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テキサス・インスツルメンツ

テキサス・インスツルメンツの業績推移:売上・営業利益率の推移

Texas Instrumentsの連結決算:通年の売上推移

テキサス・インスツルメンツ(TI)の業績推移:売上高・営業利益・純利益・利益率の推移
年度 売上高・収益 営業利益
[営業利益率(%)]
純利益・最終損益
[純利益率(%)]
2003年 98.34億ドル 9.65億ドル
[9.8%]
11.98億ドル
[12.2%]
2004年 125.80億ドル 22.07億ドル
[17.5%]
18.61億ドル
[14.8%]
2005年 133.92億ドル 27.91億ドル
[20.8%]
23.24億ドル
[17.4%]
2006年 142.55億ドル 33.67億ドル
[23.6%]
43.41億ドル
[30.5%]
2007年 138.35億ドル 34.97億ドル
[25.3%]
26.57億ドル
[19.2%]
2008年 125.01億ドル 24.37億ドル
[19.5%]
19.20億ドル
[15.4%]
2009年 104.27億ドル 19.91億ドル
[19.1%]
14.70億ドル
[14.1%]
2010年 139.66億ドル 45.14億ドル
[32.3%]
31.48億ドル
[22.5%]
2011年 137.35億ドル 29.92億ドル
[21.7%]
22.01億ドル
[16.0%]
2012年 128.25億ドル 19.73億ドル
[15.3%]
17.28億ドル
[13.5%]
2013年 122.05億ドル 28.32億ドル
[23.1%]
21.25億ドル
[17.4%]
2014年 130.45億ドル 39.47億ドル
[30.2%]
27.77億ドル
[21.3%]
2015年 130.00億ドル 43.22億ドル
[33.2%]
29.86億ドル
[22.9%]
2016年 133.70億ドル 48.55億ドル
[36.3%]
35.95億ドル
[26.9%]
2017年 149.61億ドル 60.83億ドル
[41.1%]
36.48億ドル
[24.3%]
2018年 157.84億ドル 67.13億ドル
[42.5%]
55.37億ドル
[35.1%]
2019年 143.83億ドル 57.23億ドル
[39.8%]
49.85億ドル
[34.7%]
2020年 144.61億ドル 58.94億ドル
[40.7%]
55.68億ドル
[38.5%]
2021年 183.44億ドル 89.60億ドル
[48.8%]
77.36億ドル
[42.1%]
2022年 200.28億ドル 101.40億ドル
[50.6%]
87.09億ドル
[43.5%]
2023年 170.19億ドル 73.31億ドル
[43.1%]
65.10億ドル
[38.2%]
出所:Texas Instruments。本決算期は12月末。
テキサス・インスツルメンツの2003年から2022年までの営業利益率の平均が29.6%。
  • テキサス・インスツルメンツ(略称:TI)は、アメリカの半導体メーカー。特にアナログ半導体に強み。
  • 1998年にDRAMから撤退。メモリ事業はマイクロン(米国)に売却。
  • 2000年頃までは選択と集中が進んでいなかった事から営業利益率が10%未満だった年が多く、赤字を出すこともあった。
  • 2013年以降は利益率が40%を超えるようになっているが、2012年に買収したナショナル・セミコンダクターとの相乗効果が大きいとされる。
  • アナログ半導体分野で、豊富な製品ポートフォリオをもっているので、顧客とのビジネスも有利に進む。それが高利益率の理由の一つ。
  • 2021年のアナログICの出荷個数は2051億個。DRAMが220億個なのでDRAMの10倍の市場。それだけ需要が多い市場で、TIは存在感をもつ。
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Texas Instrumentsの財政・経営状況

テキサス・インスツルメンツ(TI)の財務推移:総資産・純資産・自己資本比率の推移
年度 総資産
[現金・手元資金]
負債総額
[有利子負債]
自己資本・純資産
[自己資本比率(%)]
2005年 150.63億ドル
[12.19億ドル]
31.26億ドル
[6.61億ドル]
119.37億ドル
[79.2%]
2010年 134.01億ドル
[13.19億ドル]
29.64億ドル
[なし]
104.37億ドル
[77.9%]
2015年 162.30億ドル
[32.18億ドル]
62.84億ドル
[41.20億ドル]
99.46億ドル
[61.3%]
2020年 193.51億ドル
[65.68億ドル]
101.64億ドル
[67.98億ドル]
91.87億ドル
[47.5%]
2021年 246.76億ドル
[97.39億ドル]
113.43億ドル
[77.41億ドル]
133.33億ドル
[54.0%]
2022年 272.07億ドル
[90.67億ドル]
126.30億ドル
[87.35億ドル]
145.77億ドル
[53.6%]
2023年 323.48億ドル
[85.75億ドル]
154.51億ドル
[112.23億ドル]
168.97億ドル
[52.2%]
  • 株主還元がとてつもないので、爆発的な利益を出し続けているわりに、あまりお金が会社に残らない。アップルと同じ。

連結社員数と研究開発投資について

テキサス・インスツルメンツの全従業員数、設備投資費、研究開発費の推移
年度 従業員数(連結) 設備投資費 研究開発費
2010年 28400人 15.70億ドル
2015年 29900人 12.67億ドル
2020年 30000人 15.30億ドル
2022年 33000人 42億ドル 16.70億ドル
出所:テキサス・インスツルメンツ
  • 2011年にアナログICに強みをもつNational Semiconductorを買収し、従業員数が34700人に増加したが、数年かけて雇用調整(リストラ)を決行。2015年には買収前と同等の従業員数(29900人)に戻った。半導体需要の拡大期でも厳格な経営判断がある。
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会社の概要

  • 1950年に世界初のシリコン型トランジスタを製品化。「老舗企業」といわれる理由の一つ。
  • 世界14か所に工場をもつ。300mmウエハー工場は14工場のうち2工場。2工場ともテキサス州。(2022年時点)
  • 日本では1960年代から営業拠点をもち、生産工場もあり。日本国内の生産工場は、福島県(会津若松市)と茨城県(美浦村)に200mmファブをもつ。(2022年時点)。
  • TIの自社工場で製造する半導体のうち、80%がアナログ半導体。製品全体の80%が自社工場生産。残りの20%が台湾のTSMCやUMCなどのファウンドリーへ委託。(2022年時点)
  • 全体の売上構成は、アナログ製品が70%、残りの約30%がMCUなどの組み込みプロセシング製品。(2022年時点)

1990年代までは総合半導体メーカー

テキサス・インスツルメンツは、1990年代までは、ロジック半導体、メモリ半導体(DRAM)、アナログ半導体など、いろいろな半導体製品を扱う総合半導体メーカーだった。

しかし、それまで営業利益率が10%に満たない年が多く、しかも営業利益率の変動が非常に激しかった。営業赤字を記録した年もある。

特に、それまで行っていたDRAM事業における特有のシリコンサイクルによって経営状況が極端に悪化することがあった。(シリコンサイクルとは需要と供給のバランスが定期的に崩れる現象)

選択と集中

利益が不安定化していたテキサス・インスツルメンツは「選択と集中」に着手。まずは定期的に大きく損失を出すことがあったDRAM事業を売却するところから始まっている。

1998年DRAM事業を米国マイクロンに売却。(マイクロンは日本のエルピーダを買収した企業)
2005年液晶ドライバIC事業を売却。
2006年センサー事業売却。また制御機器向け事業を売却。
2007年DSL CPE(デジタル加入者線宅内装置)事業をドイツのインフィニオン・テクノロジーズに売却。
2010年ケーブルモデム事業を米国インテルに売却。
  • DRAMをマイクロンに売却した段階で、かなり経営状況が安定するようになったようだが、他にもいろいろと事業を手放していく。そして、特化したのはアナログ半導体。
  • 選択と集中を進めた2002年ごろから、営業利益率がしだいに上昇していく。かつては営業利益率が不安定だったが、次第に安定的になっていき、2005年~2010年には営業利益率が20%前後へと安定化していく。
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アナログ半導体の売上シェア

アナログ半導体メーカーの市場シェアランキング:1995年、2015年、2020年を比較
順位 1995年
[-]
2015年
[市場シェア(%)]
2020年
[市場シェア(%)]
1位 STマイクロ(スイス) テキサス(米国)
[18%]
テキサス(米国)
[19%]
2位 フィリップス(オランダ) インフィニオン(ドイツ)
[6%]
アナログ・デバイセズ(米国)
[9%]
3位 ナショナルセミ(米国) スカイワークス(米国)
[6%]
スカイワークス(米国)
[7%]
4位 モトローラ(米国) アナログ・デバイセズ(米国)
[6%]
インフィニオン(ドイツ)
[7%]
5位 テキサス(米国) STマイクロ(スイス)
[5%]
STマイクロ(スイス)
[6%]
6位 東芝(日本) マキシム(米国)
[4%]
NXPセミ(オランダ)
[4%]
7位 三洋電機(日本) NXPセミ(オランダ)
[4%]
マキシム(米国)
[4%]
8位 アナログ・デバイセズ(米国) リニア・テクノロジー(米国)
[3%]
オンセミ(米国)
[3%]
9位 シーメンス(ドイツ) オンセミ(米国)
[2%]
マイクロチップ(米国)
[2%]
10位 NEC(日本) ルネサス(日本)
[2%]
ルネサス(日本)
[2%]
出所:1995年はガートナー、2015年~2020年はIC Insights。
  • 1995年に業界5位だったテキサスは、2011年に同業National Semiconductor(ナショナル・セミコンダクター)を買収。それにより生産量と製品ラインナップが拡充し、2020年度は市場シェア19%でダントツのトップシェアへ。
  • アナログIC業界は、設備投資費が最先端ロジック/メモリのように高額になる事はなく、製品も多品種なので、小規模でもそれなりにビジネスを続けることができる。そのため、多くの企業でシェアを分け合っているような状況。そして、上位メーカーはアメリカやヨーロッパ、日本などの先進国の半導体メーカーばかりが並ぶ。
  • 韓国勢や台湾勢が入り込めていないのは、アナログ分野は設計や経営的にも難しく、技術や信頼、ポートフォリオが蓄積されるまで時間がかかるため。また、先進国の古参メーカーが乱立し、競争が激しいため参入しても利益がでない事も理由。
  • なお、日本企業はルネサス・エレクトロニクスが世界シェア2%で10位に入る。なお、アナログ半導体を手掛ける日本企業の売上を合計すると世界シェア約10%ほどある。

絶対的な理由

アナログICは多品種であるため急成長が難しい。例えば、サムスンはDRAMにおいて1980年代初頭に本格注力し、約10年後の1992年にトップシェアになったが、アナログICはDRAMのように規格化された製品を一気に量産すれば良いビジネスではない。

そして、アナログ分野はデジタル半導体のような「0」と「1」だけの世界ではなく、「あいまい」な世界だったりする。そのため、回路設計においても難しさがつきまとう。優秀な人材も短期間では育たない。

そのアナログ分野で、テキサス・インスツルメンツが評価される理由は以下。

  • TIは、1950年に世界初のシリコン型トランジスタを製品化。半導体開発において長い歴史をもつ名門企業。優秀なエンジニアが長い歳月をかけてつくりあげてきた英知が製品に刻まれており、それが業界で認識されている。
  • 多くの企業はテキサスと長く取引をしており、慣性的に製品を使い続けている。
  • 電子企業はテキサスの製品に信頼を持っているので、他のアナログ製品が必要となれば「次もテキサスに」となる。同じメーカー製品を揃えた方が相性が良く、不具合がないため、TI製品の採用が広がっていく。
  • テキサスも製品ラインナップが幅広いので、顧客が必要な製品を用意できる。
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車載向けマイコンにも強み

自動車向けマイクロコントローラー(マイコン)市場においてもテキサス・インスツルメンツは約10%ほどのシェアをもっている。以下は2020年のデータ。

2020年度の車載向けマイコンの市場シェア
順位 企業 市場シェア(%)
1位 ルネサス・エレクトロニクス 日本 26.7%
2位 NXPセミコンダクターズ オランダ 26.3%
3位 インフィニオン ドイツ 16.9%
4位 テキサス・インスツルメンツ アメリカ 9.8%
5位 マイクロチップ・テクノロジー アメリカ 6.9%
出所:インフィニオンの決算報告書より引用。
  • テキサスは自動車向け半導体をさらに強化中。
  • マイコン分野は日本のルネサスが業界トップシェア。ルネサスの顧客はトヨタ、ホンダ、日産などの日系メーカーが中心。

日本のアナログ半導体は再編が加速

日本企業の中にはアナログ半導体事業をもっている会社が多いが、スケールメリットが必要なハイテク業界では必然的に再編や事業強化が進んでいる模様。

  • 2021年1月、日清紡HDは連結子会社の新日本無線とリコー電子デバイスの2社を統合すると発表。新社名は「日清紡マイクロデバイス」
  • ジャパンセミコンダクター(東芝グループ)は、車載向けを中心にアナログ製品を強化中。また、月産能力10万枚の生産ラインで製造受託ビジネスも拡大していく模様。
  • ルネサスもアナログデバイスに強い欧米企業を次々と買収し、ラインナップ強化中。
  • 2019年、ミネベアミツミはエイブリック(SEIKOの子会社)を完全子会社化。
  • 2016年、トレックス・セミコンダクターはフェニテックセミコンダクターを完全子会社化。車載向けに強いファブレスメーカーが工場所有することに。電源ICが中核。

日本企業のアナログ半導体の売上高をすべて合わせると、世界シェア10%を持っているとされる。上手く再編・統合して世界シェア上位に入る企業の登場に期待。

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