIAに性能やコストで劣勢になっている事が問題となっている。
- 成長分野であるデータセンター・AI・機械学習向け「GPU」分野では、エヌビディアが標準的な存在となってしまったため、そこでインテルがシェアを確保する事が難しい。
- ライバルのAMDは「チップレット」という技術を採用し、製造コストを抑えながら性能を上げる事ができる(説明省略)。さらにAMDは工場を持たず、製品は微細化を突き進む台湾TSMC(受託製造メーカー)に委託。つまり、AMDは経営的にもインテルよりリスクが低く、価格競争に勝てる体質をもつ。
- インテルもAMDに見習って「チップレット」に追随するが、最先端プロセス半導体における製造良品率に問題を抱える。TSMCへの委託依存度が拡大していく懸念もあり、その場合は工場が不良資産化してしまう可能性もある。投資家は利益率悪化を恐れている。
- 設計から製造(工場保有)までを手掛けるインテルは、設計専門のAMDやNVIDIA、そして製造においてはTSMCの3つの存在にパフォーマンスで勝たなければならないが、それが簡単ではない。
- Amazon、Google、クアルコムなどもデータセンター向け半導体に参入。競争激化の運命。
- インテルは、スマートフォン/タブレット向けチップの開発に乗り遅れた事で、その分野では存在感がない。モバイル向けで売上を伸ばしていく事は難しい。
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