Amazon Web Services(AWS)の売上推移(通年)
年度 | 売上高・収益 | 営業利益 [営業利益率(%)] | Amazon全体利益からのAWS利益の割合(%) |
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2013年 | 31.08億ドル | 6.73億ドル [21.7%] | 90.3% |
2014年 | 46.44億ドル | 6.60億ドル [14.2%] | 372.9% (AWSなしでは全体赤字) |
2015年 | 78.80億ドル | 18.62億ドル [23.6%] | 44.5% |
2016年 | 122.18億ドル | 31.28億ドル [25.6%] | 74.7% |
2017年 | 174.58億ドル | 43.30億ドル [24.8%] | 105.5% (AWSなしでは全体赤字) |
2018年 | 256.54億ドル | 72.95億ドル [28.4%] | 58.7% |
2019年 | 350.26億ドル | 92.00億ドル [26.2%] | 63.3% |
2020年 | 453.69億ドル | 135.30億ドル [29.8%] | 59.1% |
2021年 | 622.02億ドル | 185.32億ドル [29.8%] | 74.5% |
2022年 | 800.96億ドル | 228.41億ドル [28.5%] | 186.5% (AWSなしでは全体赤字) |
2023年 | 907.57億ドル | 246.31億ドル [27.1%] | 66.8% |
平均利益率
AWSの動向
- 2006年、Amazonはクラウド事業に参入。競合のマイクロソフトは2010年に参入。アマゾンはどの会社よりも挑戦が早かった。
- 毎年、日本円で「兆単位」の設備投資を実行。現在、クラウド世界トップシェア。
- Amazonの利益の大半がクラウド事業「AWS」の利益によるもので、アマゾンはクラウド事業がなければ、利益のほとんどが消失してしまう。
- AWSがなければアマゾンは赤字転落する年もある(2014、2017年、2022年)。Amazonの高い株式時価総額は、ネット通販事業ではなくAWSで成り立っている。
- 近年は営業利益率が30%近くに到達。なお、Googleやマイクロソフト、Appleなどのアメリカ巨大企業は、独占禁止法に関連した問題となるため、一般に30%前後の利益率を目安としてビジネスをする。AWSにおいても利益率30%程度が一つの目安。
- 連結(全体)の成績
- Amazon(全体)の業績推移
- 競合の業績推移
- マイクロソフト
- Google/Alphabet
AWSはクラウド業界トップシェア
順位 | 企業 | 2020年 | 2022年 |
---|---|---|---|
1位 | アマゾン・ウェブ・サービス(AWS) | 33% | 31% |
2位 | マイクロソフト Azure | 18% | 24% |
3位 | Google Cloud | 8% | 8% |
4位 | アリババ Cloud(中国) | 5% | 5% |
5位 | IBM Cloud | 6% | 4% |
6位 | セールスフォース | 3% | |
7位 | オラクル Cloud | 2% | |
8位 | テンセント Cloud(中国) | 2% | |
9位 | その他 | 23% | 28% |
- AWSは、世界190か国以上で展開し、数百万のユーザー数で業界トップシェア。
- AWSのクラウド世界シェアは33%。マイクロソフト「Azure(アジュール)」のシェア18%の倍近くという状況。しかし、マイクロソフトも追い上げ。
- サービス内容も評判も良いので、このままマイクロソフトと共に高いシェアを守り続けると予想される。
- 今後本格的なデジタル社会に入る中、サーバーに保存されるデータのほとんどがクラウドサーバーに移っていくと言われている。その分野で絶対的となってしまったのがAmazonのAWS。市場規模が大きいサブスクビジネスを確保した事で会社の利益も安泰が続く。
従来とクラウドの違い
かつてはサーバー会社のサービスというと、使用領域やスペックが決まっていた。そのため、使用量が少なくても、契約した分の料金を支払う必要があった。また、契約スペックを超えてアクセスが集中するとトラフィックが制限されてアクセス不可になる事もあった。
一方、クラウドサーバーの良いところは、必要な分だけ利用できる柔軟性がある事。使用量が少ない時は運用コストを抑えられるし、急激にトラフィックが増えてもコストはかかるがアクセス制限を避ける事ができる。
安い料金設定ができる理由
世界中で、クラウドサーバを利用している企業の2社に1社が利用しているという報告もあるAWS。その強さは、AWSは業界でも特に運用コストが安い事。そのカラクリは以下。
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#2初期段階は低利益レベルでサービス価格を下げて利用ユーザーを増やす。
↓↓↓
#3ユーザーが増えたことでさらにデータセンター増強。サーバー大量調達により、一台当たりの調達コストをさらに減らせる。
↓↓↓
#4さらに価格を下げることで、さらに利用者が増える。他社が勝負できないレベルになっていく。
こういった好循環によってクラウド業界ダントツのシェアを獲得している。調べによるとサービス開始時から10年間で70回以上も値下げを繰り返しているという。
Amazonは2014年までAWS単体の売上高や利益率を公表しなかったが、その理由は、ユーザーを獲得するために利益が出ないビジネスをやっていた事が要因。
Amazon創業者のジェフ・ベゾスのビジネススタイルは、一気に集中投資してスケールメリットを確立し、市場を独占化して最終的に高利益化する事。韓国のサムスン電子のやり方と同じ。これはあざとい。
安さ以外で評価される理由
AWSが世界中で評価されるのは、利用料金が安いうえに機能を惜しげもなく提供していることろ。
専門的な話しになるが、オブジェクトストレージサービスから始まり、仮想サーバ、マネージド型データベース、AI/人工知能サービス、機械学習サービス、セキュリティ機能など、他社のクラウドビジネスと比較して提供サービスが競合を圧倒。
大手IT企業さえもAWSを利用して事業を行うことが珍しくない状況となっている。例えば、ソニーもAWSを利用していろいろビジネスを行っていたりする。(クラウドゲームの開発もAWSだったりする)
日本企業は勝てないのか?
結論から言えば、日本のNTTや富士通、NECなどのクラウドサービスはAWSには勝てない。Amazonの社長ジェフベゾスは、サービス開始時から日本勢よりもはるかにデータセンター向けの巨額投資を続けてきており、その結果が現在。
アマゾンのサービスは、すでに世界中から認められている存在なので、資金力や知名度、実績で劣る日本勢がここから巻き返す事は難しい。
クラウドを利用する日本企業においても、NTTや富士通などよりも、AWSやマイクロソフトのAzure(アジュール)などに流れており、さらにGoogleクラウドも猛追している状況下、日本勢の巻き返しは難しい。
なお、NECはAmazon(AWS)と、富士通はマイクロソフト(AZURE)と、それぞれパートナー関係を結び、利益をシェアする形で落ち着いている。自前主義から撤退という事。
NTTはニッチで勝負
詳しい内容は省略するが、NTTはAmazonやマイクロソフトなどがやっていないニッチな情報管理ビジネスで利益を出していたりする。
やはり、Amazonのように規模を活かしてドカっと稼ぐ巨大クラウド業者は、少数派を取り込めない部分がある。その隙間を知るNTTは、巨大プレーヤーが及ばない細かなニーズを拾って世界で顧客を獲得している。
プラス思考で考えるべし
「なぜ日本にはGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)が誕生しなかったのか?」
そのような愚痴っているネット記事をたまに見かけるが、そもそも考え方が間違っている。むしろGAFAMのような日本企業が誕生するとマズい。
なぜならアメリカは世界の覇権を握るため情報産業を絶対死守したい事情があり、例えばアメリカ企業を脅かす日本企業がいくつも誕生すると、日米が対立構造になってしまう問題が生じてしまう。
過去の事例で言えば、円安阻止政策だったプラザ合意(1985年)、日米半導体協定(1986年~1996年)、スーパー301条(1988年~)、東芝、NEC、富士通などへの不条理な制裁など、アメリカは日本に対して多くの弱体化措置を実行した歴史があり、やはり当時のアメリカは情報通信産業が日本に集中してしまうことを恐れていた。
しかし、今となっては情報通信産業はアメリカ企業で独占・寡占することになり、一方の日本はアメリカを脅かすような情報産業企業をもたなくなった。
そのため、現在のアメリカは日本企業を制裁対象として見なくなったが、その状況になって良かった事を一つあげれば、なんといっても金融政策。
例えば現在、日本の円安/株高政策ともいえる量的緩和政策をアメリカから制裁されないのも、「日本は脅威」という認識では無くなっている事が前提。一昔前ならば、大規模量的緩和など実現できなかった。
つまり「なぜ日本ではGAFAMが誕生しないのか?」ではなく、誕生しなかったから国益につながっている部分もあるという事。
日本は自動車産業を中心として多くの雇用と売上規模(物作りの規模)をもたらす産業を守り、安定的な経済環境を確立することができたので、GAFAMレベルの日本企業が無いくらい、どうって事はないというワケ。プラスで考えるべし。