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ルネサスエレクトロニクスの売上高と営業利益、利益率の業績推移

半導体, 業績推移

ルネサスエレクトロニクス

Renesas Electronicsの決算(通年)の売上推移

ルネサス・エレクトロニクスの売上高・営業利益・純利益・利益率の業績推移
年度 売上高・収益 営業利益
[営業利益率(%)]
純利益・最終損益
[純利益率(%)]
2010年 1兆1379億円 145億円
[1.2%]
-1150億円(赤字)
[-10.1%]
2011年 8831億円 -567億円(赤字)
[-6.4%]
-626億円(赤字)
[-7.1%]
2012年 7857億円 -232億円(赤字)
[-2.9%]
-1676億円(赤字)
[-21.3%]
2013年 8330億円 676億円
[8.1%]
-53億円(赤字)
[-0.6%]
2014年 7910億円 1044億円
[13.1%]
824億円
[10.4%]
2015年 6932億円 1037億円
[15.0%]
862億円
[12.4%]
2016年 4710億円
(9か月間の成績)
547億円
[11.6%]
441億円
[9.4%]
2017年 7802億円 784億円
[10.0%]
771億円
[9.9%]
2018年 7565億円 681億円
[9.0%]
509億円
[6.7%]
2019年 7182億円 68億円
[0.9%]
-59億円(赤字)
[-0.9%]
2020年 7156億円 651億円
[9.0%]
456億円
[6.4%]
2021年 9944億円 1836億円
[18.4%]
1272億円
[12.8%]
出所:ルネサスエレクトロニクス。2016年度から決算期を3月31日から12月31日に変更。2016年度は4月1日から12月31日までの9か月間の成績なので売上規模が少ないことに注意。
  • 経営統合から改革に着手。再建中にリストラを重ね、2014年度に統合後初めて純利益で黒字達成。
  • 売上高が伸びていないのは、利益が低い製品からの撤退や、製造の一部をファウンドリー(製造受託企業)に委託するようになっているため。
  • 現在のルネサスは利益率も良くなり、欧米優良企業の買収を連発できるくらいに財務が安定するようになっている。

経営状況

ルネサスエレクトロニクスの財務状況の推移(2010年以降)
年度 総資産 負債総額 自己資本・純資産
[自己資本比率(%)]
2010年 1兆1450億円 8539億円 2911億円
[24.8%]
2015年 8494億円 4677億円 3817億円
[44.7%]
2020年 1兆6089億円 9893億円 6196億円
[38.5%]
2021年 2兆4262億円 1兆2714億円 1兆1549億円
[47.6%]
  • 2010年から2015年にかけて総資産が縮小しているが、工場リストラなどが主な要因。
  • 2015年から現在までは、安定的な自己資本比率を維持しながら資産規模を拡大。
  • 一時は「ルネサスは危ない」「倒産する」とか、いろいろ言われていた時期もあったが、現在の負債比率や自己資本比率を見れば、経営破綻などの言葉が出るような状況とは程遠い。

かつての2社の業績推移

ルネサスエレクトロニクスは、日立と三菱の統合で誕生した「ルネサステクノロジー」と、「NECエレクトロニクス」の2社が統合して誕生したが、経営統合する前のその2社の売上高推移を確認。

ルネサス・テクノロジーとNECエレクトロニクスの売上高の業績推移
年度 NECエレクトロニクス
売上高
ルネサステクノロジー
売上高
2003年 7119億円 9856億円
2004年 7080億円 1兆24億円
2005年 6459億円 9060億円
2006年 6922億円 9526億円
2007年 6877億円 9505億円
2008年 5464億円 7261億円
2009年 4105億円 4825億円
  • 「NECエレクトロニクス」と「ルネサステクノロジー」は、統合するまで共に赤字を出すことが多かった。
  • 世界的にも競争が激しい中で、日本企業だけでも競争が激しかった。(そして再編に向かう)

リストラに着手

2010年4月から発足したルネサスエレクトロニクス。黒字化のために、誕生から4~5年くらいはリストラを断行している。

  • 2011年から2015年くらいまで、48000人いた従業員のうち、27000人の人員削減を決行。
  • ルネサスの平均年収を750万円とすると、27000人×7500000円=2025億円の人件費削減。
  • 2014年、山形県鶴岡工場をソニーに75億円で売却。
  • 2018年、滋賀工場を閉鎖。
  • 2022年、山口工場を閉鎖。

手放した工場はすべて生産性が悪い旧タイプの工場。

「ルネサスにカルロス・ゴーンがいたのか?」と思ってしまうくらいの大胆なリストラ。結果、現在では安定して高利益を出すようになっている。

買収で成長加速

改革により経営難を乗り越えたルネサス。最終損益が黒字化した2014年以降、将来に向けた企業買収を模索していた。そして、2017年から欧米の半導体企業を次々と買収している。

2017年アメリカのインターシルを約32億ドルで買収。
2019年アメリカのIDTを63億ドルで買収。
2021年イギリスのダイアログ・セミコンダクターを約48億ユーロで買収。
2021年イスラエルの新興企業Celenoを3億1500万ドルで買収。

インターシル買収

2017年にルネサスが32億ドルで買収したアメリカのインターシルは以下のような会社。

  • 主要製品:電源IC、アナログIC
  • 従業員数:約1,100名
  • 2010年の売上高8億2000万ドル
  • 2015年の売上高5億2000万ドル(5年前より減ってる)

業績悪化していたところをルネサスが32億ドルで買収。これは「失敗か?」として買収発表後に一時的に株価が下がった。この買収は専門家からも「どのような相乗効果が得られるのか?」と批判している人がちらほらいた模様。

IDT買収

2019年、アナログ半導体に強いアメリカのインテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(Integrated Device Technology:IDT)を63億ドルで買収。おおまかな効果と狙いは以下。

  • デジタル回路とアナログ回路を混載するミックスドシグナル技術の強化。(この技術は難しく、特に生命に関わる自動車分野では高い信頼が求められる)
  • ルネサスが元々もつアナログ製品のラインナップ強化。
  • IDTの技術とルネサスがもつマイコンやパワーデバイスとの組み合わせ。
  • 情報化社会に向けたIDTの無線通信関連技術の獲得。IDTの通信チップはスマホにもよく搭載されている。

ミックスドシグナルIC市場は今後15兆円~20兆円規模になると予想されている分野。ルネサスは確実に英知と技術を拡大。

ダイアログ・セミコンダクター買収

2021年、ルネサスはアナログ半導体に強いDialog Semiconductor(ダイアログ・セミコンダクター)を約48億ユーロ(6240億円)で買収。

  • ダイアログがもつ高性能アナログ製品がラインナップに加わる。
  • 低電力ミックスドシグナル製品とルネサスの組み込みプロセッサやアナログ・パワー製品と統合する事による相乗効果。
  • ダイアログが手掛けるWi-FiやBluetooth用チップの強化。
  • 5G通信、産業機器、モバイル、自動車、EV、医療向け機器などへの供給拡大を見込む。

このダイアログ・セミコンダクターは営業利益率20%の企業。柴田社長は狙いを定めていたようだが、この買収はかなり有能。

新興企業Celeno買収

2021年10月、イスラエルのCelenoを3億1500万ドルで買収している。柴田社長によると、この買収はダイアログ買収でカバーできなかった先端Wi-Fi技術を強化する目的とのこと。

アナログ製品の強化

おおまかに言うと、一連の買収は自動車のEV化、電力需要の増加、デジタル社会の発展に向けて、アナログ製品やパワーデバイス、通信系を強化する目的だったという事。特にアナログ製品への意識が強い。

アナログICは地味な存在なのであまり注目されないが、実は世界で生産個数が最も多いデバイスだったりする。アナログICの出荷個数は2021年度で2151億個。

比較として、電子製品に基本必須となるDRAMの出荷個数が220億個ほどなので、アナログデバイスはDRAMの10倍という巨大ボリューム。

なお、アナログ半導体の世界トップがテキサス・インスツルメンツ(TI)だが、もしかするとルネサスはTIへの意識が強いのかもしれない。

マイコンでは業界トップ

ルネサスというと「車載向けマイコン」というイメージ。実際に、マイコンでは世界トップシェア。(2020年)

2020年度の車載マイコン市場シェア(出所:IC Insights)
1位ルネサス(日本) 26.7%
2位NXPセミコンダクターズ(オランダ) 26.3%
3位インフィニオン(ドイツ) 16.9%
4位テキサス・インスツルメンツ(アメリカ) 9.8%
5位マイクロチップ・テクノロジー(アメリカ) 6.9%

世界中の自動車メーカー、特にトヨタ、ホンダ、日産などの日系自動車企業はルネサスのマイコンを使っている。

車載向け全体でも上位

車載向け半導体は、マイコン、パワー半導体、電源IC、アナログ半導体、メモリ、センサーなどいろいろあるが、車載向け半導体すべての市場規模は2020年時点で350億ドル(約4兆円)。そのうちルネサスエレクトロニクスのシェアは8.5%。

2020年度の車載半導体シェア(出所:IC Insights)
1位インフィニオン(ドイツ) 13.2%
2位NXPセミコンダクターズ(オランダ) 10.9%
3位ルネサス(日本) 8.5%
4位テキサス・インスツルメンツ(米国) 8.3%
5位STマイクロ・エレクトロニクス(スイス) 7.5%

地震は大丈夫なのか

ルネサスには高い生産量をもつ茨城那珂工場が地震で頻繁に操業停止してしまう「供給不安」を抱える。2021年は地震ではなく火災で生産止まってしまった。

ルネサスが保有しているファブはすべてが免震装置が導入されているワケではないので、地震はどうしようもない。顧客から信用を失うのはマズいが、「在庫積み増し」で対応するしかない。

被害額は少ない

実は、地震などによって工場が止まったとしても金額ベースでは被害額はわりと少ない。

  • 地震被害を受けやすい那珂工場の他にも、川尻工場、西条工場、高崎工場など、全国に分散的に製造拠点をもつ。
  • 最近のルネサスは製造の外部委託が増えているので、例え茨城那珂工場一つが停止したところで、思ったほど損失は少ない。

外部委託レベルはどれくらい?

ルネサスの製造における外部委託の割合は全体の30%ほど。70%が自社製造で30%がTSMCなどのファウンドリーが製造。開発コストがかかる製造の一部だけを他社に任せる「ファブライト」という形態。

他社に委託する事で微細化プロセスのための開発コストが抑えられるメリットや、分散的に製造することで地震などの「もしも」のリスクを軽減することができる。

微細化を諦める

半導体にはいろいろな種類があるが、微細化が求められる種類は多額の開発コストや設備投資コストがかかる。そのため、ルネサスは微細化製造技術を追う事は諦めている模様。

その結果、ルネサスの微細化は40nm台までで、20nm台は外部委託という形になるのだろう。

「開発を諦めると競争に負けるのでは?」という意見もあるが、ルネサスのライバルであるインフィニオンやテキサス・インスツルメンツ、STマイクロ、NXPセミコンダクターズなども、おおむね同様の事をやっているため、今のところ問題とはならない。

それらの企業は、製造における微細化技術をもっていたとしても、ビジネス的に「規模の利点」をいかしにくいため、ファウンドリーに委託する事が自然な形となっている。

これから飛躍

ルネサスの時価総額を車載向けビジネスのライバル他社と比較。

2022年4月時点の車載向け半導体企業の株式時価総額の比較
順位 企業 株式時価総額
1位 テキサスインスツルメンツ(米国) 20兆2440億円(1687億ドル)
2位 NXPセミ(オランダ) 5兆7534億円(479億ドル)
3位 インフィニオン(ドイツ) 5兆1958億円(399億ユーロ)
4位 STマイクロ(スイス) 4兆6624億円(388億ドル)
5位 ルネサス(日本) 2兆7876億円
1ドル120円、1ユーロ130円で換算。

2022年4月時点では、ライバル他社と比較してルネサスの企業価値は低い。しかし、利益率の向上や、半導体の重要性が認識されるようになった事などにより、ルネサスの時価総額はインフィニオンやNXPあたりと同じレベルにまで上がっていくはず。

多くの投資家から将来性を確実視されるようになっており、東証上場企業の中でも株価上昇率が高くなっている。ルネサスは半導体の在庫積み増し、投資家は株の買い増し、というワケ。

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