シリコンウェハーメーカー5社の売上推移を比較
順位 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|
売上高/営業利益 [営業利益率(%)] {金額基準シェア(%)} | 売上高/営業利益 [営業利益率(%)] {金額基準シェア(%)} | |
1位 | 信越化学工業(日本) 8756億円/3014億円 [34.4%] {シェア41.6%} | 信越化学工業(日本) 8504億円/2721億円 [32.0%] {シェア42.8%} |
2位 | SUMCO(日本) 4410億円/1096億円 [24.9%] {シェア21.0%} | SUMCO(日本) 4259億円/730億円 [17.2%] {シェア21.4%} |
3位 | グローバルウェハーズ(台湾) 703億台湾元/250億台湾元 (2812億円/1000億円) [35.6%] {シェア13.4%} | グローバルウェハーズ(台湾) 706億台湾元/200億台湾元 (2824億円/800億円) [28.4%] {シェア14.2%} |
4位 | シルトロニック(ドイツ) 18.05億ユーロ/4.95億ユーロ (2707億円/742億円) [27.5%] {シェア12.9%} | シルトロニック(ドイツ) 15.13億ユーロ/2.31億ユーロ (2269億円/347億円) [15.3%] {シェア11.4%} |
5位 | SKシルトロン(韓国) 2兆3546億ウォン/5649億ウォン (2354億円/564億円) [24.0%] {シェア11.2%} | SKシルトロン(韓国) 2兆255億ウォン/2806億ウォン (2025億円/280億円) [13.9%] {シェア10.2%} |
出所:信越化学工業、SUMCO、グローバルウェハーズ、シルトロニック、SKシルトロン。()内の日本円表記は、1ユーロ=150円、1台湾元=4.0円、1ウォン=0.1円で換算。信越化学は「電子材料セグメント」のデータで、ウェハー以外の売上もやや含む。シェアは寡占5社の売上高基準で割った数値。
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ウエハー業界の動向
- 業界1位の信越化学工業は、ウエハー業界で絶対王者。2023年の営業利益率は32.0%。最も利幅が良い最先端ロジック半導体製造向けのシリコンウェハーをSUMCO(日本)などと共にTSMCやインテルなどに供給するメーカー。製造良品率(歩留まり)が高く、目安としている営業利益率30%前後のビジネスを安定的に続ける。
- 業界2位は日本のSUMCO。2023年度の営業利益率は17.2%。信越化学などと共に最先端半導体向けのウエハーを供給するメーカだが、信越化学よりも製造歩留まり(良品率)が低く、利益率がやや低い。半導体銘柄は株高になりやすい傾向がある中、SUMCOの株価は伸び悩みが続く。(2024年時点)
- 業界3位は台湾グローバルウェハーズ。2023年度の営業利益率は28.4%。2010年代に欧米企業の買収を次々と成功させ、パワー/アナログ向けを中心としたポートフォリオを強化しシェア拡大。信越やSUMCOが手掛ける最先端ロジック半導体製造向けウエハーへの地位定着も目指す。台湾にTSMCやUMCなどの半導体受託製造メーカーがある事が強み。M&Aで大きくなった会社であるため、世界中に工場をもち、生産が分散的。
- 業界4位はドイツのシルトロニック。2023年度の営業利益率は15.3%。先端ロジック/メモリ向けのウエハーを供給。なお、2020年に業界3位の台湾グローバルウエハーズに買収される事で合意していたが、経済安全保障を理由としてドイツ政府から承認が下りず、会社は継続。
- 業界5位は韓国SKシルトロン。2023年度の営業利益率は13.9%。2017年にSKグループがLGグループから6200億ウォンで買収して誕生。増産投資に積極的で、SiCパワー半導体向け「SiCウエハー」への投資も積極的。次世代パワー半導体分野でも日本企業と競合となる。
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競合5社の営業利益率の推移を比較
年度 | 信越化学工業 (日本) |
SUMCO (日本) |
グローバルウェハーズ (台湾) |
シルトロニック (ドイツ) |
SKシルトロン (韓国) |
---|---|---|---|---|---|
2015年 | 19.3% | 12.4% | 8.7% | 0.3% | |
2016年 | 22.2% | 6.6% | -25.9% | 2.9% | |
2017年 | 30.1% | 16.1% | 16.0% | 20.0% | |
2018年 | 34.7% | 26.2% | 29.8% | 34.2% | |
2019年 | 36.9% | 16.9% | 30.8% | 23.5% | |
2020年 | 34.6% | 13.0% | 27.6% | 15.9% | 14.7% |
2021年 | 34.5% | 15.4% | 28.9% | 22.5% | 15.2% |
2022年 | 34.4% | 24.9% | 35.6% | 27.5% | 24.0% |
2023年 | 32.0% | 17.2% | 28.4% | 15.3% | 13.9% |
- 2016年度は、どのメーカーも利益率が悪化。これはシリコンサイクル(半導体市況の波)の影響。ウエハーメーカーだけではなく、半導体メーカーの多くが業績悪かった。
- 日本の信越化学工業が最も安定的/高利益率をキープ。コロナ危機の2020年においても、利益率を落とす他社と違って30%レベルの利益率を実現。最大顧客である台湾TSMC向けの販売が好調。TSMCは信越のウエハーを使用しないと良品率が上がらない。
- SUMCOは最先端向けウエハーの良品率が上がれば、信越と同じ利益率30%レベルの安定ビジネスが成立できるが、その量産に苦戦。
- 台湾グローバルウェハーズの利益率が好調。台湾には幅広い種類の半導体製造を手掛けるTSMCやUMCなどのファウンドリーがある事が大きい。また、世界各国に工場をもち、現地企業との取引が安定している事も強み。
- なお、2016年の台湾グローバルウェハーズは営業赤字。営業損失率は「-25.9%」。理由としてトプシル(デンマーク)とサンエジソン・セミコンダクター(アメリカ)の2社の企業買収を行ったため。この買収により、パワー/アナログ向けウエハー製造技術や販路を獲得。
- 独シルトロニックは、DRAMやNANDフラッシュメモリといった半導体メモリ向けウエハーの依存度が高い事から、メモリ価格が下落した2019年、2020年、2023年に利益率が悪化。近年、増産投資を決定したが、まだまだメモリ市況で業績が左右される状況は続く。
- 韓国SKシルトロンは、2022年のコロナ後の半導体不足によるウエハー不足により利益率がアップしたが、全体的には利幅が良い最先端ロジックやメモリ向けへのビジネスが弱いため、利益率が低め。
- どのメーカーも顧客と長期契約のもとで生産調整を行っているため、大量在庫を抱えてしまうといった事態になりにくい。つまり大きく利益率が悪化するような事はない。
- 2010年代に再編が進み、5社寡占になった事で、すべてのメーカーは安定的な利益率を維持する事ができるようになっている。
- 各国の経済安全保障において半導体企業がシビアになっている事から、ウエハー業界はこれ以上の再編/寡占化が進む事はないと思われる。
- なお、国策で半導体産業を育てている中国には、多くのシリコンウェーハメーカーが存在しているとされるが、2024年時点ではまだ実績が上がっていない模様。
高品質ウエハーを供給できるメーカーランキング
- 1級品メーカー……信越化学工業(日本)、SUMCO(日本)
- 準1級品メーカー……シルトロニック(ドイツ)
- 2級品メーカー……グローバルウエハーズ(台湾)、SKシルトロニック(韓国)
業界ではおおまかに上記のようなイメージ。
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