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Renesas Electronicsの連結決算:通年の売上推移
統合前の2社の業績推移
ルネサスエレクトロニクスは、「NECエレクトロニクス」と、2003年に日立と三菱の統合で誕生した「ルネサステクノロジー」の2社が統合して誕生。経営統合する前のその2社の売上高推移から確認。
年度 | NECエレクトロニクス | ルネサステクノロジー(日立+三菱) |
---|---|---|
売上高 [営業利益/利益率(%)] |
||
2003年 | 7119億円 [564億円/7.9%] |
9856億円 [448億円/4.5%] |
2004年 | 7080億円 [331億円/4.7%] |
1兆24億円 [510億円/5.1%] |
2005年 | 6459億円 [-356億円/-5.5%] |
9060億円 [131億円/1.4%] |
2006年 | 6922億円 [-285億円/-4.1%] |
9526億円 [235億円/2.5%] |
2007年 | 6877億円 [51億円/0.7%] |
9505億円 [436億円/4.6%] |
2008年 | 5464億円 [-683億円/-12.5%] |
7027億円 [-965億円/-13.7%] |
2009年 | 4710億円 [-492億円/-10.4%] |
5998億円 [-640億円/-10.7%] |
出所:ルネサスエレクトロニクス
統合後、現在のルネサスの成績が以下。
年度 | 売上高・収益 | 営業利益 [営業利益率(%)] |
純利益・最終損益 [純利益率(%)] |
---|---|---|---|
2010年 | 1兆1379億円 (NEC・日立・三菱の半導体部門を統合して発足) |
145億円 [1.2%] |
-1150億円 [-10.1%] |
2011年 | 8831億円 | -567億円 [-6.4%] |
-626億円 [-7.1%] |
2012年 | 7857億円 | -232億円 [-2.9%] |
-1676億円 [-21.3%] |
2013年 | 8330億円 | 676億円 [8.1%] |
-53億円 [-0.6%] |
2014年 | 7910億円 | 1044億円 [13.1%] |
824億円 [10.4%] |
2015年 | 6932億円 | 1037億円 [15.0%] |
862億円 [12.4%] |
2016年 | 4710億円 (決算期の変更により9か月間の成績) |
547億円 [11.6%] |
441億円 [9.4%] |
2017年 | 7802億円 | 784億円 [10.0%] |
771億円 [9.9%] |
2018年 | 7565億円 | 681億円 [9.0%] |
509億円 [6.7%] |
2019年 | 7182億円 | 68億円 [0.9%] |
-59億円 [-0.9%] |
2020年 | 7156億円 | 651億円 [9.0%] |
456億円 [6.4%] |
2021年 | 9944億円 | 1836億円 [18.4%] |
1272億円 [12.8%] |
2022年 | 1兆5009億円 | 4242億円 [28.3%] |
2566億円 [17.1%] |
2023年 | 1兆4697億円 | 3907億円 [26.6%] |
3370億円 [22.9%] |
2024年 | 1兆3484億円 | 2229億円 [16.5%] |
2190億円 [16.2%] |
出所:ルネサスエレクトロニクス。本決算期は12月末。
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平均利益率
ルネサスの2010年から2024年までの営業利益率の平均が10.6%。
会社の動向
- 2010年4月、NECエレクトロニクスを存続会社として、ルネサステクノロジー(日立+三菱)と合併し誕生。
- 2010年の経営統合から改革に着手。再建中に何度もリストラを重ね、2014年度に統合後初めて営業利益と純利益が共に黒字化。
- 2020年頃まで売上高が伸びていないのは、利益が低い製品からの撤退や、製造の一部をファウンドリー(製造受託企業)に委託するようになったため。
- 2017年以降の海外企業の買収連発により、製品ポートフォリオが拡大。財務の安定化、利益率も上昇傾向。株価も好調。
- 地震や火災などによる工場停止のニュースが多いが、生産拠点が分散されている事や、台湾のファウンドリー企業に委託する割合が増えているため、そこまで大きな損失にならない。
- ルネサスの製品のうち、約7割が自社製造で、約3割が外部委託。競合のインフィニオン(ドイツ)、NXP(オランダ)なども30%ほどを台湾TSMC、UMCなどへ委託。
- ルネサスの微細化プロセスは40nm台まで。最先端分野の開発は諦めているが、生産合理性の問題でライバルも最先端を諦めているため問題にならない。今後も半導体業界では、設計と製造の分業が進むと思われる。
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Renesas Electronicsの財政・経営状況
年度 | 総資産 [現金・手元資金] |
負債総額 [有利子負債] |
自己資本・純資産 [自己資本比率(%)] |
---|---|---|---|
2010年 | 1兆1450億円 [3372億円] |
8539億円 [3782億円] |
2911億円 [24.8%] |
2015年 | 8494億円 [3542億円] |
4677億円 [1573億円] |
3817億円 [44.7%] |
2020年 | 1兆6089億円 [2198億円] |
9893億円 [6937億円] |
6196億円 [38.5%] |
2021年 | 2兆4262億円 [2219億円] |
1兆2714億円 [8313億円] |
1兆1549億円 [47.6%] |
2022年 | 2兆8123億円 [3361億円] |
1兆2748億円 [7700億円] |
1兆5375億円 [54.7%] |
2023年 | 3兆1670億円 [4346億円] |
1兆1614億円 [6509億円] |
2兆55億円 [63.3%] |
出所:ルネサスエレクトロニクス
- 2010年から2015年にかけて総資産が縮小。工場リストラなどが主な要因。
- 2015年から現在までは、安定的な自己資本比率を維持しながら資産規模を拡大。
- 一時は「ルネサスは危ない」「倒産する」とか、いろいろ言われていた時期もあったが、現在の業績や負債比率、自己資本比率を見れば、経営破綻といった言葉が出るような状況ではない。
連結社員数と開発投資について
年度 | 従業員数(連結) | 平均年収 | 設備投資額 | 研究開発額 |
---|---|---|---|---|
2010年 | 46630人 | 748万円 | 435億円 | 2026億円 |
2015年 | 19160人 | 910万円 | 618億円 | 974億円 |
2020年 | 18753人 | 791万円 | 222億円 | 1351億円 |
2023年 | 21204人 | 889万円 | 755億円 | 2335億円 |
出所:ルネサスエレクトロニクス
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国内/外国への収益割合
年度 | 日本 | 中国 | アジア | 欧州 | 北米 | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|
2010年 | 54.5% | 14.8% | 15.7% | 9.0% | 5.7% | 0.4% |
2015年 | 43.8% | 15.9% | 16.6% | 13.9% | 9.3% | 0.5% |
2020年 | 33.7% | 23.6% | 17.7% | 15.6% | 9.1% | 0.3% |
2023年 | 25.6% | 24.4% | 21.1% | 17.8% | 10.6% | 0.4% |
出所:ルネサスエレクトロニクス
- 日本向けへの売上比率が減少し、近年は中国やアジア向けへの売上が増加。
- 欧米の企業を次々と買収した事で、各国への売上状況が大きく変化。
収益構造:セグメント別の収益構造
年度 | 自動車関連 | 産業・インフラ・IoT | その他 |
---|---|---|---|
売上高 [営業利益/利益率(%)] |
|||
2015年 | 3216億円 [非公表] |
3539億円 [非公表] |
176億円 [非公表] |
2020年 | 3410億円 [483億円/14.2%] |
3636億円 [897億円/24.7%] |
110億円 [11億円/10.0%] |
2023年 | 6950億円 [2387億円/34.3%] |
7647億円 [2590億円/33.9%] |
99億円 [34億円/34.3%] |
出所:ルネサスエレクトロニクス
- 全セグメントで利益率が上昇。半導体需要が高い事のほか、海外企業買収により、製品ポートフォリオが拡大している事も優位に働く。
ルネサスは車載向け全体で上位にランクイン
車載向け半導体は、マイコン、パワー半導体、電源IC、アナログ半導体、メモリ、センサーなどいろいろ。その自動車向け全体においてルネサスのシェアは高い。
順位 | 2016年/メーカー [市場シェア(%)] |
2020年/メーカー [市場シェア(%)] |
---|---|---|
1位 | NXPセミコンダクターズ(蘭) [14.0%] |
インフィニオン(独) [13.2%] |
2位 | インフィニオン(独) [10.7%] |
NXPセミコンダクターズ(蘭) [10.9%] |
3位 | ルネサス(日本) [9.7%] |
ルネサス(日本) [8.5%] |
4位 | テキサス・インスツルメンツ(米) [7.8%] |
テキサス・インスツルメンツ(米) [8.3%] |
5位 | STマイクロ(スイス) [7.4%] |
STマイクロ(スイス) [7.5%] |
出所:IC Insights
- 車載向け半導体すべての市場規模は2020年時点で350億ドル(約4兆円)。
- そのうちルネサスエレクトロニクスのシェアは8.5%。約30億ドルの売上シェアをもつ。
マイコンでは業界トップ
ルネサスというと「車載向けマイコン」というイメージ。実際に、マイコンでは世界トップシェア。(2020年)
順位 | 2016年/メーカー [市場シェア(%)] |
2020年/メーカー [市場シェア(%)] |
---|---|---|
1位 | ルネサス(日本) [30.9%] |
ルネサス(日本) [26.7%] |
2位 | NXPセミコンダクターズ(蘭) [27.0%] |
NXPセミコンダクターズ(蘭) [26.3%] |
3位 | テキサス・インスツルメンツ(米) [9.7%] |
インフィニオン(独) [16.9%] |
4位 | インフィニオン(独) [8.7%] |
テキサス・インスツルメンツ(米) [9.8%] |
5位 | マイクロチップ(米) [5.7%] |
マイクロチップ(米) [6.9%] |
出所:IC Insights
- 世界中の自動車メーカー、特にトヨタ、ホンダ、日産などの日系自動車企業はルネサスのマイコンを優先的に採用。
- ライバルのNXPセミ(オランダ)、STマイクロ(スイス)、インフィニオン(ドイツ)などが、日本の自動車メーカーへの営業力を強化中。
アナログ&パワーの世界シェア
年度 | アナログ半導体 [市場シェア(%)] |
パワー半導体 [市場シェア(%)] |
---|---|---|
2017年 | 世界シェア10位 [2.0%] |
世界シェア8位 [4.1%] |
2020年 | 世界シェア10位 [1.5%] |
世界シェア8位 [2.6%] |
出所:インフィニオンの決算報告より引用。
- 2020年度のアナログ半導体の業界トップは、米国のテキサス・インスツルメンツ(TI)でシェアは19.0%。
- 2020年度のパワー半導体の業界トップは、ドイツのインフィニオン(ドイツ)で、シェアは19.7%。
- ルネサスの市場シェアは低いが、アナログICにおいては、2019年から2021年にかけてアナログ半導体に強い企業を次々と買収しているため、今後の市場シェアは上がってくるはず。
発足以降の工場閉鎖やリストラについて
2010年4月から発足したルネサスエレクトロニクス。黒字化のために、誕生から4~5年くらいはリストラを断行。また、生産性が悪い旧タイプの工場閉鎖を次々と決行。
- 発足した2010年には従業員が48000人在籍。そこからリストラにふみきり、2011年から2015年くらいまで、27000人の人員削減を決行。ルネサスの平均年収を750万円とすると、27000人×7500000円=2025億円の人件費削減。
- 2014年、山形県鶴岡工場をソニーに75億円で売却。
- 2018年、滋賀工場を閉鎖。
- 2022年、山口工場を閉鎖。
「ルネサスにカルロス・ゴーンがいたのか?」と思ってしまうくらいの大胆なリストラ。結果、現在では安定して高利益を出すようになっている。
買収で成長加速
改革により経営難を乗り越えたルネサス。最終損益が黒字化した2014年以降、将来に向けた企業買収を模索。そして、2017年あたりから足りない分野をカバーするため欧米の半導体企業を次々と買収。
2017年アメリカのインターシルを約32億ドルで買収。アナログIC、電源ICの強化。
2019年アメリカのIDTを63億ドルで買収。ミックスドシグナル技術、アナログ製品、通信系を強化。
2021年イギリスのダイアログ・セミコンダクターを約48億ユーロで買収。アナログ半導体、Wi-Fi、Bluetooth用チップなどの通信系を強化。
2021年イスラエルの新興企業Celenoを3億1500万ドルで買収。通信系を強化。
2022年AIに強みをもつ米国リアリティーAIを買収。金額は非公表。
2022年レーダ技術に強みをもつインドのステラジアン・セミコンダクターズを買収。金額は非公表。
2023年ワイヤレス技術に強みをもつオーストリアのパントロニクスを買収。金額は非公表。
2024年ソフトウエア開発の米アルティウム社を91オーストラリアドルで買収。半導体だけではなくソフトウェアも強化。米ブロードコムと同じような方向性。
2019年アメリカのIDTを63億ドルで買収。ミックスドシグナル技術、アナログ製品、通信系を強化。
2021年イギリスのダイアログ・セミコンダクターを約48億ユーロで買収。アナログ半導体、Wi-Fi、Bluetooth用チップなどの通信系を強化。
2021年イスラエルの新興企業Celenoを3億1500万ドルで買収。通信系を強化。
2022年AIに強みをもつ米国リアリティーAIを買収。金額は非公表。
2022年レーダ技術に強みをもつインドのステラジアン・セミコンダクターズを買収。金額は非公表。
2023年ワイヤレス技術に強みをもつオーストリアのパントロニクスを買収。金額は非公表。
2024年ソフトウエア開発の米アルティウム社を91オーストラリアドルで買収。半導体だけではなくソフトウェアも強化。米ブロードコムと同じような方向性。
- 一連の買収は、自動車のEV化、電力需要の増加、デジタル社会の発展に向けて、アナログ製品や通信系を強化する目的という事。特にアナログ製品への意識が強い。
- アナログ半導体は地味な存在なのであまり注目されないが、世界で生産個数が最も多いデバイス。アナログICの出荷個数は2021年度で2151億個で、比較として電子製品に基本必須となるDRAMの出荷個数が220億個ほどなので、アナログ半導体はDRAMの10倍という巨大ボリューム。
- 他にもM&Aを進め、製品ラインナップが広がった事で既存製品との相乗効果を目指す。
ルネサスの時価総額をライバル他社と比較
順位 | 企業 | 国籍 | 株式時価総額 |
---|---|---|---|
1位 | テキサスインスツルメンツ | 米国 | 20兆2440億円 |
2位 | NXPセミ | オランダ | 5兆7534億円 |
3位 | インフィニオン | ドイツ | 5兆1958億円 |
4位 | STマイクロ | スイス | 4兆6624億円 |
5位 | ルネサス | 日本 | 2兆7876億円 |
1ドル120円、1ユーロ130円で全て日本円換算。
2022年4月時点では、ライバル他社と比較してルネサスの企業価値は低い。しかし、利益率向上に向けた企業買収や、半導体の重要性が認識されるようになった事などにより、ルネサスの時価総額はインフィニオンやNXPあたりと同じレベルにまで上がっていくはず。
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