世の中をポジティブ転換したい情報サイト

中国DRAMメーカーCXMTの生産量と今後の投資目標

中国, 半導体

CXMTのロゴ

半導体大国への野望をもつ中国が力を入れている分野の一つがDRAM。(メモリの一つ)

DRAMの消費量が多い中国にとって、DRAMメーカーが3社に寡占化し、価格が高止まりしている状況を解消したい目標がある。そのため、中国はDRAMの量産を急ピッチで進めている状況だが、それがどれくらい進展しているのか。

今回は中国のDRAMメーカーである「CXMT(ChangXin Memory Technologies:チャンシンメモリーテクノロジーズ)」の生産状況と今後の投資について確認。

なお、CXMTの動向は筆者が注目している部分であるため、新たな情報が入りしだい次々と追記していく。

CXMTのDRAM開発と生産状況

初のDRAM量産開始はいつ?

CXMTの生産については、2019年ごろに「DDR4-DRAMの量産を開始した」とか「スマホ向けLPDDR4の生産開始」みたい発表されていたが、真相が明らかではなかった。

実際に製品が市場にでてきたのが2020年5月頃だったので、2020年がビジネス初年度という事になる。中国は誇張するところがあるので真実がわからないことに注意。

特許の問題

CXMTのような新規参入企業は特許が少ないことが問題だが、製造技術は2009年に倒産したドイツのキマンダ社の技術を採用して製造していくと2019年に発表している。この発表は業界では衝撃ニュースに。

倒産したキマンダの特許は、元々の親会社であるインフィニオン(ドイツ)が管理していたようだが、将来的に中国がDRAMに参入することを見据えて特許を他社に売ったりせずに残していたのだと思われる。

キマンダ倒産時、得意だったトレンチ構造技術は台湾ナンヤテクノロジーに譲渡し、グラフィックスDRAM技術はエルピーダメモリに譲渡したことがわかっていたが、埋め込み型ワード線DRAM技術(必須となる微細化技術)などの将来性のある技術は他社に売ることなく残しておいた模様。

  • トレンチ構造技術は微細化が必要な時代には適していないので台湾ナンヤに売却。
  • 市場規模が低いグラフィックスDRAMは、当時欲しがっていたエルピーダに売却。
  • 将来有望な汎用性の高い技術は残してライセンス販売。

そして、キマンダに在籍していた技術エンジニアを採用して開発を進めているとされる。

さらに、CXMTは2020年に豊富な特許をもつラムバス社とDRAM関連のライセンス契約を締結。アメリカ政府から制裁を受けないように知的財産の問題は確実に解決しようとしている模様。

2022年4月追記
なお、2021年のヨーロッパの特許出願ランキングの半導体関連部門において中国CXMTが10位に入っているようで、これは製造技術や英知が確立している一つの証拠と言える。
出所:https://news.mynavi.jp/techplus/article/20220420-2326101/

2020年までの生産状況

まず、以下画像の2020年のDRAMシェアを確認してもわかるが、中国のDRAM生産はほとんど存在感を示せていない。その他1.3%に含まれる状況。
2020年のDRAMシェア
それをふまえて、2020年末までに月産4万枚レベル(300mmウエハー)の生産量確保に向けて製造装置を導入していたとされる。

2019年頃に発表されていた2020年までの目標が1万枚~3.5万枚だったので、やはり設備投資のスピードが上がっている模様。
中国のDRAMとNANDの生産量の目標
世界のDRAMメーカーすべての月産能力の合計が約140万枚なので、CXMTの月産4万枚というと世界の2~3%程度の生産量だということになるが、まだ生産良品率が上がっていないので、既存メーカーの脅威となるレベルではない。

微細化プロセス

CXMTのDRAM設計においては、2009年に倒産したドイツのキマンダの46nmスタック構造DRAM技術を取得し、世界中から募集したエンジニアによってその技術をシュリンク(縮小)し、19nmプロセスで量産が始まったとされる。(スタック構造は現在の主流)

CXMTの技術開発は、台湾企業から引き抜いた開発チームと、サムスン出身者の開発チームの2チームが存在していて、台湾チームは19nmでサムスン出身チームが17nmの開発をしていた。

まずは19nmで量産を開始し、生産がスムーズになってきたら17nmに移行というプランがあったようで、それが今後は実現していく模様。

2022年4月追記
2022年3月に、17nmプロセスを採用したDDR3・DDR4量産品の歩留まりが40%に到達し、2022年の第2四半期(4〜6月)からニッチDRAMの出荷を開始する見通しであることが、調査会社によって明らかとなっている。
出所:http://www.emsodm.com/html/2022/03/24/1648095484320.html

大手3社の製造状況

  • サムスンは2021年10月、EUV露光装置を使用し14nmプロセスで量産に入ったと報道。
  • SKハイニックスは、2021年7月から14nmで量産に入ったと報道。
  • マイクロンは、2021年後半から14nmの量産に入ると報道。

微細化が1nm進むと、300mmウエハーからとれるDRAMが最大25%増える。そのため、各メーカーは「1nm」にしのぎを削っている。

歩留り(良品率)

2020年時点では、まだまだ製造良品率(歩留り)が上がっていない模様。業界では19nmプロセスの歩留りが50%未満ではないかと言われている。

2022年4月追記
2020年4月時点で、17nmプロセスの歩留りが40%に到達した事が明らかとなっている。

歩留りが80%~85%以上にならないとビジネスが黒字化しないだろうというのが業界コンセンサス。なお、サムスンやSKハイニクス、マイクロンなどの歩留りは90%以上が目標。

良品率が上がらないと「製造するほど赤字」という現象が起こるのだが、CXMTはまだまだノウハウが確立する途中段階なので仕方がない。

設備投資

CXMTの製造設備投資目標として、2020年末で月産能力4万枚ウエハーレベルの生産量を2021年末までに月産8万枚、2022年までに月産12万枚にまで増産する予定としている。月産12万枚は世界のDRAM生産能力の7~8%ほどのボリューム。

日本の製造装置メーカーである東京エレクトロンやSCREENなどによると、売上の2~3割が中国向けで、中国企業からの受注が強い状況だと発表されている。必然的にCXMTからの需要も高いと予想できる。

しかし、半導体不足による製造装置の需要急増により、思うように装置の導入が進んでいないという話しもあり、月産12万枚の生産能力をもつには2022年よりもさらに遅くなる可能性もある。

工場建設について

2021年現在、CXMTは月産12万枚ウエハーレベルの巨大工場を1つ持っている。そこで2019年ごろから本格的に試作を始め、2020年の夏ごろに量産に至っている。

2棟目のファブ建設を発表して実際に着工に入ったことが確認されれば、CXMTのDRAM量産が上手くいっている一つの目安だと考えていいが、2棟目のファブ建設の話しは2021年6月の段階では不明。

中国政府や地方政府(合肥市)からの資金援助に支えられるはずだが、いずれにしても今後は利益を無視した大規模投資をしてくるのだと予想されている。

最終的な目標生産量

中国のDRAMとNANDの生産量の目標
CXMTの生産量目標は12インチ(300mm)ウエハーレベルで月産50万枚。半導体製造棟1棟あたり月産能力で12.5万枚ウエハーレベルの工場を4つ建設する目標をもっている。

12.5万枚×4=50万枚

この「50万枚」という目標は2020年時点でのDRAMトップの韓国サムスンの製造量レベル。かなりテンションが高いのだが、サムスンと競争してDRAM価格を引き下げてほしいのが日本の願い。

2022年4月追記
CXMTは、かつては月産50万枚~60万枚の生産を目指していたが、現在はひとまず月産30万枚を目標としている模様。スマホやPC、家電などのDRAM需要が伸びないことや、米中対立の問題が背景にあると思われる。

LPDDRの生産

中国はファーウェイ、OPPO、シャオミ、VIVOなどのスマホメーカーがかなり多く、比例してDRAMのニーズがかなり多い。

スマホで韓国サムスンのライバルとなる中国は、スマホ向けDRAMを早く量産してDRAMの調達コストを抑えたいところ。

そのスマホには一般的な汎用DRAMではなく、低消費電力タイプのLPDDR4が主に搭載されるが、2021年の段階でCXMTのLPDDRが大手スマホメーカーに採用されているという話しは出ていない。

CXMTは中国スマホメーカーが要求するレベルのDRAMの品質と物量を確保できていない状況で、大手のスマホメーカーに採用されるのはもう少し歳月がかかる模様。

スマホ向けLPDDR4の世界シェアは約50%をサムスンが占めているが、中国がこの分野で存在感が出てくるまでは時間がかかる。

製造装置関連

CXMTのDRAM製造における露光装置、エッチング装置、成膜装置、洗浄装置、検査装置などの調達先は、アプライドマテリアル(米国)、東京エレクトロン、ASML(欧州)、ラムリサーチ(米国)、SCREEN(日本)、KLAテンコール(米国)、アドバンテスト(日本)などのトップメーカーから主に調達している。

やはり、製造ノウハウが確立していない段階なので、最も品質や評価が高い企業の装置を採用している模様。そして確実に装置を調達するために金銭的な支払状況も良好だというのが業界のコンセンサス。

なお、中国政府の要望で中国企業が製造した設備を使用するように要求されているが、今のところ半導体製造装置の国産化比率はかなり低い。

資金調達について

CXMTは、地方政府の安徽省合肥市が75%を出資、兆易創新(半導体メーカー)が25%の出資して設立されたとされる。

半導体ビジネスは毎年数千億から1兆円単位の多額の投資が必要だとされるが、やはり中国企業はほとんどが国有企業といってもいいので、資金面で不安がでればなんらかの形で中国政府から資金投入されると思われる。

なお、中国のもう一つのメモリ企業であるYMTCの親会社である清華紫光集団は、財務ルールを無視した過度な買収や投資により債務超過に陥っていたが、CXMTの場合はそのような資金ショートが起きたといった話しは出ていない。

良い点と悪い点

アメリカと対立する中国の半導体企業であり、しかも新参企業なのでいろいろ難しいとは思うが、CXMTの良いところをいくつかあげてみる。

良い点

  • 問題だった製造特許について、ドイツのキマンダの技術を獲得できたことにより一気に飛躍できる土台が整った。
  • DRAM業界が3社に寡占化して価格が高止まりしている状況なので、DRAM調達メーカーからCXMTには成長して価格競争を仕掛けてほしいという願いが生じる。それが様々な恩恵をもたらす可能性あり。
  • 中国にはDRAMを必要とする企業がたくさんあることで、その恩恵を受けやすい。PCではレノボ。スマホではシャオミ、OPPO、VIVOなど。データセンター向けはアリババ、ファーウェイなど。

問題点

  • 中国には半導体関連のエンジニアが乏しい。
  • 優秀な人材は海外企業から募集する必要があるが、アメリカからの制裁を避けながら人材確保しないといけない。
  • キマンダの技術を獲得したとはいえ、CXMTには知的財産・特許が乏しく、最先端のDRAM製造については他社の知的財産の問題をクリアしないといけない。
  • 運営資金に問題があるので、中国政府や自治体が補助金を出し続ける必要があるが、それが市場原理を破壊してしまえば、アメリカから制裁を受ける可能性がある。
  • 米中対立により、製造装置の導入が難しいかもしれない。実際に最先端露光装置においては、その問題は存在している。
  • 中国がDRAM開発に成功したとしても、外国企業からは「中国製」というだけで避けられてしまう可能性がある。特にアメリカの巨大データセンターを持つ企業、例えばGoogle、Amazon、Apple、マイクロソフトなどからは政治リスクの関係で避けられる可能性大。

EUV露光装置を導入できない

サムスン、SKハイニックス、マイクロンの大手DRAMメーカーは、将来的にDRAM生産においてEUV露光装置(最先端装置)を導入すると表明している。しかし、中国はアメリカ政府からの横槍でEUV露光機の導入ができない状況。

EUV露光装置はオランダのASMLが世界で唯一開発に成功し販売しているが、情報産業を死守したいアメリカ政府からの要請で、中国への輸出をストップしている。ASMLは忖度状態。

現状が続けば、CXMTはEUV露光装置の以前の技術である「ArF液浸露光機」を使い「マルチパターニング技術(何度も回路を描写する方法)」を活用して製造していくことになるが、やはり何度も露光する方法は製造コストが高くなってしまう問題がある。

マイクロンによると、「12nmあたりまではEUVよりもArF液浸を使ったほうが全体的な価格競争で優位に立てるため、それまではArF液浸露光機を中心に製造を続ける予定」としているが、それを基準に言えば11nm以降はEUV露光装置を使用しないと価格面の競争で負けてしまうという事になる。

「ArF液浸露光」+「マルチパターニング法」の問題

  • 露光工程が増えることになるマルチパターニング法は生産性が悪い。競争に負ける。
  • 露光回数が増えることで、レジストやエッチングなどの材料コストが増加。
  • ナノメートルレベルの位置を合わせる露光精度の技術的な難しさ。良品率の低下。(EUV露光機を導入できない中国の半導体製造メーカーが悩んでいる問題)
  • プロセスを11nm→10nm→9nm→8nm→7nmというように微細化を求める場合、EUV露光機を使用した製造と比較すると、製造コストと技術難易度が必ず増大。

微細化はどこまで?

問題は「DRAMメーカー各社がどこまで微細化を実現できるのか」という事。DRAMの特性上、微細化が進むほどキャパシタ(蓄電)の容量を維持できなくなる問題がある。(電気を蓄えてデータを維持するのがDRAMだが、それができなくなるという事)

各メーカーは、微細化と共にそれ以外の技術的な工夫で解決しようとしている状況だが、いずれにしても微細化は競争において重要な要素となる。

DRAMの微細化は、2022年時点の最先端である14nmでも微細化が難しくなっているとされるが、仮に良品率の問題で実質的に10nmや11nmほどで微細化が止まってしまうと仮定すると、EUV露光装置を導入できないCXMTでも「ArF液浸+マルチパターニング」を使用した製造ノウハウが確立できれば、中国の力技でなんとかビジネスが成立するはず。

しかし、8nm、7nm、6nmといったレベルまで微細化と高良品率が実現した場合、CXMTにおいては技術どうこうの前に製造コストで他社に大きく負けてしまう事になるため、ビジネス的にかなり難しくなる。

なお、そのレベルまで微細化が進む頃には、DRAMに代わってMRAMが台頭している可能性もある。(MRAMは日本のキオクシアやソニーが開発をリードしている不揮発性の次世代メモリ)

既存DRAMメーカーが歩留り向上にのめり込んでいるスキに、日本企業はMRAMで業界をひっくり返したいところ。

関連記事
最近の投稿
カテゴリー
error: