あまり知られていないが、日本の石油業界には聖闘士星矢コンビが存在している。
これは聖闘士星矢でいえばキグナス氷河がコスモをもらって復活する形と言える。聖闘士星矢には実際にそのシーンがある。それが以下。
十二宮の戦いで、ゴールド聖闘士アクエリアスのカミュに「絶対零度」で凍らされてしまったキグナス氷河(画像左)。凍結状態のキグナス氷河の復活を願い、アンドロメダ瞬(画像右)がコスモを燃やしてキグナス氷河を温めているシーン。
画像右のアンドロメダ瞬は女性に見えるが実は男性である。しかし、最近じゃ女性だったという説もある。詳しくはそっちで調べてほしい。
そして、最終的にキグナス氷河は復活することに。
回復したキグナス氷河とカミュのリベンジ対決。互いに必殺技「オーロラエクスキューション」を討ち合っているシーン。
ゴールド聖闘士のカミュは、間接的ではあるがキグナス氷河の師匠に当たる存在。そしてこのオーロラエクスキューションは元々カミュの必殺技。つまりキグナス氷河は師匠の必殺技で師匠を倒そうとしているのである。例えるならば、貴景勝が貴乃花親方を投げ飛ばそうとしている状況。
最終的にキグナス氷河はカミュを絶対零度で凍結させることに成功。しかしキグナスもカミュによって凍結させられてしまう。つまり「相打ち」という形。
これは聖闘士星矢でトップ5に入る名勝負。話しは石油業界に戻る。
資本提携までのプロセス
キグナス石油の親会社である三愛石油は財務的にも安定している企業。資金繰りに困っていたわけではない。
しかし、それまでの燃料油の供給元である東燃ゼネラル(現在のエネオス)との契約が2019年で満期となり、より契約条件の良い石油供給元を探していた。
そして、三愛石油がコスモに打診した時、コスモ側も三愛が求める条件を受け入れる代わりに、キグナス石油との資本提携をもちかけた。
コスモは、最低でも1/3超の株式保有を求めたに違いないが、三愛石油も業界で地位をもつ存在。上手く折り合わず最終的に20%の資本提携に落ち着いた。
キグナス石油も赤字経営などではなかったが、再編が続く石油業界でも特に利益率が低かったため、決断の必要があったと思われる。
やはり石油業界は規模がモノを言う業界。利権獲得、調達、石油タンカーの調達と運用コスト、輸送、精製能力、各地のガソリンスタンドに配送というように、生産性や販売合理性を高めるためには大きな規模が必要。
コスモはキグナスとの関係を強固にして、少しでも規模のメリットを確実なものにしたかった。そしてキグナス側も議決権で単独拒否権が発生しない20%レベルならばOKという事。
いずれにせよ、資本提携によりキグナスのガソリンを燃やすほどコスモが増えるという聖闘士星矢現象が実現された模様。
業績を確認
年度 | 売上高 | 営業利益 [営業利益率(%)] |
スタンド数 |
---|---|---|---|
2019年 | 4347億円 | 21億円 [0.4%] |
450か所 |
2020年 | 2837億円 | 34億円 [1.2%] |
456か所 |
エネオスや出光などは利益率3%台だが、キグナス石油の利益率は2019年が0.4%、2020年が1.2%で業界で最低レベル。アメリカ企業ならとっくに売却しているレベル。
やはり、薄利多売の石油業界で利益率を高めるためには、規模を確立しないといけないことがわかる。日本の人口が縮小する中、最終的にキグナス石油はコスモグループに完全吸収される運命なのかもしれない。
石油元売り業界は3社寡占
2017年JXグループと東燃ゼネラルの合併でエネオス誕生。
2019年出光と昭和シェルの統合。
いろいろ業界再編が続き、現在の石油元売り業界は「エネオス」「出光」「コスモ石油」の大手3社中心の業界に。その3社の業績などは以下。
経営状況 | エネオス | 出光 | コスモ石油 |
---|---|---|---|
売上高 | 7兆6580億円 | 4兆5566億円 | 2兆2332億円 |
営業利益 | 2541億円 | 1400億円 | 1012億円 |
営業利益率 | 3.3% | 3.0% | 4.5% |
系列スタンド数 | 12623か所 | 6311か所 | 2729か所 |
石油精製能力 | 1日186万バレル | 1日94.5万バレル | 1日40万バレル |
業界シェア | 47% | 30% | 15% |
出光とコスモを合わせても売上高規模でエネオスに勝てない状況。エネオスがゴールド聖闘士で、出光がシルバー聖闘士、コスモはブロンズ聖闘士といったところか。
エネオスは強くなりすぎて今までのようなM&Aによるシェア拡大は難しいと予想できるが、逆にコスモはエネオス一強状態を上手く利用してM&Aを成功させていきたいところ。双子座ジェミニのカノンがポセイドンを利用したように。
寡占は危険?
業界再編による3社寡占。この状況がサンクチュアリとなってしまったことで、石油業界の競争原理が低下することが懸念されていた。石油業界の人に聞くと、再編が進んだ初期段階はやや価格が高止まりしていたようだが、現在では依然のレベルに落ち着いているとのこと。
ガソリンや軽油などは日本の物流と生活コストそのものであるため、寡占化しているからといって高利益ビジネスはできない。それは電力会社が倫理観を無視した料金で電力販売することができないのと同じ。
ガソリン価格は元売り業界の寡占がどうこうよりも「1バレル○○ドル」といった世界的な需給で決定される原油相場の影響が最も大きい。
ガソリンが安くなるには産油国の増産を願うしかないが、それはそれでいろいろ難しい。
- 世界的な脱炭素方針の影響で、産油国が増産について慎重になっている。
- 2020年3月頃のコロナ蔓延時に、大幅な需要落ち込みよって原油価格がマイナスになった経験により、産油国が増産を恐れるようになっている。
そのため産油国が積極的に増産することは期待できないとされるが、いずれ不安も和らいであるべき形に戻っていくはず。自己修復能力があったフェニックスのクロスと同じように。