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SKハイニックスとインテルのロゴ

キオクシアに朗報!SKハイニックスがインテルメモリ事業を買収へ

韓国SKハイニックスがm米インテルのNANDフラッシュメモリ部門を90億ドル(約1兆円)で買収を発表。

SKグループになる前の「ハイニックス半導体」は、2001年に債務超過に陥って経営破綻。それから国策で復活し、その後、SKグループ傘下となった2010年代は財務が安定した事や、DRAM業界の寡占化が進んだことで高利益を出せるように。そして今回、インテルのメモリ事業を買収という、一昔前ではありえない事態となっている。

韓国の半導体企業の規模が拡大するこのニュースについて不安になった人も多かったようで、Yahooニュースのコメント欄には、以下のようなコメントを確認。

  • 日本のエレクトロニクス企業が半導体を軽視していたから、最終的に韓国企業が大きくなってしまった。
  • 韓国は国ぐるみで半導体産業を育てているが、日本の経済産業省はそれをやってこなかった。
  • NANDフラッシュメモリ部門がDRAMと同じ業界地図になってしまうと、メモリ全体の価格が上がってしまう。
  • キオクシアに頑張ってほしいが、有利子負債が増えている財務状況がかなり不安。

SKハイニックスがインテルNAND部門を買収して事業規模が拡大すると、スケールメリットが必要となるメモリ産業では、他社が大きくなると日本企業が競争から脱落してしまうような気がしてしまう。

というのも、日本の半導体メモリ産業は、失敗続きで「成功体験」から遠ざかっているため、どうしても悲観的になってしまう。

しかし、ここだけの話しだが今回のSKハイニックスによるインテルNAND買収は日本のキオクシアにとってメリットしかない。今回はそれについていろいろ。

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まずは現在のNANDフラッシュメモリ業界のシェアを確認。画像は2020年のシェア。

NANDフラッシュメモリのシェア

出所:トレンドフォース

2020年3月時点のNANDシェア

1位サムスン 33.3%
2位キオクシア 19.0%
3位WD(キオクシアと協業関係) 15.3%
4位マイクロン 11.2%
5位SKハイニクス 10.7%
6位インテル 9.9%

DRAM業界と同じようにサムスンがトップ。そしてサムスンの下に日本のキオクシアが2位。そしてウエスタンデジタルが3位に続いている。

そして、業界5位のSKハイニクスが業界6位のインテルを買収するということになり、単純に足し算すると20.6%のシェアとなり、19.0%シェアのキオクシアを抜くことになる。以下のような感じ。

今後のNANDシェア(単純に足し算)

1位サムスン 33.3%
2位SKハイニクス+インテルNAND 20.6%
3位キオクシア 19.0%
4位WD(キオクシアと協業関係) 15.3%
5位マイクロン 11.2%
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なぜキオクシアにメリットがあるのか?

競合が一つ減るメリット

SKハイニクスによるインテルメモリ買収により、競合メーカーが一つ淘汰される形になる。競争原理が少なくなってキオクシアの利益率も改善に向かうはず。

キオクシアは競争が激しいNANDフラッシュだけでビジネスをやっているので若干不利な状況だが、業界が少し寡占化したことで今後は利益率アップを期待したい。

インテルのNAND部門の需要を取り込める

インテルのNANDメモリ事業というと、GoogleやApple、Amazon、Facebook、マイクロソフト、中国ファーウェイ、アリババなどの大口データセンター向けのサーバ向けSSD(エンタープライスSSD)が中核。

そして、インテルが製造するサーバ向けCPUとセットビジネスをやっていたので、その分野では絶対的な力をもっていた。

しかし、絶対的だったインテルが脱落したことでインテルの顧客だったGAFAMや中国大手への供給を日本のキオクシアが取り込める可能性が期待できるように。

キオクシアはサーバ向けSSDのビジネスが弱かったが、今後はその分野でのシェアは上がっていくはず。

GAFAMは、NANDフラッシュ業界がDRAM業界のように寡占化して価格が跳ね上がってしまう事を嫌うので、業界で最も財務が弱いキオクシアを優先しないといけない事情があるが、インテル撤退によってキオクシアとGAFAMの取引量が増えていく事が予想できる。増えてもらわないと困る。

一番得したのはWD

今回のSKによるインテルNAND買収で一番得したのは、キオクシアのパートナーであるWD(ウエスタンデジタル)かもしれない。

WDは、割合的に言えばデータセンター向けのSSDビジネスが中核で、インテルの顧客だったAmazonやGoogle、マイクロソフト、中国アリババなどの大手データセンター向けの需要を取り込みやすいとは思う。

キオクシア買収ができなくなった

東芝が2017年に債務超過に陥り、メモリ事業を売却して現在のキオクシアが誕生。その際、キオクシアに対してSKハイニックスは転換社債という形で3950億円を出資している。これは株に転換すると15%弱に相当。

そして2018年からの10年間、つまり2028年までは株を買い増しすることができないルールとなっているが、2028年以降はSKハイニクスがキオクシア株の出資比率を引き上げる事ができるため、業界では「SKがキオクシア買収に動いてくるのではないか?」との憶測がある。

しかし、今回インテルのNANDフラッシュ事業を買収することでSKのシェアが20%を超えることになり、すでにシェア20%ほどもっているキオクシアを買収すると「独占禁止法」の問題が出てくる事になった。

キオクシアは協業のWD(ウエスタンデジタル)のNANDメモリも主導権をもって製造しており、2社のシェアを足すと約35%くらいになるが、そのキオクシアをSKが買収するとなると実質55%のNAND業界の製造シェアをもってしまうことになる。

そうなれば各国の独占禁止法の審査が完全に通らなくなる。つまり、SKハイニックスがインテルメモリ部門を買収してくれたおかげで、SKがキオクシアを傘下に収めることができなくなったというわけ。

韓国に全く雇用を生まない

SKが買収したインテルのファブは中国にあるので、韓国人にはほとんど雇用増加の恩恵が受けられない。そもそも半導体製造はあまり雇用を生まない問題がある。

韓国の統計によると半導体製造は約1億円の投資あたり1.6人の雇用しか生まないとされており、高失業率を抱える韓国経済にとってはほとんどプラスとはならない。

半導体同業の買収は難しい

SKハイニックスによるインテルNAND買収。しばらくは相乗効果が得られない状況が続くのではないか。理由は以下。

  • SKハイニックスとインテルでは、半導体の設計、製造技術が違う。
  • インテルが使っている製造装置とSKが使っている製造装置や材料も微妙に違う。
  • 買収したインテルの設計と製造技術をそのまま採用し続けると、SKにとっては2つの開発コストがかかる。
  • SKとインテルの製造手法を統一しようとすると、それはそれでコストがかかる。
  • インテルのファブが中国にあり、政治的な事情に影響される。
  • インテルのエンジニアはプライドが高く、共にプライドが高い韓国人との間でいろいろまとまらない可能性あり。(対立を期待しているわけではない事に注意)
  • 2025年3月まで大連工場の運営権はインテルが保有。つまり、SKハイニックスは2025年までは改革ができない。
  • そもそもインテルNANDメモリ事業は、あまり上手くいっていない。

メモリ製造ビジネスは、1つの設計と1つの製造技術を使って爆発的に量産するのが最も理想的。しかし、SKハイニックスは2つの技術をもつ事になったため、いろいろ悩ましい問題を抱える事になった。

NECと日立のDRAM事業を統合したエルピーダメモリにおいても、初期段階は製造技術の主導権争いが続き、調整に長く時間がかかったが、SKハイニックスにおいても少なからず調整に時間とコストがかかってしまう。

半導体メモリ業界において、同業の企業統合はすぐに「1+1=2」とはならないという事。いずれにしても、キオクシアはSKがもたついている間にしっかりと利益を上げて財務力を強化したいところ。

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SSDビジネスの強化

今回の買収によるSK側のメリットとしては、インテルのSSD用コントローラーの技術と開発部を獲得できた事だといわれている。

コントローラーとは、その名の通りデータをコントロールするためのロジック半導体に分類されるチップ。競争が激しいSSDビジネスで高利益を出すには、データ転送に高速性と安定性をもたらすためのコントローラーも重要な要素となる。

以下の画像のように、SSDにはコントローラーが搭載され、さらに安定と転送スピードを上げるためのキャッシュメモリとしてDRAMも搭載される。

SSDの内部

日の丸半導体メモリの最後の砦

以下の写真は、筆者が四日市に行って撮影してきたもの。2020年11月ごろ。

キオクシア

仕事を終えた従業員何人かに会社のことをいろいろ尋ねてみたが、朝だったせいか社員はテンションが低く、しかも詳しいことははぐらかされてしまった。

そりゃ当然で、従業員には守秘義務ってものがある。週刊文集にベラベラしゃべってしまう某芸能人みたいに、企業内部のことをベラベラしゃべってくれる人はいないだろう。

しゃべりかけても上手く話しは続かなかったが、「韓国だけには絶対に負けないでほしい」と伝えさせてもらった。

韓国の半導体メモリ産業は、何もかも日本企業が技術供与してきたのだが、彼らは何一つ感謝することはない。そんな連中に対して日本企業が負けることなどあってはならない。

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