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サムスン半導体の損益分岐点

サムスン半導体事業の損益分岐点をDRAM価格基準で調べた結果

サムスン半導体の赤字転落で損益分岐点が判明

大韓民国の稼ぎ頭「サムスン電子」の稼ぎ頭「半導体事業」が2023年1-3月期から赤字に陥っている。サムスン半導体の赤字は2008年リーマンショック以来のわりと珍しい現象。

2022年10-12月期の業績からほとんど利益が出ていなかったが、今回の業績の大幅変動により、サムスン電子の半導体部門がどのくらいのメモリ価格で赤字になってしまうのか、その損益分岐点が大まかに分かるようになった。

今回は、DRAM eXchangeを参考に、サムスンが得意なDRAMにおけるスポット価格を基準に計算。(スポット価格とは、直近の取引価格で、長期契約の価格ではない)

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サムスンが2022年後半から赤字に転落するまでの成績を確認

サムスンの2022年7-9月期から2023年1-3月期までの業績:売上高・営業利益率
年/四半期 売上高 営業利益
[営業利益率(%)]
2022年
7-9月期
23.02兆ウォン
(2兆3020億円)
5.12兆ウォン
(5120億円)
[22.2%]
2022年
10-12月期
20.07兆ウォン
(2兆70億円)
0.27兆ウォン
(270億円)
[1.3%]
2023年
1-3月期
13.73兆ウォン
(1兆3730億円)
-4.58兆ウォン(赤字)
(-4580億円)
[-33.4%]
2023年
4-6月期
14.73兆ウォン
(1兆4730億円)
-4.36兆ウォン(赤字)
(-4360億円)
[-29.6%]
出所:サムスン電子。日本円表記は1ウォン=0.1円で換算。
注目は2022年10~12月期。営業利益が0.27兆ウォンで利益率1.3%。なんとか黒字を確保したが、ほとんど利益がでていない。つまり、この2022年10~12月期の平均価格がサムスン半導体の損益分岐点だと仮定し、話しを進めていく。
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各四半期のDRAM平均取引価格

世界のDRAM価格がわかる台湾のDRAM eXchangeを元に、サムスン半導体の損益分岐点を確認していく。

なお、サムスン半導体は、DRAMやNANDフラッシュメモリなどのメモリ半導体だけではなく、半導体受託製造(ファウンドリー)なども行っているが、利益の大半がメモリであり、そのメモリの中でも特にDRAMの売上比率が高い事と、DRAMとNANDの価格には連動性がある事から、DRAM価格を基準に考えていく。

2022年8月19日のDRAMスポット価格

まずは、サムスン半導体の営業利益率が「22.2%」だった2022年7-9月期の平均値として、その期間の中盤(2022年8月19日)のDRAM価格。

2022年8月19日のDRAM価格

この四半期間の中頃において「DDR4 16Gb (2Gx8) 2666」を基準とした「Session Average(平均取引価格)」は「5.758ドル」。また、他の種類のDRAM価格も確認してほしい。

なお、この期間の初日と末日の平均値を算出する方法もあったが、だいたい同じ価格だったため、わかりやすく中頃日の価格で説明していく事にした。

2022年11月18日のDRAMスポット価格

続いて、サムスン半導体の営業利益率が「1.3%」だった2022年10-12月期の平均値として、中頃(2022年11月18日)のDRAM価格。

2022年11月18日のDRAM価格

「DDR4 16Gb (2Gx8) 2666」の平均取引価格が「4.370ドル」。サムスンの半導体部門は、この時期にほとんど利益が出ていないため、大まかに言えば、このあたりが損益分岐点で、それを下回ると赤字、上回れば黒字となる。

他の種類においても確認。

  • DDR4 16Gb (2Gx8)2666……4.370ドル
  • DDR4 16Gb (2Gx8)eTT……3.378ドル
  • DDR4 8Gb (1Gx8) 2666……2.159ドル
  • DDR4 8Gb (512Mx16) 2666……2.160ドル
  • DDR4 8Gb (1Gx8) eTT……1.559ドル
  • DDR3 4Gb 512Mx8 1600/1866……1.432ドル

2023年時点のDRAMのベンチマーク製品が「DDR4 8GB」。その価格が「約2.1ドル」である事も注目。なお、これはスポットDRAM価格であり、大口顧客への取引価格を無視しているが、一つの目安として考えてほしい。

2023年2月17日のDRAMスポット価格

さらに、サムスン半導体の営業損失率が「-33.4%」の大赤字に陥った2023年1~3月期の中盤(2023年2月17日)のDRAM価格も確認。

2023年2月17日のDRAM価格

「DDR4 16Gb (2Gx8) 2666」の平均取引価格が「3.675ドル」。このレベルのDRAM価格になると四半期で-4.58兆ウォン(-4580億円)の大赤字を出してしまう。特に利益率が高い高性能品(LPDDR5など)の販売不振が大きかった模様。

そして、2023年4-6月期においても、まだまだDRAMスポット価格は下落中。いぜんとして厳しい状況。

なお、各メーカー共に在庫解消を目的として減産を実行しているが、台湾トレンドフォースによると、それぞれの2023年4-6月期の工場稼働率はサムスンが77%、マイクロンが74%、SKハイニックスが82%ほどに低下していると推測されている。
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サムスンの赤字は長引くかも

ロシアーウクライナ戦争によるインフレで金利上昇。金利高で不況となり、メモリ不況となったとされるが、そもそもがメモリの需要が停滞しているため、サムスンの業績悪化は長引くかもしれない。

  • メモリを大量に消費するスマートフォンの販売台数が世界的に低下。ピーク時は15億台近くの販売台数だったが、2023年は10億台前後と予想されている。インフレ不況の他に、スペックの頭打ち、スマホ買い替えサイクルの低下、また世界的に行き渡った事などが要因。
  • パソコン需要も減少傾向で、比例してメモリ需要も停滞。
  • スマホもパソコンも、DRAM容量の拡大を必要としなくなっている。スマホは4GB~6GB、パソコンは8GBあれば十分にサクサク動く。ストレージは伸びしろがあるが、DRAMは停滞的。
  • メモリを必要とするデータセンターが設備投資を抑えるようになっている。2017年~2018年頃はメモリ価格が高騰してもクラウド向け設備投資の競争が激しかったが、成長鈍化により設備投資の意欲も低下。つまりデータセンター向け半導体需要の一服。期待はAI。

韓国経済は、国内だけではなく外国からの借金問題を抱えるため、外貨獲得の中核である半導体でドルを稼がないと経済破綻してしまう可能性がある。感情的な彼らの気質を知る者から言えば嫌な予感しかしない。

韓国の経済破綻が心配な人は、ブックマークにDRAM eXchangeを追加して、定期的にDRAM価格を確認してほしい。

サムスン電子全体と半導体部門の業績推移

サムスン電子全体の業績推移
サムスン半導体事業の業績推移

NANDフラッシュ市場の悪化

台湾の調査会社トレンドフォースによると、2022年下半期からのメモリ不況は、歴史的に需要が安定的だったNANDフラッシュメモリの供給過剰も深刻になっているとされる。

「コンピューティング」に使用されるDRAMとは違い、「ストレージ」として使用されるNANDメモリは、記憶保存データが増えるほど必要とされる存在。

そのため、今までは需要に安定性があり、その理由によりサプライヤー側が減産に消極的だった。しかし、それが原因で過剰在庫が解消しにくい状況になっているのではないかとされる。日本のキオクシアも厳しい状況。

メモリビジネスは難しい

サムスン、SKハイニックス、マイクロン、キオクシアなどの半導体メモリ企業は、設計から製造・販売まで一貫して行う「垂直統合型」のビジネス。

どのメーカーも生産性を高めなければ、競争に取り残され、利益が出なくなってしまうため、多額の投資を続けながら自動化された工場でメモリを作り続けなければならない。

しかし、不況によりメモリ需要が減少すると生産過剰となり、在庫を抱えるようになってしまう。

そこで生産をストップさせれば良いが、半導体工場は完全に止めてしまうと再開までに多額の費用と時間がかかる特殊な性質をもつため、安易に止める事はできない。減産するにしても生産性が落ち、利益が出にくくなる。

そのため、メモリメーカーは、市況の変化とライバル他社の投資状況を上手く把握しながら過剰生産にならないように積極的な設備投資を続け、競争に勝たないといけない。これがメモリビジネスの難しさであり、一方で魅力でもある。

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