比亜迪(BYD)の連結決算:通年の売上推移
年度 | 売上高・収益 [世界販売台数] | 営業利益 [営業利益率(%)] | 純利益・最終損益 [純利益率(%)] |
---|---|---|---|
2002年 | 22.91億元 (458億円) | – | 6.58億元 (132億円) [28.7%] |
2003年 | 40.63億元 | – | 8.40億元 [20.7%] |
2004年 | 64.26億元 | – | 9.94億元 [15.5%] |
2005年 | 64.98億元 | – | 5.03億元 [7.7%] |
2006年 | 129.39億元 | – | 11.17億元 [8.6%] |
2007年 | 212.11億元 | – | 16.12億元 [7.6%] |
2008年 | 267.88億元 | – | 10.21億元 [3.8%] |
2009年 | 394.69億元 | – | 37.94億元 [9.6%] |
2010年 | 466.85億元 | – | 25.23億元 [5.4%] |
2011年 | 463.12億元 | – | 13.84億元 [3.0%] |
2012年 | 443.81億元 | – | 0.81億元 [0.2%] |
2013年 | 497.68億元 | – | 5.53億元 [1.1%] |
2014年 | 553.66億元 | – | 4.34億元 [0.8%] |
2015年 | 776.12億元 | – | 28.23億元 [3.6%] |
2016年 | 1002.08億元 | – | 50.52億元 [5.0%] |
2017年 | 1026.51億元 | – | 40.66億元 [4.0%] |
2018年 | 1217.91億元 | – | 27.80億元 [2.3%] |
2019年 | 1277.39億元 [14.7万台] | 23.12億元 [1.8%] | 16.14億元 [1.3%] |
2020年 | 1565.98億元 [42.7万台] | 70.86億元 [4.5%] | 42.34億元 [2.7%] |
2021年 | 2161.42億元 [73.0万台] | 64.23億元 [3.0%] | 30.45億元 [1.4%] |
2022年 | 4240.61億元 [186.4万台] | 194.03億元 [4.6%] | 166.22億元 [3.9%] |
2023年 | 6023.15億元 [302万台] | 324.42億元 [5.4%] | 300.40億元 [5.0%] |
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平均利益率
BYDの2019年から2023年までの営業利益率の平均が3.9%。
比較として、テスラの2020年から2023年までの営業利益率の平均が11.1%。
比較として、テスラの2020年から2023年までの営業利益率の平均が11.1%。
会社の動向
- BYD(ビーワイディー、中国名:比亜迪股份有限公司)の設立は1995年。電気自動車、バッテリー、モバイル製品の部品製造や組み立てなどを手掛ける中国企業。
- 元々は携帯電話のバッテリー事業を中核とした企業。2003年に自動車分野に参入。そこからEV/電気自動車の完成車までビジネスを拡大。近年は電気自動車で一気に飛躍した事で、世界的には「EVメーカー」としての認識されるように。
- 2010年、日本の自動車用金型メーカー「オギハラ」の館林工場を買収した事で日本では話題に。なお、この買収がEVメーカーとしての一つの基礎につながっている。
- BYDの2022年度の販売台数(186.4万台)のうち、電気自動車(EV)が91.1万台、プラグインハイブリッド(PHEV)が94.6万台。中国ではEV販売台数トップ。EVの世界市場ではテスラ(131.4万台)に次いで2位。
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比亜迪(BYD)の財政・経営状況
年度 | 総資産 [現金・手元資金] |
負債総額 [有利子負債] |
自己資本・純資産 [自己資本比率(%)] |
---|---|---|---|
2005年 | 112.13億元 [6.82億元] |
70.38億元 [21.95億元] |
41.75億元 [37.2%] |
2010年 | 538.75億元 [19.78億元] |
354.15億元 [140.52億元] |
184.60億元 [34.3%] |
2015年 | 1154.86億元 [60.10億元] |
831.92億元 [138.73億元] |
322.94億元 [28.0%] |
2020年 | 2010.17億元 [137.39億元] |
1365.63億元 [522.82億元] |
644.54億元 [32.1%] |
2021年 | 2857.80億元 [554.94億元] |
1915.36億元 | 1042.44億元 [36.5%] |
2022年 | 4938.61億元 [720.98億元] |
3724.71億元 | 1213.90億元 [24.6%] |
出所:BYD(比亜迪)
- 今のところBYDの財務的な問題はない。しかし、近年は中国景気が急速に悪化している中で、電気自動車の将来性が不確実である事の不安要因がある。
- 中国政府はBYDを中心として、中国自動車メーカーの世界展開を進める意向。中国政府からの相応の援助がある事がBYDの強み。
- 2023年7月末時点の株式時価総額が7424億元(日本円で約15兆円)。「中国の希望の星」のような存在である事が株価をサポート。なお、ウォーレン・バフェット率いる世界最大の投資会社「バークシャー・ハサウェイ」もBYDに出資。
- 就職において、中国では超人気の企業。人口が多い中国では、高学歴で優秀な新卒者でも超難関だとされる。
自動車メーカーとの提携について
- BYDとテスラは車載電池の供給で提携。
- 2020年、BYDとトヨタはEV開発で提携。合弁会社を設立。
- 2020年、BYDと日野自動車は、商用EV開発で提携。
トヨタがBYDと関係を深める理由は、中国市場が政治的に難しいため。単独ではなく中国メーカーと相互依存関係を構築したほうが良いという判断。
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収益構造
部門 | 2005年/売上高 [売上比率(%)] |
2020年/売上高 [売上比率(%)] |
2022年/売上高 [売上比率(%)] |
---|---|---|---|
自動車関連 (電気自動車) |
6.50億元 [10%] |
829.97億元 [53%] |
3246.91億元 [76.6%] |
携帯電話関連 | 18.84億元 [29%] |
610.73億元 [39%] |
988.15億元 [23.3%] |
リチウム バッテリー |
20.79億元 [32%] |
125.28億元 [8%] |
– |
ニッケル バッテリー |
17.54億元 [27%] |
– |
出所:BYD(比亜迪)
- 2005年頃のBYDは、バッテリーとモバイル関連の製造が中核で、それらの売上比率が高かった。
- 近年は電気自動車の売上を伸ばしている事により、自動車関連の売上比率が増加中。
国内と海外売上比率
年度 | 国内(中国) | 海外 |
---|---|---|
2018年 | 87% | 13% |
2019年 | 84% | 16% |
2020年 | 61% | 39% |
出所:BYD(比亜迪)
- BYDの売上のほとんどが地元の中国。EVシフトが早いノルウェーなどの北欧への輸出も増えている模様。「価格の安さ」と「納車の速さ」がウリ。
- 今後、東南アジア現地での生産を目指す。完成車の輸出ではなく現地生産。
- 近年のアメリカ政府は中国メーカーへの規制を強化。また、インド政府は2023年7月にBYDのインド国内工場設立提案を拒否。これでBYDは、米印の2つの巨大市場へのビジネスが難しくなった。
- 2023年から日本国内でEV販売を開始。日本メーカーが電気自動車の投入が遅れている事から勝算があるとして、販売網を急ピッチで構築している模様。しかし、今のところ目立った売れ方はしていない。2023年2月のBYD車の国内新車登録台数は37台だったとされる。比較として韓国ヒョンデが70台。
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BYDの車載バッテリーシェア
企業 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|---|---|
CATL(中) | 28% | 26% | 28% | 37.0% |
LGエナジー(韓) | 13% | 25% | 23% | 13.6% |
BYD(中) | 8% | 6% | 7% | 13.6% |
パナソニック(日) | 22% | 17% | 15% | 7.3% |
SKオン(韓) | 3% | 6% | 5% | 5.4% |
サムスンSDI(韓) | 6% | 7% | 6% | 4.7% |
出所:SNEリサーチ
- 車載バッテリー市場トップが中国CATL。政府支援のもとで急成長。世界展開も早く、欧州に巨大工場を設立。
- 中国BYDの車載電池シェア成長率が高いが、自社EVだけではなく、中国でEVを生産するテスラにも供給している事が要因。他にもトヨタとも提携している。
- しかし、BYDがEVメーカーとして脅威になれば、テスラやトヨタから関係を切られる可能性あり。
- 中国内で販売されるEVは、中国生産のバッテリーを採用する事が義務付けられている事から、CATLやBYDは恩恵を受けている。
- 日本トップはパナソニック。他社と比較して増産投資が後れたが、和歌山工場やアメリカ工場の生産が波に乗れば、シェアが上がってくる見通し。
- 韓国勢は、LGエナジーは、テスラ、ステランティス、GM、ホンダ、ヒュンダイなど、多くのメーカーと提携。スケールメリットを見込んで、韓国人投資家からの期待が高い。
- SKオンは米国フォードと提携。しかし、技術的な問題と共に、投資資金に不安を抱え、ドル建て債で資金調達している状況。
- サムスンは、BMWやステランティスなどと提携。ヨーロッパで増産投資が続く。
モバイル用バッテリーの市場シェア
順位 | 企業 | 2017年 | 2021年 |
---|---|---|---|
1位 | ATL(TDKの完全子会社) | 27% | 42% |
2位 | LGエナジー(韓国) | 14% | 22% |
3位 | サムスンSDI(韓国) | 15% | 18% |
4位 | BYD(中国) | 10% | 8% |
5位 | 村田製作所(日本) | 6% | 5% |
出所:ストラテジー・アナリティクス。一部、推計値を含む。
- BYDは、スマホ/タブレット向けのバッテリーシェアで世界4位。
- スマホの市場規模が縮小傾向にあるため、ほとんどのメーカーは増産に消極的だが、BYDはシェア拡大への意欲が強い。
- 市場トップシェアは、TDK(日本)の完全子会社「ATL」。アップルの第一サプライヤーであり、安定的なビジネスができている。TDKの営業利益の多くをもたらす存在。
- サムスンSDIは、グループ内製品「GALAXYスマホ」向けへ納品。バッテリーの外販は少ない。
- 村田製作所は、2017年にソニーの電池事業を譲受して参入。シェア拡大への意欲は低い。全個体電池の開発を急ぐ。
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