ST Microelectronicsの連結決算:通年の売上推移
年度 | 売上高・収益 | 営業利益 [営業利益率(%)] | 純利益・最終損益 [純利益率(%)] |
---|---|---|---|
1991年 | 13.74億ドル | -0.31億ドル [-2.3%] | -1.02億ドル [-7.4%] |
1992年 | 15.68億ドル | 0.51億ドル [3.3%] | 0.03億ドル [0.2%] |
1993年 | 20.07億ドル | 2.15億ドル [10.7%] | 1.60億ドル [8.0%] |
1994年 | 26.02億ドル | 4.33億ドル [16.6%] | 3.62億ドル [13.9%] |
1995年 | 35.20億ドル | 6.51億ドル [18.5%] | 5.26億ドル [14.9%] |
1996年 | 40.78億ドル | 7.99億ドル [19.6%] | 6.25億ドル [15.3%] |
1997年 | 39.69億ドル | 5.19億ドル [13.1%] | 4.06億ドル [10.2%] |
1998年 | 42.11億ドル | 5.23億ドル [12.4%] | 4.11億ドル [9.8%] |
1999年 | 50.23億ドル | 6.71億ドル [13.4%] | 5.47億ドル [10.9%] |
2000年 | 77.64億ドル | 17.83億ドル [23.0%] | 14.52億ドル [18.7%] |
2001年 | 63.04億ドル | 3.39億ドル [5.4%] | 2.57億ドル [4.1%] |
2002年 | 62.70億ドル | 6.01億ドル [9.6%] | 4.29億ドル [6.8%] |
2003年 | 72.34億ドル | 3.34億ドル [4.6%] | 2.53億ドル [3.5%] |
2004年 | 87.56億ドル | 6.83億ドル [7.8%] | 6.01億ドル [6.9%] |
2005年 | 88.76億ドル | 2.44億ドル [2.7%] | 2.66億ドル [3.0%] |
2006年 | 98.38億ドル | 6.77億ドル [6.9%] | 7.82億ドル [7.9%] |
2007年 | 99.66億ドル | -5.45億ドル [-5.5%] | -4.77億ドル [-4.8%] |
2008年 | 97.92億ドル | 1.98億ドル [2.0%] | -7.86億ドル [-8.0%] |
2009年 | 84.65億ドル | -10.23億ドル [-12.1%] | -11.31億ドル [-13.4%] |
2010年 | 102.62億ドル | 4.76億ドル [4.6%] | 8.30億ドル [8.1%] |
2011年 | 96.30億ドル | 0.46億ドル [0.5%] | 6.50億ドル [6.7%] |
2012年 | 83.80億ドル | -20.81億ドル [-24.8%] | -11.58億ドル [-13.8%] |
2013年 | 80.50億ドル | -4.65億ドル [-5.8%] | -5.00億ドル [-6.2%] |
2014年 | 73.35億ドル | 1.68億ドル [2.3%] | 1.28億ドル [1.7%] |
2015年 | 68.66億ドル | 1.09億ドル [1.6%] | 1.04億ドル [1.5%] |
2016年 | 69.44億ドル | 2.14億ドル [3.1%] | 1.65億ドル [2.4%] |
2017年 | 83.08億ドル | 9.93億ドル [12.0%] | 8.02億ドル [9.7%] |
2018年 | 96.12億ドル | 14.00億ドル [14.6%] | 12.87億ドル [13.4%] |
2019年 | 95.29億ドル | 12.03億ドル [12.6%] | 10.32億ドル [10.8%] |
2020年 | 101.81億ドル | 13.23億ドル [13.0%] | 11.06億ドル [10.9%] |
2021年 | 127.29億ドル | 24.19億ドル [19.0%] | 20.00億ドル [15.7%] |
2022年 | 160.83億ドル | 44.39億ドル [27.6%] | 39.60億ドル [24.6%] |
2023年 | 172.86億ドル | 46.11億ドル [26.7%] | 42.11億ドル [24.4%] |
出所:STMicroelectronics。本決算期は12月末。
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平均利益率
- STマイクロの1991年から2023年までの営業利益率の平均が7.8%。
- 競合との比較として、
- ルネサスの2010年から2022年までの営業利益率の平均が8.9%。
- インフィニオンの2008年から2022年までの営業利益率の平均が10.7%。
- NXPセミコンダクターズの2004年から2022年までの営業利益率の平均が7.1%。
会社の動向
- 1987年、イタリア「SGS」とフランス「トムソン半導体部門」の合併により「SGSトムソン」として誕生したのがルーツ。1998年、STマイクロエレクトロニクスに社名変更。
- 2001年、ITバブルでほとんどの半導体メーカーは営業赤字となったが、STマイクロは黒字キープ。
- 2008年のリーマンショック以前から利益率が低迷。2007年から利益率が悪かった製品からの撤退や工場を次々と閉鎖。
- 2014年以降は、営業利益と純利益、ともに赤字なし。企業内再編により黒字化が定着。
- STマイクロは、製造の一部を外部に任せる「ファブライト化」が進んでおり、従来と比較して製造開発コストの低減と、工場を多く保有する事のリスクを軽減。
- 製造の委託先は、台湾TSMCや台湾UMCなど。
- 次世代SiCパワー半導体に注力。
- 競合の業績推移
- ルネサスエレクトロニクス
- インフィニオン
- NXPセミコンダクターズ
- テキサス・インスツルメンツ
- ローム
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ST Microelectronicsの財政・経営状況
年度 | 総資産 [現金・手元資金] |
負債総額 [有利子負債] |
自己資本・純資産 [自己資本比率(%)] |
---|---|---|---|
2000年 | 118.80億ドル [23.30億ドル] |
57.22億ドル [28.42億ドル] |
61.58億ドル [51.8%] |
2005年 | 124.39億ドル [20.27億ドル] |
39.09億ドル [18.02億ドル] |
84.80億ドル [68.1%] |
2010年 | 133.49億ドル [18.92億ドル] |
48.52億ドル [17.70億ドル] |
75.87億ドル [56.8%] |
2015年 | 81.95億ドル [17.71億ドル] |
37.63億ドル [16.12億ドル] |
46.32億ドル [56.5%] |
2020年 | 144.54億ドル [37.20億ドル] |
59.48億ドル [26.21億ドル] |
85.06億ドル [58.5%] |
2021年 | 155.40億ドル [35.16億ドル] |
62.67億ドル [25.39億ドル] |
92.73億ドル [59.7%] |
2022年 | 199.82億ドル [32.58億ドル] |
72.89億ドル [27.17億ドル] |
126.93億ドル [63.5%] |
- 2000年から2020年までの間に資産規模が1.2倍しか増えていない。資産が増えなかったのは、生産性の悪い工場リストラを行った事や、新工場建設が少なかった事などが要因。
- 製造の一部を台湾のTSMCやUMCなどの半導体受託企業に委託する割合が増えているため、総資産規模が増えにくい。
- なお、製造を請け負う側の台湾TSMCは、2000年から2020年までの間に工場建設と設備投資が急増し、資産規模を8.1倍に拡大。TSMCの2000年の総資産が3409億台湾ドル(1兆3636億円)に対し、2020年が2兆7607億台湾ドル(11兆428億円)。
製造拠点
前工程フランス、イタリア、スウェーデン、シンガポール。
後工程フランス、中国、マレーシア、フィリピン、モロッコ、マルタ。
(2022年時点)
後工程フランス、中国、マレーシア、フィリピン、モロッコ、マルタ。
(2022年時点)
イタリアとフランスの半導体メーカーの合併で誕生したのがSTマイクロエレクトロニクス。そのため、前工程の工場はフランスとイタリアが中心。
販売地域の割合
地域 | 2010年/売上高 [全体売上比(%)] |
2016年/売上高 [全体売上比(%)] |
2022年/売上高 [全体売上比(%)] |
---|---|---|---|
欧州・中東 | 25.92億ドル [25.3%] |
18.74億ドル [27.0%] |
36.19億ドル [22.5%] |
南北アメリカ | 13.31億ドル [13.0%] |
10.52億ドル [15.2%] |
23.10億ドル [14.4%] |
アジア | 64.23億ドル [62.6%] |
40.47億ドル [58.3%] |
101.99億ドル [63.4%] |
- アジア向けは、ほとんどが中国、日本、台湾、韓国。中でも中国向けが突出。
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製品ポートフォリオの売上シェア
マイコン/デジタルIC | 車載向け/ディスクリート | アナログ/MEMS/センサー |
---|---|---|
34% | 35% | 31% |
パワーデバイス
今後、ガソリン車から電気自動車へ変革する中で重要なデバイスの一つがパワー半導体。その分野でのSTマイクロの世界的ポジション。
順位 | 企業 | 国 | 世界シェア(%) |
---|---|---|---|
1位 | インフィニオン・テクノロジーズ | ドイツ | 19.8% |
2位 | オン・セミコンダクター | アメリカ | 8.4% |
3位 | STマイクロエレクトロニクス | スイス | 5.6% |
4位 | 三菱電機 | 日本 | 5.1% |
5位 | 東芝 | 日本 | 4.7% |
6位 | 富士電機 | 日本 | 4.6% |
7位 | Vishay | アメリカ | 3.6% |
8位 | ルネサスエレクトロニクス | 日本 | 2.7% |
9位 | ローム | 日本 | 2.6% |
10位 | Diodes | アメリカ | 2.5% |
出所:インフィニオンの報告書より引用。
- 2020年度で言えば、パワー半導体の市場規模は2兆8000億円。2030年は4~5兆円規模に増える見込み。
- STマイクロエレクトロニクスのパワー半導体のシェアは5.6%の2位。
- 以前から車載向けパワーデバイスの売上が多かったが、電気自動車の需要が増えているため、さらに売上が増加傾向。
- パワー半導体分野は、日本企業のシェアも高く、シェアをすべて足すと20~25%ほど。
- STマイクロのライバルとなるルネサスエレクトロニクス(日本)も、パワー半導体の開発と製品リリースを強化している。
アナログデバイス
アナログ半導体は、力の大きさ、音、光、温度などのアナログ信号を処理する半導体。自動車は特に搭載量が多い。
順位 | 企業 | 国 | 世界シェア(%) |
---|---|---|---|
1位 | テキサス・インスツルメンツ | アメリカ | 19.0% |
2位 | アナログ・デバイセズ | アメリカ | 12.6% |
3位 | スカイワークス | アメリカ | 8.0% |
4位 | インフィニオン・テクノロジーズ | ドイツ | 6.4% |
5位 | STマイクロエレクトロニクス | スイス | 5.2% |
6位 | コルボ | アメリカ | 5.1% |
7位 | NXPセミコンダクターズ | オランダ | 4.6% |
8位 | オンセミコンダクター | アメリカ | 2.8% |
9位 | マイクロチップ | アメリカ | 2.4% |
10位 | ルネサスエレクトロニクス | 日本 | 1.4% |
出所:IC Insights。
- 2021年度のアナログICの市場規模は741億ドル。
- STマイクロのアナログ半導体シェアは5.2%の5位。
- アナログ半導体、パワー半導体、マイコン、センサーなどの自動車に必要な半導体製品を幅広く手掛ける事がSTマイクロの強み。
- 日本のルネサスのアナログ半導体シェアは1.4%の10位。海外企業を次々と買収し、アナログ製品ポートフォリオを強化。
- この分野は米国のテキサスインスツルメンツ(TI)が圧倒的に強い。TIは、あらゆるニーズに対応できる製品ラインナップを持つことが強み。
セキュリティICチップ
順位 | 企業 | 国 | 世界シェア |
---|---|---|---|
1位 | インフィニオン | ドイツ | 24.5% |
2位 | NXPセミコンダクターズ | オランダ | 20.3% |
3位 | サムスン | 韓国 | 17.0% |
4位 | STマイクロエレクトロニクス | スイス | 12.6% |
5位 | CEC Huada | 中国 | 8.4% |
- セキュリティICチップの市場規模は約3200億円(2020年度)
- STマイクロのセキュリティICチップの市場シェアは12.6%で4位。
- 韓国のサムスンや中国メーカーも追い上げ。
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日本でのビジネスを強化
STマイクロエレクトロニクスは、自動車向けの半導体の売上高が大きい。
その自動車はトヨタ、ホンダ、日産、マツダ、SUBARU、スズキなどの日本企業が世界的に大きなボリュームを持っているため、必然的に日本へのビジネスを強化するようになっている。
日本の自動車メーカーすべての生産数量は、2021年度で2400万台~2500万台ほどで世界シェア約30%。外国の車載向け半導体企業は、日本の自動車メーカーを無視する事はできないというワケ。
STマイクロは、日本国内で積極的にWeb広告を出したり、メディアに自社の新製品を宣伝してもらったりして、販売やブランド力の向上につとめている。
SiCウエハーを自社供給
2019年12月、STマイクロエレクトロニクスはSiC(炭化ケイ素)ウエハーメーカーのNorstel(スウェーデン)を1億3750万ドルで買収。
パワー半導体の製造に必要となるSiCウエハーのサプライヤーが少ない事や、供給先のNorstel社の生産能力に不安をもつ事から、Norstel社を完全子会社化してウエハーの安定供給を目指す。
もし、SiCウエハーのサプライヤーが増加してきたら、本体からスピンオフ(分離/独立)させて、売却益を得る意向だと思われる。
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