ST Microelectronicsの決算(通年)の売上推移
年度 | 売上高・収益 | 営業利益 [営業利益率(%)] | 純利益・最終損益 [純利益率(%)] |
---|---|---|---|
2000年 | 78.13億ドル | 17.82億ドル [22.8%] | 14.52億ドル [18.6%] |
2001年 | 63.56億ドル | 3.39億ドル [5.3%] | 2.57億ドル [4.0%] |
2002年 | 63.18億ドル | 6.01億ドル [9.5%] | 4.29億ドル [6.8%] |
2003年 | 72.39億ドル | 3.34億ドル [4.6%] | 2.53億ドル [3.5%] |
2004年 | 87.60億ドル | 6.83億ドル [7.8%] | 6.01億ドル [6.9%] |
2005年 | 88.82億ドル | 2.44億ドル [2.7%] | 2.66億ドル [3.0%] |
2006年 | 98.54億ドル | 6.77億ドル [6.9%] | 7.82億ドル [7.9%] |
2007年 | 100.01億ドル | -4.06億ドル(赤字) [-4.1%] | -4.33億ドル(赤字) [-4.3%] |
2008年 | 98.42億ドル | 1.39億ドル [1.4%] | -5.19億ドル(赤字) [-5.3%] |
2009年 | 85.10億ドル | -8.60億ドル(赤字) [-10.1%] | -12.24億ドル(赤字) [-14.4%] |
2010年 | 103.46億ドル | 6.87億ドル [6.6%] | 6.19億ドル [6.0%] |
2011年 | 97.35億ドル | -0.09億ドル(赤字) [-0.1%] | 0.53億ドル [0.5%] |
2012年 | 84.93億ドル | -23.14億ドル(赤字) [-27.2%] | -24.85億ドル(赤字) [-29.3%] |
2013年 | 80.82億ドル | -5.67億ドル(赤字) [-7.0%] | -6.79億ドル(赤字) [-8.4%] |
2014年 | 74.04億ドル | 1.48億ドル [2.0%] | 1.42億ドル [1.9%] |
2015年 | 68.97億ドル | 1.09億ドル [1.6%] | 1.81億ドル [2.6%] |
2016年 | 69.73億ドル | 2.71億ドル [3.9%] | 1.26億ドル [1.8%] |
2017年 | 83.47億ドル | 10.79億ドル [12.9%] | 2.26億ドル [2.7%] |
2018年 | 96.64億ドル | 13.55億ドル [14.0%] | 16.35億ドル [16.9%] |
2019年 | 95.56億ドル | 10.35億ドル [10.8%] | 3.88億ドル [4.1%] |
2020年 | 102.19億ドル | 12.33億ドル [12.1%] | 6.96億ドル [6.8%] |
2021年 | 127.61億ドル | 24.52億ドル [19.2%] | 17.17億ドル [13.5%] |
- 2008年のリーマンショック以前から利益率が低迷。2007年から利益率が悪かった製品からの撤退や工場を次々と閉鎖。
- 2014年以降は、営業利益と純利益、ともに赤字なし。企業内再編により黒字化が定着。
- 2017年から2021年までの5年間の営業利益率の平均が13.8%。製造における再編を進めた事で利益率も安定。
- STマイクロは、製造の一部を外部に任せる「ファブライト化」が進んでおり、製造開発コストの低減と、工場を多く保有する事のリスクが低減されるようになっている。
ST Microelectronicsの経営と財政状況
年度 | 総資産 | 負債総額 [有利子負債] |
自己資本・純資産 [自己資本比率(%)] |
---|---|---|---|
2000年 | 118.80億ドル | 57.22億ドル | 61.58億ドル [51.8%] |
2005年 | 124.39億ドル | 39.09億ドル | 84.80億ドル [68.1%] |
2010年 | 133.49億ドル | 48.52億ドル | 84.87億ドル [63.6%] |
2015年 | 91.59億ドル | 37.63億ドル | 53.96億ドル [58.9%] |
2020年 | 144.54億ドル | 59.48億ドル [26.21億ドル] |
85.06億ドル [58.5%] |
2021年 | 155.40億ドル | 62.67億ドル [25.39億ドル] |
92.73億ドル [59.7%] |
- STマイクロの財務は危なさもなく安定。
- 2000年から2020年までの間に資産規模が1.2倍しか増えていない。
- 資産が増えなかったのは、生産性の悪い工場リストラを行った事や、新工場建設が少なかった事などが要因。
- 製造の一部を台湾のTSMCやUMCなどの半導体受託企業に委託する割合が増えているため、総資産規模が増えにくい。
- なお、製造を請け負う側の台湾TSMCは、2000年から2020年までの間に工場建設と設備投資が急増し、資産規模を8.1倍に増やしている。TSMCの2000年の総資産が3409億台湾ドル(1兆3636億円)に対し、2020年が2兆7607億台湾ドル(11兆428億円)。
製造拠点
後工程フランス、中国、マレーシア、フィリピン、モロッコ、マルタ。
(2022年時点)
イタリアとフランスの半導体メーカーの合併で誕生したのがSTマイクロエレクトロニクス。そのため、前工程の工場はフランスとイタリアが中心。
製品ポートフォリオの売上シェア
STマイクロの中核は3つ。その販売比率は以下。
- マイコン/デジタルIC 34%
- 車載向け半導体/ディスクリート半導体 35%
- アナログ/MEMS/センサー 31%
(2021年度のデータ)
パワーデバイス
今後、ガソリン車から電気自動車へ変革する中で重要なデバイスの一つがパワー半導体。その分野でのSTマイクロの世界的ポジション。
順位 | 企業 | 国 | 世界シェア(%) |
---|---|---|---|
1位 | インフィニオン・テクノロジーズ | ドイツ | 19.8% |
2位 | オン・セミコンダクター | アメリカ | 8.4% |
3位 | STマイクロエレクトロニクス | スイス | 5.6% |
4位 | 三菱電機 | 日本 | 5.1% |
5位 | 東芝 | 日本 | 4.7% |
6位 | 富士電機 | 日本 | 4.6% |
7位 | Vishay | アメリカ | 3.6% |
8位 | ルネサスエレクトロニクス | 日本 | 2.7% |
9位 | ローム | 日本 | 2.6% |
10位 | Diodes | アメリカ | 2.5% |
- 2020年度で言えば、パワー半導体の市場規模は2兆8000億円。2030年は4~5兆円規模に増える見込み。
- STマイクロエレクトロニクスのパワー半導体のシェアは5.6%の2位。
- 以前から車載向けパワーデバイスの売上が多かったが、電気自動車の需要が増えているため、さらに売上が増加傾向。
- パワー半導体分野は、日本企業のシェアも高く、シェアをすべて足すと20~25%ほど。
- STマイクロのライバルとなるルネサスエレクトロニクス(日本)も、パワー半導体の開発と製品リリースを強化している。
アナログデバイス
アナログ半導体は、力の大きさ、音、光、温度などのアナログ信号を処理する半導体。自動車は特に搭載量が多い。
順位 | 企業 | 国 | 世界シェア(%) |
---|---|---|---|
1位 | テキサス・インスツルメンツ | アメリカ | 19.0% |
2位 | アナログ・デバイセズ | アメリカ | 12.6% |
3位 | スカイワークス | アメリカ | 8.0% |
4位 | インフィニオン・テクノロジーズ | ドイツ | 6.4% |
5位 | STマイクロエレクトロニクス | スイス | 5.2% |
6位 | コルボ | アメリカ | 5.1% |
7位 | NXPセミコンダクターズ | オランダ | 4.6% |
8位 | オンセミコンダクター | アメリカ | 2.8% |
9位 | マイクロチップ | アメリカ | 2.4% |
10位 | ルネサスエレクトロニクス | 日本 | 1.4% |
- 2021年度のアナログICの市場規模は741億ドル。
- STマイクロのアナログ半導体シェアは5.2%の5位。
- アナログ半導体、パワー半導体、マイコン、センサーなどの自動車に必要な半導体製品を幅広く手掛ける事がSTマイクロの強み。
- 日本のルネサスのアナログ半導体シェアは1.4%の10位。海外企業を次々と買収し、アナログ製品ポートフォリオを強化。
- この分野は米国のテキサスインスツルメンツ(TI)が圧倒的に強い。TIは、あらゆるニーズに対応できる製品ラインナップを持つことが強み。
セキュリティICチップ
順位 | 企業 | 国 | 世界シェア |
---|---|---|---|
1位 | インフィニオン | ドイツ | 24.5% |
2位 | NXPセミコンダクターズ | オランダ | 20.3% |
3位 | サムスン | 韓国 | 17.0% |
4位 | STマイクロエレクトロニクス | スイス | 12.6% |
5位 | CEC Huada | 中国 | 8.4% |
- セキュリティICチップの市場規模は約3200億円(2020年度)
- STマイクロのセキュリティICチップの市場シェアは12.6%で4位。
- 韓国のサムスンや中国メーカーも追い上げ。
販売地域の割合
- アジア 64%
- 欧州・中東 22%
- アメリカ 14%
(2021年度のデータ)
「アジア」を国で言うと、ほとんどが日本、中国、台湾、韓国。欧州はドイツへの出荷量が多い。
日本でのビジネスを強化
STマイクロエレクトロニクスは、自動車向けの半導体の売上高が大きい。
その自動車はトヨタ、ホンダ、日産、マツダ、SUBARU、スズキなどの日本企業が世界的に大きなボリュームを持っているため、必然的に日本へのビジネスを強化するようになっている。
日本の自動車メーカーすべての生産数量は、2021年度で2400万台~2500万台ほどで世界シェア約30%。外国の車載向け半導体企業は、日本の自動車メーカーを無視する事はできないというワケ。
STマイクロは、日本国内で積極的にWeb広告を出したり、メディアに自社の新製品を宣伝してもらったりして、販売やブランド力の向上につとめている。
SiCウエハーを自社供給
2019年12月、STマイクロエレクトロニクスはSiC(炭化ケイ素)ウエハーメーカーのNorstel(スウェーデン)を1億3750万ドルで買収。
パワー半導体の製造に必要となるSiCウエハーのサプライヤーの少なさや生産能力に不安をもち、Norstel社を完全子会社化してウエハーの安定供給を目指す模様。
なお、もしSiCウエハーのサプライヤーが安定化してきたら、本体から分離して独立させ、売却益を得る意向だと思われる。