サムスン子会社「SEMES/セメス」の売上推移(通年)
年度 | 売上高・収益 | 営業利益 [営業利益率(%)] |
---|---|---|
2014年 | 9144億ウォン (914億円) | 427億ウォン (42億円) [4.7%] |
2015年 | 1兆1189億ウォン | 894億ウォン [8.0%] |
2016年 | 1兆909億ウォン | 749億ウォン [6.9%] |
2017年 | 2兆329億ウォン | 1909億ウォン [9.4%] |
2018年 | 1兆8665億ウォン | 1395億ウォン [7.5%] |
2019年 | 1兆1338億ウォン | 312億ウォン [2.8%] |
2020年 | 2兆2143億ウォン | 2841億ウォン [12.8%] |
2021年 | 3兆1281億ウォン | 3533億ウォン [11.3%] |
2022年 | 2兆8892億ウォン | 2193億ウォン [7.6%] |
2023年 | 2兆5021億ウォン | 650億ウォン [2.6%] |
利益率の推移
会社の動向
- SEMES(読み:セメス)は、サムスン電子の100%完全子会社の半導体製造装置メーカー。
- 1993年、大日本スクリーン(現SCREEN)との合弁で誕生した「K-DNS社」がルーツ。
- 2005年、社名を「K-DNS」から現在の「SEMES」に変更。
- 2010年、サムスン/SEMES側から経営方針の違いを理由に合弁解消を強引にもちかけられ、SCREENは合弁の株式を段階的に売却していく。最終的にSEMESは、サムスン電子の100%完全子会社へ。
- SCREENから技術供与してもらった洗浄装置の分野では、納品先は親会社のサムスン電子だが、サムスンの製造規模が大きいため業界で高いシェアをもつ。また、コータデベロッパやドライエッチング装置でも存在感が出てきている。
- セメスの経営陣は基本的にサムスン電子出身者。開発センターも京畿道華城市内サムスンDRAM工場の近くに存在し、製造/開発においても密に連携。
- サムスンの半導体売上のほとんどはDRAMやNANDフラッシュなどのメモリ半導体。セメスは基本的に自社製造用を想定して開発しているため、メモリ好況なら売上増、不況となれば売上減となる。
- サムスンは半導体業界でライバルが多く、傘下のセメスも装置メーカーとして他社との信頼関係を築きにくい問題アリ。
- 世界の半導体装置メーカーの業績推移
- SCREEN
- 東京エレクトロン
- ラムリサーチ
- アプライド・マテリアルズ
- ASML
- アドバンテスト
- KLAコーポレーション
- テラダイン
- DISCO
前工程/後工程別の半導体製造装置メーカーシェア
サムスン傘下SEMESは「コータデベロッパ」「枚葉式洗浄装置」「プローバ」「ドライエッチング装置」などで売上をもつ。画像参考。
コータデベロッパ
感光剤の塗布と現像を行う半導体製造装置。市場規模は約30億ドル
- 東京エレクトロンは、最先端EUV露光装置用コータ・デベロッパのシェアを独占。EUV登場前の最先端であるフッ化アルゴン/ArF(液浸)露光機用の装置シェアも約9割。実質的な業界標準機となっているため、今後も大きくシェアが崩れる事なく安定収益が見込める。
- SEMESは、これまでフッ化クリプトン/KrF露光装置用のコータデベロッパを生産してきたが、2024年度にArF液浸露光装置向けのコータ・デベロッパを開発し、今後本格量産すると報道されている。
- 2019年度までは、SCREENのシェアがSEMESよりも高かったが、2020年度に逆転される。SCREENのコータデベロッパは業界で存在感がなくなってきている。
枚葉式洗浄装置
枚葉式(まいようしき)洗浄装置とは、ウエハーを一枚ずつ洗浄し、不要物/不純物を除去する装置。一度に多数のシリコンウエハを洗浄する「バッチ式洗浄装置」と比較して洗浄度が高い。最先端分野で主流。市場規模は約35億ドル。
1位SCREEN……38.0%
2位東京エレクトロン……23.8%
3位SEMES……19.5%
4位ラムリサーチ……14.2%
出所:ビジネスジャーナル/湯之上隆
- 洗浄装置トップシェアSCREENや2位の東京エレクトロンは、装置メーカーとして顧客との長い信頼関係があり、最先端製造で最大級の台湾TSMC、そして米国インテルと協業関係。
- SCREENの洗浄装置はスループット(処理速度)に強み。東京エレの強みは、洗浄装置以外にも多くの製品ランナップを持つ事。
- 3位のSEMESは、TSMC、インテル、SKハイニックス、マイクロン、キオクシアなどとの関係構築は難しく、売上は親会社のサムスン向けがほとんど。
プローバ
半導体の製造工程において、ウェーハの電気的検査の際に使用する装置。市場規模は約15億ドル。
1位東京エレクトロン……54%
2位東京精密……40%
3位SEMES……4%
- 2018年度では、日本勢2社が94%のシェアをもつなか、SEMESも4%ほどのシェアをもつ。納品先はサムスン電子。
エッチング装置でも開発を急ぐ
半導体製造装置市場で、露光装置と共に市場規模が大きいのが「ドライエッチング装置」。市場規模は日本円で約2兆円以上。
SEMESはその装置開発を進め、親会社である「サムスン電子に試験導入」という報道がたびたび出る。2024年時点では大きな成果は出ていないが、技術は上がっている模様。
なお、エッチング装置には使用する材料によって「絶縁膜」「ゲート」「メタル」の3種類があるが、このうち市場規模が最も大きく、サムスンが得意とするNANDフラッシュメモリで重要なのが「絶縁膜エッチング装置」。
1位東京エレクトロン……43.8%
2位ラムリサーチ……29.9%
3位アプライドマテリアルズ(AMAT)……14.4%
4位日立ハイテク……4.6%
5位その他……7.3%
出所:ワイズコーポレーション
- サムスン/SEMESは、その他7.3%に含まれる。
- サムスンは、東京エレクトロンから購入するドライエッチング装置の内製化を目指していたが、2024年時点では、大きな成果は出ていない模様。
- なお、近年は中国AMECも技術を伸ばし、地元中国メーカーに納品しているという。
協力会社でもありライバル関係でもある
サムスンは半導体製造メーカーでありながら、製造装置までも内製化を進める。これは、協力会社となる装置メーカーとライバル関係になるという事。
セメスの競合は、洗浄装置では、東京エレクトロン(日本)、SCREEN(日本)、ラム・リサーチ(米国)、エッチング装置では、ラムリサーチ(米国)、アプライド・マテリアルズ(米国)、東京エレクトロン(日本)、日立ハイテク(日本)など、装置業界の中核的大手とライバル関係。
サムスン/SEMESはそのエリアで成長を目指し、協力会社の依存度を減らす意向があるが、これでは装置メーカーから協力を得られないのではないか。
サムスンはファウンドリーメーカーとして、最先端ロジック半導体の製造に参入し、2024年時点では成果が得られていないが、その理由の一つにサムスンは装置メーカーからコアな技術協力を得られていない可能性がある。筆者の考えすぎか。
中国メーカーへ技術が流出
出所:マイナビニュース
これにより、洗浄装置分野において中国メーカーの国産化が進む事になるが、これまでの経緯がわりと韓国すぎる。
#22005年、合弁会社「K-DNS」を「SEMES」に変更。
#32010年、しつこく協業を求めたはずのSEMES側から「経営方針の違い」を理由に強引に合弁解消をもちかけられる。瀬戸際外交のような手法が卑怯だったがSCREENもそれに応じる必要に迫られ、結局は株式売却し合弁解消。SEMESはサムスン電子の100%完全子会社へ。その後のSCREENは、サムスンへの販売がほぼ無くなったとされる。
#42010年代半ば、業界各社で開発が進められていた「超臨界流体洗浄」においてSEMESが実用化に成功。門外不出の願いにより発表や外販はせず、サムスンのDRAM工場でこっそり使用。
#52021年6月、SEMES元社員が「超臨界流体洗浄/乾燥技術」を中国メーカーへ横流し開始。
#62023年1月、SEMES元社員が「産業技術保護法違反」および「不正競争防止法違反」の容疑で韓国当局に起訴される。
韓国セメスは、日本のSCREENからの技術をもらって洗浄装置技術を得るが、韓国の同盟国アメリカが敵対する中国に半導体関連技術を流出。最短距離で目先のお金ばかり追い求める結果、いつも残念なKスタイル。