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パナソニックエナジー

パナソニックのバッテリー売上高・利益率・EV電池シェアの推移

Panasonic ENERGYの連結決算:通年の売上推移

パナソニック・エナジーの業績推移:売上高・営業利益・利益率の推移
年度 売上高・収益 営業利益
[営業利益率(%)]
2014年 5590億円
2015年 4880億円
2016年 4936億円
2017年 5625億円
(北米でテスラ向け車載電池の生産開始)
111億円
[2.0%]
2018年 6965億円 66億円
[0.9%]
2019年 4735億円
(10-12月期にテスラ向けが初の黒字化)
2020年 6000億円
(テスラが初の通年黒字化)
(トヨタと角形電池の合弁PPES設立)
335億円
[5.6%]
2021年 7644億円 642億円
[8.4%]
2022年 9718億円
(4月 持ち株会社へ完全移行)
332億円
[3.4%]
出所:パナソニック。2014年~2018年は「オートモーティブ/インダストリアルシステムズ部門」の「エナジー事業」のデータ。2019年度は「オートモーティブ部門」の「車載電池」のデータ。2020年度以降は「パナソニック・エナジー社」の業績。
EVが普及するようになった2020年から2022年までのパナソニックエナジーの営業利益率の平均が5.8%。競合との比較として、LGエナジーの同期間の営業利益率の平均が2.5%、サムスンSDIが7.6%、中国CATLが13.4%。
  • パナソニック・エナジーは、EV向けバッテリー(車載電池)や乾電池などを主体とするパナソニック・ホールディングスの完全子会社。三洋電機由来で充電式乾電池の「エネループ」もこの会社に属する。
  • 最も物量が多いテスラ向けの車載バッテリーは2019年10~12月期に黒字化。発表後に株価急上昇。
  • 2021年度の営業利益率(8.4%)は、北米のテスラ向け車載電池ビジネスが波に乗っている証拠。
  • パナソニックが手掛ける電気自動車用バッテリーのタイプは「円筒形」と「角形」の2つ。競争が激しい角形電池は2020年にトヨタとの合弁(PPES)を選択。
  • 中国や韓国メーカーは、ドカッと大規模投資をして将来的にドカっと稼ごうとしているが、パナソニックの場合は顧客の裏付けのもとで慎重投資。中国メーカーによる価格崩壊を考慮すれば優秀な判断。
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パナソニックと世界の車載電池シェア

EV向けバッテリー市場におけるパナソニックの世界シェア推移(2019年以降)
メーカー 2019年 2020年 2021年 2022年
CATL(中) 28% 26% 28% 37.0%
LGエナジー(韓) 13% 25% 23% 13.6%
BYD(中) 8% 6% 7% 13.6%
パナソニック(日) 22% 17% 15% 7.3%
SKオン(韓) 3% 6% 5% 5.4%
サムスンSDI(韓) 6% 7% 6% 4.7%
CALB(中) 1% 2% 2% 3.9%
Guoxuan(中) 3% 2% 2% 2.7%
EVEエナジー(中) 1%未満 1%未満 1%未満 1.8%
SVOLT(中) 1%未満 1%未満 1%未満 1.4%
AESC(中) 3% 2% 2%
Sunwoda(中) 1%未満 1%未満 1%未満
出所:SNEリサーチ。市場規模と売上規模から算出したポジテン推計値を含む。
  • パナソニックの車載電池シェアは、世界4位クラス。かつては高シェアを有していたが、中国CATLや韓国LGエナジーの増産ペースが速いので、相対的に市場シェアが低下。
  • パナは2023年から始まる和歌山工場の生産や、北米の新工場生産が波に乗れば、シェアは上がってくる見通し。
  • 中国のCATLは、中国を中心に欧州でも集中投資。巨大工場を次々と建設し、ダントツのトップシェアを維持する見通し。中国政府からの巨額支援も強み。
  • 韓国のLGエナジーは、ヒョンデ/起亜グループ、GM、ホンダ(北米のみ)、ステランティスなどの多くのグローバルメーカーと提携し、韓国勢得意のスケールメリット確立を急ぐ。
  • SKオンやサムスンSDIなどの韓国勢においても「半導体メモリの次のドル箱」だとして車載バッテリー分野への動きが強いが、CATLやLGエナジーほどの投資規模ではないため、相対的にシェアが低い。なお、SKオンは資金繰りが危険レベル。
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パナの業績をライバルと比較

パナソニック・エナジーとバッテリー主要メーカーの業績推移を比較(2020年~2022年)
メーカー 2020年/売上高
[営業利益:利益率(%)]
2021年/売上高
[営業利益:利益率(%)]
2022年/売上高
[営業利益:利益率(%)]
パナソニック
(日本)
6000億円
[335億円:5.6%]
7644億円
[642億円:8.4%]
9718億円
[332億円:3.4%]
CATL
(中国)
1兆63億円
[1392億円:13.8%]
2兆6060億円
[3965億円:15.2%]
6兆5719億円
[7364億円:11.2%]
LGエナジー
(韓国)
1兆2236億円
[-165億円:-1.4%]
1兆7851億円
[768億円:4.3%]
2兆5599億円
[1214億円:4.7%]
サムスンSDI
(韓国:電池部門)
8727億円
[241億円:2.7%]
1兆946億円
[537億円:4.9%]
1兆7566億円
[1254億円:7.1%]
出所:各メーカーの決算報告。1ウォン=0.1円、1人民元=20円で全て日本円換算。なお、LGエナジーとサムスンSDIは、車載向けだけではなく、モバイル向けバッテリーの売上高も多く含む事に注意。
  • 競合他社と比較すると、慎重姿勢だったパナソニックの売上高成長スピードは低い。
  • LGエナジーは2020年~2021年頃にバッテリー発火問題があったが、それでも引き合いが強いようで、2021年の営業利益は黒字を確保。

車載電池メーカーの顧客まとめ

  • パナソニック……中核の円筒形電池はテスラを中心に、マツダ、BMW、ステランティスからの引き合いもある。角形電池はトヨタグループと合弁のもとで共に歩む選択。
  • LGエナジー……ヒョンデ/起亜、GM、ホンダ、ステランティスなどと提携。
  • サムスンSDI……ヒョンデ/起亜、ステランティスなどと提携。BMWにも供給。
  • SKオン……フォード、ヒョンデ/起亜。
  • 中国CATL……中国メーカー、トヨタグループ、ホンダ、日産、VWグループ、メルセデスベンツ、BMW、テスラ、GM、フォード、ステランティスなど。

中国内のEV販売において、外国メーカーは中国政府が認める中国メーカーのバッテリー使用が義務づけられているため、外国メーカーはCATLのようなメーカーと協力関係を構築しないといけない。

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EV向けバッテリーのタイプ

車載バッテリーの形状には主に「角形」「円筒形」「ラミネート形(パウチ形)」の3種類。そのうち、パナソニックは「円筒型」と「角形」がメイン。

パナソニックの円筒形と角形のバッテリー

画像出所:Panasonicよりポジテン加工作成。
  • 円筒形リチウムイオン電池……パナソニックが注力し、業界内でも量産技術でリード。高容量で低コストなどが特長。海外の競合は、LGエナジー、サムスンSDI、中国BYD、中国EVEエナジーなど。
  • 角形リチウムイオン電池……多くのバッテリーメーカーが採用するタイプ。角形電池は競争が激しいため、パナソニックは2020年にトヨタとの合弁(PPES)のもとで成長を目指す。

2023年から量産を開始する和歌山工場では、円筒形リチウムイオン電池「4680」を生産し、主にテスラに供給。4680は「直径が46ミリ」「高さ80ミリ」のバッテリーで、容量はテスラ・モデル3に搭載の「2170」と比較して5.5倍。

エネルギー密度の向上により、テスラにとっては総合的にバッテリー搭載コストを減らす事が可能。テスラによると「4680を採用する事でEV販売価格を大きく下げる事ができる」との事。

パナソニックとトヨタの電池関連の合弁

  • プライムアースEVエナジー(PEVE)……ニッケル水素電池の開発と生産を主体としたトヨタとパナソニックの合弁会社。1996年設立。トヨタのハイブリッドカー(HV)にはこの電池が使用される。現在の出資比率は、トヨタ80.5%、パナソニック19.5%。
  • プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)……EV向け角形リチウム電池の開発と生産を主体としたトヨタとパナソニックの合弁会社。2020年設立。出資比率は、トヨタ51%、パナソニック49%。

トヨタとパナソニックは電池事業のみならず、2019年に住宅事業も統合。両社は何かと利害関係が一致するような関係性がある模様。

テスラ・トヨタと提携関係を結べた幸運

パナソニックは、テスラやトヨタと提携関係を築けた事は大きい。テスラは電気自動車で世界トップ級メーカーで2022年度は131万台を販売。

一方、トヨタは自動車販売台数で世界ダントツトップ企業。トヨタグループ(ダイハツ含む)の2022年度の販売台数は1056万台で世界シェア12.9%。

トヨタと資本関係があるスバル(85万台)、マツダ(111万台)、スズキ(300万台)を合計すると1552万台で世界シェア19.0%。

パナソニックは、世界の自動車の19.0%のボリュームと関係を築きやすい環境は幸運な事。

今後、テスラやトヨタ、他の日系メーカーの需要をカバーし、さらに他の海外メーカーの需要も取り込んでいけば、世界バッテリーメーカートップ3位以内を維持する事ができるはず。そのために、まずは中核の円筒形電池の信頼を確立しないといけない。

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Panasonicの今後の目標

  • 売上高は2030年までに3兆円を目標。車載用バッテリーの生産能力を、2022年度を基準として2028年までに3~4倍に増産する見込みで、工場拠点は日本国内とアメリカがメイン。
  • バッテリーの開発を進め、エネルギー密度の20%向上を目指す。実現すると、車載電池サイズを維持しながら航続距離を伸ばす事が可能。
  • 日本と北米は車載電池サプライヤーシェア首位を目指す。
  • 自動車市場規模で言えば、日本は年間500万台前後、アメリカは年間1500万台前後で合計2000万台の市場規模がある。世界販売台数を8000万台とすると、その日本/米国で世界の25%の市場をもつが、パナソニックはその2大市場は確実なものにしたい。

世界トップ企業になるのは難しい

電池の老舗であるパナソニックだけあって車載分野においても世界トップになってほしい。しかし、中国メーカーを抑えてパナ社がトップシェアになるのは厳しい。

バッテリーに使用されるリチウムを精製・加工するためには、相当の時間とコストが必要で、さらに加工の過程で環境汚染への問題がある。中国は環境規制が甘い事により、リチウムの精製・加工はほとんどが中国で行われている。また政府からの補助金も多額。

つまり、リチウム電池ビジネスは中国企業が有利な環境が整っており、パナソニックがその中国メーカーに代わってトップに立つのは難しい。

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