CATLの決算(通年)の売上推移
年度 | 売上高・収益 | 営業利益 [営業利益率(%)] | 純利益・最終損益 [純利益率(%)] |
---|---|---|---|
2015年 | 57億元 (969億円) | ||
2016年 | 148億元 | 33億元 [22.3%] | |
2017年 | 199億元 | 49億元 [24.6%] | 33億元 [16.6%] |
2018年 | 296億元 | 41億元 [13.9%] | 36億元 [12.2%] |
2019年 | 455億元 | 57億元 [12.5%] | 45億元 [9.9%] |
2020年 | 503億元 | 55億元 [10.9%] | 42億元 [8.4%] |
2021年 | 1304億元 (2兆2168億円) | 198億元 (3366億円) [15.2%] | 159億元 (2703億円) [12.2%] |
- 2011年12月にCATL設立。日本の電子部品メーカーTDKの社員たちが駐在先の香港で起ち上げたATLからスピンオフしてCATLは誕生。
- 2017年に車載バッテリー分野で日本のパナソニックを抜き世界トップシェアへ。
- 中国の中央政府や地方政府からの多額の補助金などにより一気に急成長。
- 2016年から2021年までの営業利益率の平均が16.6%。
- CATLの営業利益率は業界トップ。2021年度は15.2%の利益率。比較として、2021年度のパナソニックエナジーの営業利益率が8.4%、韓国LGエナジーが4.3%、韓国サムスンSDIが7.8%。
- 2022年9月の株式時価総額が1.1兆元(日本円で18兆7000億円:1人民元=17円で換算)
車載バッテリーシェアの推移
企業 | 2019年 | 2020年 | 2021年 |
---|---|---|---|
CATL(中国) | 28% | 26% | 28% |
LGエナジー(韓国) | 13% | 25% | 23% |
パナソニック(日本) | 22% | 17% | 15% |
BYD(中国) | 8% | 6% | 7% |
サムスンSDI(韓国) | 6% | 7% | 6% |
SKオン(韓国) | 3% | 6% | 5% |
AESC(中国) | 3% | 2% | 2% |
Guoxuan(中国) | 3% | 2% | 2% |
CALB(中国) | 1% | 2% | 2% |
SVOLT(中国) | 1%未満 | 1%未満 | 1%未満 |
Sunwoda(中国) | 1%未満 | 1%未満 | 1%未満 |
- CATLは業界トップ。3割弱の市場シェアをもつ。
- 2021年度では、CATLを含む中国勢のシェアは40%以上。韓国勢は34%のシェアをもつ。
- 日本の最高位はパナソニック。市場シェアを落とし続けているが、これはCATLやLGエナジーなどと比較して投資規模が低いため。
- 日本の車載バッテリーのサプライヤーは、パナソニック、GSユアサ、東芝、ビークルエナジー(旧日立系で日産が買収)など。。
- 自動車メーカーとの合弁で言えば、トヨタとパナソニックの合弁企業(PPES、PEVE)や、ホンダとGSユアサの合弁企業(ブルーエナジー)、日産が20%を残して中国企業に売却したエンビジョンAESCなど。
- アメリカやヨーロッパメーカーはランキングに存在しない。現状の動向では、市場トップ5に入り込むような欧米メーカーは登場しないと予想できる。
なぜ中国バッテリーは安いのか
中国はバッテリー産業に力を入れている。バッテリーはエネルギー産業でもあり、つまり、中国は自動車産業と共に世界のエネルギー産業で世界的な主導権を取ろうとしている。
その中国産バッテリーはなぜ安いのか。価格競争の優位性は以下。
- リチウム鉱山というと、中国、豪州、チリ、アルゼンチンの4ヵ国に集中。
- その中でも中国のリチウム価格は特に安いが、その理由は安い人件費と、水質汚染や土壌汚染などの環境汚染に対する配慮が欠けているため。
- 中国政府からの工場建設や電気代、水道代などについて多額の補助金がある。工場建設や設備投資だけではなく、生産における電気代や水道代などにおいてもサポートがある。これはディスプレイ分野などと一緒。
中国は、自分達の土地を犠牲にしてでもバッテリーシェアと中国製電気自動車で世界シェアを確保したい。
主要顧客
- アメリカメーカー……テスラ、ゼネラルモーターズ、フォード。
- ドイツメーカー……フォルクスワーゲン、BMW、メルセデス・ベンツ。
- その他の欧州メーカー……ステランティス、ルノー。
- 日本メーカー……トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、ダイハツなど。
- 韓国メーカー……ヒョンデ、キア。
- 中国メーカー……北京汽車、吉利汽車、宇通客車、中通客車、金龍客車、上海汽車、福田汽車など。
CATLの顧客は、実質的に世界中の自動車メーカーとなる。中国では政府のEV補助金を受けたいのならば、中国政府の認定したメーカーのバッテリーを積むことが義務付けられている。
中国は世界最大の自動車市場。コロナ前の2019年度の中国自動車市場規模は2576万台。比較としてアメリカが1705万台、ヨーロッパが1560万台、日本が527万台。
そして、世界の自動車メーカーが中国市場に依存している状況。つまり、中国で自動車を売りたい企業ならばCATLのような中国メーカーと協力関係を結ぶ必要があり、それがCATLのバッテリートップシェアを確実にしている大きな理由。
電動バイクや蓄電池はTDKと合弁
2022年6月、中国CATLは日本のTDK完全子会社ATLと合弁企業を設立。主なビジネスは家庭用蓄電システムや電動二輪車の開発と製造販売。合弁会社は2社。
- Xiamen Ampcore Technology Limited……リチウム電池の「バッテリーセル」の開発と製造。出資比率は、CATL70%、ATL(TDK)30%。
- Xiamen Ampack Technology Limited……「電池パック」の製造。パッケージ化。出資比率は、CATL30%、ATL(TDK)70%。
CATLは、スケールメリットを活かし、車載電池だけではなく電動バイク、家庭用・産業用の蓄電システム分野の拡大を見込む。
CATLがTDKと組んだ理由としては、二輪向けでは日本のバイクメーカー(ホンダ、スズキ、ヤマハ、カワサキなど)へのビジネスを強化したいため。そして、蓄電池では日本市場へのビジネス拡大を考えているため。
日本資本が入っていないと日本市場からCATLが排除されてしまう。中国資本が入っていないと、TDKは中国市場から排除されてしまう。結果として両社で利益をシェアする形となった模様。
バッテリー産業は、石油や天然ガスなどと同じようなエネルギー産業の一つであり、日本はその分野を完全自前主義としたいところ。しかし、リチウムの権益や経済安全保障を考慮すれば、相互依存状態を形成した方が総合的なメリットがある。
なお、「バッテリーセル」の製造のほうが開発コストや設備投資がかかる中核的な存在であるため、セル製造開発会社の70%を出資するCATLの方がTDKよりも主導権がある形といえる。結局は「お金の話し」という事。
会社の歴史
2001年iPodが販売開始された年。ATLは、iPod向けのバッテリーでアップルのサプライヤー入りした事で一気に飛躍する土台ができる。
2005年TDKが約107億円でATLを買収。完全子会社化。アップル向けビジネスが安定してきた事が理由。
2011年12月、ATLの車載電池部門が分離・独立して「CATL(Contemporary Amperex Technology)」が誕生。
2017年日本のパナソニックを抜き、CATLが車載電池分野で世界シェアトップに。中国政府のサポートが背景にあり。
2018年~2020年頃世界の脱炭素化に向け、巨額投資が活性化。中国政府からの多額な補助金のもとで車載電池分野でダントツの規模となる。
CATLは中国内への投資だけではなく、世界的に投資を拡大している。しかも、その規模が膨大であるため、これからもしばらくはLGエナジーなどと共に業界を主導していく存在となる。