SUMCOの連結決算:通年の売上推移
年度 | 売上高・収益 | 営業利益 [営業利益率(%)] | 純利益・最終損益 [純利益率(%)] |
---|---|---|---|
2003年 | 1664億円 | 73億円 [4.4%] | -364億円 [-21.9%] |
2004年 | 1931億円 | 314億円 [16.3%] | 108億円 [5.6%] |
2005年 | 2205億円 | 443億円 [20.1%] | 204億円 [9.3%] |
2006年 | 3193億円 | 843億円 [26.4%] | 720億円 [22.5%] |
2007年 | 4749億円 | 1403億円 [29.6%] | 748億円 [15.8%] |
2008年 | 3919億円 | 450億円 [11.5%] | 188億円 [4.8%] |
2009年 | 2182億円 | -865億円 [-39.6%] | -1004億円 [-46.0%] |
2010年 | 2769億円 | -84億円 [-3.0%] | -655億円 [-23.7%] |
2011年 | 2471億円 | 9.6億円 [0.4%] | -843億円 [-34.1%] |
2012年 | 2066億円 | 132億円 [6.4%] | 34億円 [1.6%] |
2013年 | 1851億円 | 178億円 [9.6%] | 7.1億円 [0.4%] |
2014年 | 2253億円 | 256億円 [11.4%] | 162億円 [7.2%] |
2015年 | 2368億円 | 294億円 [12.4%] | 197億円 [8.3%] |
2016年 | 2113億円 | 140億円 [6.6%] | 65億円 [3.1%] |
2017年 | 2606億円 | 420億円 [16.1%] | 270億円 [10.4%] |
2018年 | 3250億円 | 851億円 [26.2%] | 585億円 [18.0%] |
2019年 | 2994億円 | 506億円 [16.9%] | 331億円 [11.1%] |
2020年 | 2913億円 | 3789億円 [13.0%] | 255億円 [8.8%] |
2021年 | 3356億円 | 515億円 [15.4%] | 411億円 [12.2%] |
2022年 | 4410億円 | 1096億円 [24.9%] | 702億円 [15.9%] |
2023年 | 4259億円 | 730億円 [17.2%] | 638億円 [15.0%] |
出所:SUMCO。本決算期は12月末。
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平均利益率
SUMCOの2003年から2023年までの営業利益率の平均が11.6%。
会社の動向
- SUMCO(読み:サムコ)の設立は1999年に住友金属工業、三菱マテリアル、三菱マテリアルシリコンの共同出資で誕生した「シリコンユナイテッドマニュファクチュアリング」がルーツ。2005年にSUMCOに商号変更。
- 事業は半導体製造に不可欠な「シリコンウエハー」の製造と販売。
- 2020年のSUMCOのシリコンウエハー市場シェアは25%で業界2位。1位が日本の信越化学工業で世界シェア33%。
- シリコンウエハー業界は再編により、SUMCO、信越化学工業、台湾グローバルウエハーズ、独シルトロニック、韓国SKシルトロンの5社で占有状態。
- SUMCOは、信越化学工業と共に高品質が求められる最先端品の量産/供給の実績がある。
- 顧客に対しては長期契約で納品。半導体不況期でも販売価格は大きく値崩れを起こす事はない。
- 株価絶好調の信越化学工業とよく比較される事から、業績が悪いイメージを付けられているところがあるが、半導体素材業界では安定的な優良企業。
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SUMCOの財政・経営状況
年度 | 総資産 [現金・手元資金] |
負債総額 [有利子負債] |
自己資本・純資産 [自己資本比率(%)] |
---|---|---|---|
2005年 | 3519億円 [301億円] |
1900億円 [1272億円] |
1616億円 [45.9%] |
2010年 | 5617億円 [538億円] |
3456億円 [2548億円] |
2161億円 [35.0%] |
2015年 | 4898億円 [458億円] |
2453億円 [1803億円] |
2445億円 [43.2%] |
2020年 | 5934億円 [818億円] |
2384億円 [1498億円] |
3550億円 [53.1%] |
2021年 | 7648億円 [2246億円] |
2419億円 [1410億円] |
5228億円 [62.3%] |
2022年 | 8925億円 [2593億円] |
3010億円 [1413億円] |
5914億円 [59.8%] |
2023年 | 1兆730億円 [1563億円] |
4375億円 [2244億円] |
6355億円 [59.2%] |
出所:SUMCO
- 近年の半導体好況によりキャッシュが安定。
- 2022年度は現金/現金同等物が有利子負債を上回る実質無借金経営。サムコの財務問題はナシ。
- 日本政府から補助金が出るようになっているため、今後さらに財務状況は良好に向かう見込み。
- 2024年3月時点のサムコの株式時価総額は約8510億円。競合との比較として、ウエハー業界トップの信越化学工業は12兆8900億円、独シルトロニックは24.62億ユーロ。なお、信越はウエハー事業だけではなく、ポリ塩化ビニル事業が好調である事も株高の理由。
連結社員数と研究開発投資について
年度 | 従業員数(連結) | 平均年収 | 設備投資費 | 研究開発費 |
---|---|---|---|---|
2005年 | 5554人 | 593万円 | 490億円 | 45億円 |
2010年 | 4629人 | 539万円 | 103億円 | 67億円 |
2015年 | 7480人 | 609万円 | 157億円 | 58億円 |
2020年 | 8199人 | 648万円 | 533億円 | 48億円 |
2023年 | 9847人 | 679万円 | 3154億円 | 81億円 |
出所:SUMCO
- 半導体産業が強い国々に拠点をもち、従業員は各国それぞれ増加傾向。
- 2023年、半導体需要に備え設備投資費が急増。300mmインチウエハーの増強投資。コロナ後の半導体需要の高まりによって決断。
- 2023年、佐賀県に新工場の建設決定。。この件について経済産業省から最大750億円の補助金も決定。
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2022年度のウェハーメーカー5社の業績比較
順位 | メーカー | 売上高(円換算) | 営業利益(円換算) [営業利益率(%)] |
---|---|---|---|
1位 | 信越化学工業 (日本) |
8756億円 | 3014億円 [34.4%] |
2位 | SUMCO (日本) |
4410億円 | 1096億円 [24.9%] |
3位 | グローバルウェハーズ (台湾) |
703億台湾ドル (2812億円) |
250億台湾ドル (1000億円) [35.6%] |
4位 | シルトロニック (ドイツ) |
18.05億ユーロ (2707億円) |
4.95億ユーロ (742億円) [27.5%] |
5位 | SKシルトロン (韓国) |
2兆3546億ウォン (2354億円) |
5649億ウォン (564億円) [24.0%] |
出所:信越化学工業、SUMCO、グローバルウェハーズ、シルトロニック、SKシルトロン。()内の日本円表記は、1ユーロ=150円、1台湾ドル=4円、1ウォン=0.1円で換算。信越化学の2019年までの成績は半導体シリコン事業、2020年以降は電子材料事業のデータ。(シリコンウエハー以外の売上も含まれる事に注意)
- 2022年度の5社の売上高の合計は2兆1039億円。市場は大手5社で占有状態であるため、大まかにシリコンウエハーの市場規模は2.1兆円だと考えていい。
- 2022年度上半期はコロナ後の半導体需要増加が続いていたが、後半はウクライナ-ロシア戦争による物価高→金利高で半導体生産が失速(特にメモリ)。しかし、ウエハーメーカーは全て業績は良かった。
- 売上高で首位の信越化学工業は、最大顧客であるTSMCへの販売が安定。
- サムコは、営業利益率30%にのせたいところだが、最先端用製品の生産性が上がらずやや苦戦。微調整が必要となる生産現場でAIを導入し、歩留りを上げる意向。
- なお、2021年に業界3位グローバルウェハー(台湾)が業界4位シルトロニック(ドイツ)の買収を目指していたが「経済安全保障」を理由にドイツ政府から承認されず破断。
シリコンウエハー業界シェア
年度 | 信越化学工業 (日本) |
SUMCO (日本) |
グローバルウェハーズ (台湾) |
シルトロニック (ドイツ) |
SKシルトロン (韓国) |
---|---|---|---|---|---|
2018年 | 30% | 27% | 17% | 15% | 11% |
2020年 | 33% | 25% | 17% | 13% | 12% |
2022年 | 41% | 22% | 13% | 13% | 11% |
出所:2018年-2020年はシルトロニック社(ドイツ)の決算報告より売上高基準の成績。2022年は円換算の売上高基準でポジテン算出。
- 信越化学工業とSUMCOの日本勢2社で、過半数のシェアをもつ。この2社が利幅が高い微細化最先端ウエハーの中核サプライヤー。最大顧客は台湾TSMC。
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SUMCOと信越化学工業の違い
- SUMCOは信越化学工業よりも最先端半導体向けウエハー量産における歩留り(良品率)が悪いとされる。最先端ウエハーでは信越化学は絶対的で、顧客との長期契約のもとで利益率30%以上のビジネスが成立。サムコは生産性で信越のレベルにまで至っていないというだけ。
- SUMCOは信越化学よりもメモリ向けウエハーの販売比率が高いとされる。メモリ向けは最先端ロジック向けよりも競合が多く、やや利益率が低い。
- 「信越は株価が上がるのに、なぜSUMCOの株価は上がらない?」という疑問を持つ人が多いが、信越化学工業はシリコンウエハーだけではなくポリ塩化ビニル事業が非常に好調であり、シリコンウエハー専業のSUMCOとはビジネスラインナップが違う。
ウエハーの製造方法と核心エリア
#1珪石(けいせき)に含まれるケイ素を取り出し、金属ケイ素が作られる。
#2金属ケイ素の高精製により、99.999999999%(イレブンナイン)の高純度ケイ素の塊「多結晶シリコン」が作られる。多結晶シリコンは、日本の「トクヤマ」が世界シェア20%。
#3多結晶シリコンをもとに、結晶成長技術を駆使して一定の原子配列をもった直径約30センチの筒状シリコン単結晶を製造。←簡潔に説明しているが、この工程が非常に複雑で信越化学やSUMCOがブラックボックス化する核心エリア。
#4その単結晶シリコンの塊(インゴット)を薄くスライスして作られるのがシリコンウエハー。
ウエハー最先端品を例えて言うなら、東京ドーム内のゴミをゴマ1粒以内に抑えないといけないようなレベル。それだけ不純物がない品質が求められる。なお、液状やゴム状の「シリコーン(Silicone)」と、半導体に使用される「シリコン(Silicon:金属ケイ素)」は別物。
ウェーハの生産拠点(2023年時点)
- 300mmウェーハの製造拠点……佐賀県伊万里市、佐賀県杵島郡江北町、山形県米沢市、長崎県大村市、台湾。
- 200mm以下ウェーハの製造拠点……佐賀県伊万里市、佐賀県杵島郡江北町、山形県米沢市、北海道千歳市、長崎県大村市、宮崎県宮崎市、米国、インドネシア、台湾。
なお、競合の信越化学工業も、台湾やアメリカなどにウエハー製造拠点をもつ。
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