Advanced Micro Devicesの連結決算:通年の売上推移
年度 | 売上高・収益 | 営業利益 [営業利益率(%)] | 純利益・最終損益 [純利益率(%)] |
---|---|---|---|
1993年 | 16.48億ドル | 2.82億ドル [17.1%] | 2.08億ドル [12.6%] |
1994年 | 21.55億ドル | 4.69億ドル [21.8%] | 2.71億ドル [12.6%] |
1995年 | 24.68億ドル (Windows95発売) | 2.22億ドル [9.0%] | 2.16億ドル [8.8%] |
1996年 | 19.53億ドル | -2.53億ドル [-13.0%] | -0.68億ドル [-3.5%] |
1997年 | 36.71億ドル | 10.58億ドル [28.2%] | 5.22億ドル [14.2%] |
1998年 | 48.39億ドル | 14.11億ドル [29.2%] | 7.53億ドル [15.6%] |
1999年 | 40.11億ドル | 0.72億ドル [1.8%] | 1.10億ドル [2.7%] |
2000年 | 46.44億ドル | 8.88億ドル [19.1%] | 9.83億ドル [21.2%] |
2001年 | 38.91億ドル | -0.58億ドル [-1.5%] | -0.60億ドル [-1.5%] |
2002年 | 26.97億ドル | -12.25億ドル [-45.4%] | -13.03億ドル [-48.3%] |
2003年 | 35.19億ドル | 2.33億ドル [6.6%] | 2.74億ドル [7.8%] |
2004年 | 50.01億ドル | 2.22億ドル [4.4%] | 0.91億ドル [1.8%] |
2005年 | 58.48億ドル | 2.32億ドル [4.0%] | 1.65億ドル [2.8%] |
2006年 | 56.49億ドル | -0.47億ドル [-0.8%] | -1.66億ドル [-2.9%] |
2007年 | 60.13億ドル | -28.65億ドル [-47.6%] | -33.79億ドル [-56.2%] |
2008年 | 58.08億ドル | -19.55億ドル [-33.7%] | -30.96億ドル [-53.3%] |
2009年 | 54.03億ドル (3月 製造をグローバルファウンドリーズとして分離) | 6.64億ドル [12.3%] | 2.93億ドル [5.4%] |
2010年 | 64.90億ドル | 8.48億ドル [13.0%] | 4.71億ドル [7.3%] |
2011年 | 65.68億ドル | 3.68億ドル [5.6%] | 4.91億ドル [7.5%] |
2012年 | 54.22億ドル | -10.56億ドル [-19.5%] | -11.83億ドル [-21.8%] |
2013年 | 52.99億ドル | 1.03億ドル [1.9%] | -0.83億ドル [-1.6%] |
2014年 | 55.06億ドル | -1.55億ドル [-2.8%] | -4.03億ドル [-7.3%] |
2015年 | 39.91億ドル | -4.81億ドル [-12.1%] | -6.60億ドル [-16.5%] |
2016年 | 42.72億ドル | -3.72億ドル [-8.7%] | -4.97億ドル [-11.6%] |
2017年 | 53.29億ドル | 2.04億ドル [3.8%] | 0.43億ドル [0.8%] |
2018年 | 64.75億ドル | 4.51億ドル [6.9%] | 3.37億ドル [5.2%] |
2019年 | 67.31億ドル | 6.31億ドル [9.3%] | 3.41億ドル [5.1%] |
2020年 | 97.63億ドル | 13.69億ドル [14.0%] | 24.90億ドル [25.5%] |
2021年 | 164.34億ドル | 36.48億ドル [22.1%] | 31.62億ドル [19.2%] |
2022年 | 236.01億ドル | 12.64億ドル [5.4%] | 13.20億ドル [5.6%] |
2023年 | 226.80億ドル | 4.01億ドル [1.8%] | 8.54億ドル [3.8%] |
出所:AMD。本決算期は12月末。
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平均利益率
Windows95が発売された1995年を起点として、AMDの1995年から2022年度までの営業利益率の平均が0.4%。競合との比較として、インテルの1995年から2022年までの営業利益率の平均が26.3%。エヌビディアの2003年から2023年までの営業利益率の平均が16.2%。
会社の動向
- アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の設立は1969年。なお、競合のインテルは1968年設立。
- AMDの初期事業は、インテルのセカンドソースメーカーだったが、1985年にインテルがDRAMから撤退した事をきっかけに、マイクロプロセッサ技術のセカンドソースを中止したため、AMDは独自で互換プロセッサの開発へと進む。
- 本格的にパソコンが普及した2000年頃から2017年頃まで、ほとんど売上規模が上がっていない。インテルからシェアを取れなかった時期。
- 2010年代は、ネット利用の主役がパソコンからスマートフォンに移った事でPC需要が低迷。株価も100億ドル前後をウロウロしていた時期が続いた。
- 2009年3月に、AMDの半導体製造部門をグローバル・ファウンドリーズ(GF)として分離・独立。製造から撤退。大きな戦略転換。
- 近年のAMDの業績好調は、高性能で低コストなチップを開発できた事が要因。インテルよりも評価されるようになってきている。
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Advanced Micro Devicesの財政・経営状況
年度 | 総資産 [現金・手元資金] |
負債総額 [有利子負債] |
自己資本・純資産 [自己資本比率(%)] |
---|---|---|---|
1995年 | 30.31億ドル [4.91億ドル] |
9.31億ドル [2.72億ドル] |
21.00億ドル [69.3%] |
2000年 | 57.67億ドル [2.79億ドル] |
25.96億ドル [12.98億ドル] |
31.71億ドル [55.0%] |
2005年 | 72.87億ドル [17.95億ドル] |
39.35億ドル [13.70億ドル] |
33.52億ドル [46.0%] |
2010年 | 49.64億ドル [17.89億ドル] |
39.51億ドル [21.62億ドル] |
10.13億ドル [20.4%] |
2015年 | 31.09億ドル [7.85億ドル] |
35.21億ドル [22.62億ドル] |
-4.12億ドル(債務超過) [-13.3%] |
2020年 | 89.62億ドル [22.90億ドル] |
31.25億ドル [3.30億ドル] |
58.37億ドル [65.1%] |
2021年 | 124.19億ドル [36.08億ドル] |
49.22億ドル [3.13億ドル] |
74.97億ドル [60.4%] |
2022年 | 675.80億ドル [58.55億ドル] |
128.30億ドル [24.67億ドル] |
547.50億ドル [81.0%] |
2023年 | 678.85億ドル [57.73億ドル] |
119.93億ドル [17.17億ドル] |
558.92億ドル [82.3%] |
出所:AMD
- 2022年に総資産が急増しているが、これは「Xilinx(ザイリンクス)」を株式交換という手法により約500億ドル規模で買収完了した事が要因。
- AMDは、2009年に製造部門を分社化し、現在は工場を持たないファブレス企業であるため、赤字を出しにくい体質になっている。
- 優秀な製品ランナップを考慮すると、かつてのような業績不振に陥る事は今のところ考えにくい。
全社員数とR&Dの推移
年度 | 従業員数(連結) | 研究開発費 |
---|---|---|
2010年 | 11100人 | 14.05億ドル |
2015年 | 9100人 | 9.47億ドル |
2020年 | 12600人 | 19.83億ドル |
2023年 | 26000人 | 58.72億ドル |
出所:AMD
- ライバルのインテルは、2010年から2020年までに3万人ほど従業員が増加しているが、AMDは横ばい。
- 2022年度は、ザイリンクス買収完了で従業員が急増。2020年比較で2倍。
- 製造から撤退しているため、設備投資費用は特にナシ。
- 研究開発費は、データセンター/AI向け「GPU」の開発に費用がかかっている。
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収益構造・セグメント別の成績
部門 | 2020年/売上高 [営業利益/利益率(%)] |
2022年/売上高 [営業利益/利益率(%)] |
---|---|---|
データセンター | 16.85億ドル [1.98億ドル/11.8%] |
60.43億ドル [18.38億ドル/30.4%] |
クライアント (PC向け) |
51.89億ドル [16.08億ドル/31.0%] |
62.01億ドル [11.90億ドル/19.2%] |
ゲーミング (PS/Xbox等) |
27.46億ドル [-1.38億ドル/-5.0%] |
68.05億ドル [9.53億ドル/14.0%] |
組み込み | 0.15億ドル [-0.11億ドル/-73.3%] |
45.52億ドル [22.52億ドル/49.5%] |
出所:AMD
- 「データセンター」向けは、業界での評価が高いサーバーCPU「EPYC(エピック)」の売上が中核。
- 「パソコン」向けは、CPUの「Ryzen(ライゼン)」の売上が中心。ライバルはインテルのCoreシリーズ。
- 「ゲーミング」部門は、プレステやXboxなどに搭載される半導体の売上。
- 「組み込み系」は、CPU、GPU、FPGAなどをチップレット技術を利用して組み合わせた製品。セグメント中で最も売上成長率が高い。データセンターやパソコン向けだけではなく、成長分野である自動運転やマシン/ロボットなどにおいても売上を伸ばしたい。
地域別/国別の成績
国/地域 | 2016年/売上高 [全体比(%)] |
2020年/売上高 [全体比(%)] |
2022年/売上高 [全体比(%)] |
---|---|---|---|
アメリカ | 9.22億ドル [21.6%] |
22.94億ドル [23.5%] |
80.49億ドル [34.1%] |
日本 | 14.56億ドル [34.1%] |
10.33億ドル [10.6%] |
41.77億ドル [17.4%] |
欧州 | 1.54億ドル [3.6%] |
11.08億ドル [11.3%] |
17.73億ドル [7.5%] |
中国 (香港含む) |
11.53億ドル [27.0%] |
23.29億ドル [23.9%] |
52.07億ドル [22.1%] |
台湾 | 11.87億ドル [12.2%] |
23.69億ドル [10.0%] |
|
シンガポール | – | 10.96億ドル [11.2%] |
13.80億ドル [5.8%] |
その他 | 0.65億ドル [1.5%] |
7.16億ドル [7.3%] |
6.46億ドル [2.7%] |
出所:AMD
- アメリカへの売上比率が上がっているが、これはGoogle、マイクロソフト、Amazonなどの巨大データセンターをもつメーカーへの売上が貢献。
- 日本への売上もそこそこ多い。これは車載半導体やSONY向け売上によるものと思われる。
- 全体的に、巨大データセンター保有企業や、パソコンメーカー、ゲーム機メーカーが存在する国への販売が多い。
- AMDの売上先データに韓国が含まれていないのは、スマホ以外が弱い事が理由。韓国はスマホとメモリの国。
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AMDの強み
- サーバーCPUでは「EPYC(エピック)プロセッサ」の高評価。ベンチマークスコアでインテル「Xeonプロセッサ」を圧倒する結果も。
- パソコン向けでも、市場トップのIntelに対して戦えるランナップが揃う。あとは、イメージやブランドの問題。やはり、イメージの世界ではインテルの信頼性が高い。
- プレイステーションやXboxにおけるゲーム機チップビジネスをもつ。これもかなり大きい。
- 2020年に、回路構成を変更できる集積回路「FPGA」に強みをもつザイリンクスの買収を発表し、CPU/GPUとFPGAを統合した「組み込み製品」の魅力的なラインナップをもつ。次々と顧客を獲得。
サーバー用CPUで高評価
パソコンやスマートフォンの成長が停滞した現在、成長分野はサーバー/データセンター。
世界のデータセンターの電力消費量は2020年で200TWh(推計)。世界中の電力消費量の2~3%を占めているとされ、これは原発150~180基分の電力量に相当。
つまり、AmazonやGoogle、マイクロソフトなどの巨大データセンターをもつ企業は、爆発的な消費電力と設備投資費を少しでも抑えたいため、必然的に少しでも安くて性能が良い半導体を採用する事になる。
AMDが特に評価されているのは、そのデータセンターで使用されるサーバー用チップ「EPYC(エピック)プロセッサ」。性能面と同時に価格も良い事から、業界では採用する企業が急増中。
インテルは、それまでサーバーCPU市場で90%以上のシェアをもっていたが、ジワジワとAMDの存在感が大きくなっている。
AMDとインテルの中核事業を比較
年度 | データセンター向け/営業利益率(%) | パソコン向け/営業利益率(%) |
---|---|---|
2020年 | インテル:47.3% AMD:11.8% |
インテル:39.0% AMD:31.0% |
2022年 | インテル:11.9% AMD:30.4% |
インテル:19.8% AMD:19.2% |
- 2022年に、データセンター向けビジネスの営業利益率で、AMDはインテルを追い越す。
- また、パソコン向けでも2022年にインテルとAMDの利益率が同レベルに。
- この変化は、AMDのチップが市場から評価されている一つの証拠。今後、絶対的だったインテルのブランドが崩れていく可能性あり。「AMD Inside」が当たり前の時代が来るという事か。
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