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半導体製造装置シェア

サムスンと資本関係にある韓国の半導体製造装置企業まとめ

サムスンと資本関係がある韓国半導体製造装置企業

SEMES

SEMES(セメス)は、サムスン100%完全子会社で半導体装置メーカー。韓国企業の中で、製造装置の売上規模が最も大きい。

主要製品は以下の画像を確認。(黒丸で囲んだところが韓国企業)。枚葉式洗浄装置、バッチ式洗浄装置、コータデベロッパに強み。

半導体装置メーカーシェア

SEMES(セメス)は、1993年にサムスンが日本のSCREENとの合弁企業として誕生した「K-DNS社」が前身。サムスンが大日本スクリーン(現在のSCREEN)にゴリ押しで洗浄装置の技術供与を求め、スクリーンもそれに応じて合弁会社が誕生。それがきっかけで技術供与がすすんだ。

そして技術をもらったらサムスンは資本関係の解消を強引に求めてSCREENもそれに応じることになり、サムスンはDNS社の株式をすべて買い取った後に会社名をSEMESに変更して今に至っている。

簡単に言えば、日本のSCREENがサムスンに技術を与えたら「ポイッ!」って関係を切られたってこと。SEMESが洗浄装置の世界シェアを一定レベル確立している理由も、SCREENの技術が活かされているため。

現在のSEMESは親会社のサムスン電子に洗浄装置を独占的に供給し、日本のSCREENはサムスンへの納品はほとんど無くなったという。

半導体の全工程500~1000くらいあるうち、約2~4割の工程が洗浄工程だといわれており、その分野においてSEMESは汚いやり方だが自社で装置を供給できるようになったという事になる。

よく保守系の人は「サムスンはパクリで成長した企業」みたいな言ったりするが、こういう話しを知ればあながち間違いではない。

エッチング装置の開発も急ぐ

また、セメスは市場規模が大きいドライエッチング装置の開発も進めている。サムスンの半導体事業の中核は、DRAMとNANDフラッシュの2つのメモリビジネスだが、そのうちNANDフラッシュの場合は積層化のために多くのエッチング装置を必要とする。

そして、すでにエッチング装置を開発して親会社のサムスンに納品しているという話しが2019年頃から韓国メディアより出るようになったが、実際にはまだまだ実績はあがっていない模様。(韓国では願望が事実のように記事にされたりする)

なお、ドライエッチング装置のトップはラムリサーチ(アメリカ)がダントツ。その後に、東京エレクトロン(日本)、アプライドマテリアル(アメリカ)、日立ハイテク(日本)などが続く。

SEMESの業績(2021年度)
売上高2兆2143億ウォン(約2214億円)
営業利益2841億ウォン(約284億円)
営業利益率12.8%

WonicIPS(ウォニックIPS)

WonicIPS(ウォニックIPS)は、ハイテク関連の製造装置メーカー。半導体製造装置分野では、主にCVD装置の実績が高く、市場規模は2018年で7200億円の規模と大きい。(CVD装置は半導体の表面に薄い膜を堆積する装)

半導体装置メーカーシェア

そのウォニックIPSに対してサムスンは2010年から資本関係にあり、2020年時点では同社の株式3.8%を所有している。そして、資本関係と共にサムスンはウォニックの経営にも入り込んでいる。

ウォニックIPS社のWebサイトによると、理事会メンバー5人中4人がサムスン電子出身者と記されていて、サムスン側の意志が反映された経営戦略があると断定できる。

例えば、ウォニックの主力製品のCVD装置は、世界シェアは10%ほどをもっているが、ほとんどが資本関係にあるサムスン向けに納品されているという。

2019年7月に発生した日韓の外交衝突によって韓国は半導体関連の国産化を進めているが、サムスンとWonicIPSが関係を強化して、製造装置の開発を進めていく見通し。

WonicIPSの業績(2019年度)
売上高6692億ウォン(約670億円)
営業利益411億ウォン(約41億円)
営業利益率6.1%
時価総額2021年4月時点で2.74兆ウォン(約2700億円)
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日韓衝突以降の出資

2019年7月の日韓衝突。日本が韓国に対して半導体関連材料の輸出管理規制に出た事で、韓国は半導体関連の国産化を急ぐように。

日本経済新聞によると、サムスンは韓国の半導体製造装置メーカーや素材企業を育てるために1年間で9社に合計2762億ウォン(276億円)を出資したとされる。

  • ほとんど第三者割当有償増資の形でサムスンが出資。
  • 出資と共に技術支援・技術協力を行う。
  • 株式としての出資比率は10%未満。
  • サムスンからの出資を受けた企業はすべて「投資資金を研究開発費に使う」と表明。
  • 出資と共に経営権の一部にも入り込んでいる。

サムスン中心に韓国の半導体産業の生態系が形成されていくという事で、この動きは将来的に日本企業にとって悩ましいものとなる可能性あり。なお、サムスンが出資した9社は以下。

KC tech(ケーシーテック)

KC techは、CMP装置や洗浄装置に強みをもつ韓国の半導体関連企業。海外の半導体メーカーへの実績は低いが、韓国内でサムスンやSKハイニックスなどが採用しているので世界シェアもそこそこある。画像を参考。

半導体装置メーカーシェア

サムスンはそのKC techに対し2020年に207億2000万ウォン(約20億円)を出資し資本関係を成立。なお、KC Techの主力製品であるCMP装置は日本の荏原製作所が高シェアをキープ。

KC techの業績(2020年度)
売上高3198億ウォン(約320億円)
営業利益560億ウォン(約56億円)
営業利益率17.5%
時価総額2021年4月時点で6759億ウォン(約675億円)

MiCo Ltd(ミー・コー)

MiCOは、主に半導体部品の精密洗浄、特殊コーティング、セラミックヒーターなどに強みをもつ企業。サムスンは、そのMicoに対して2020年に216億7000万ウォン(約21億円)を出資。

半導体用セラミックヒーターを製造している日本企業はわりと多くあるが、有名なところでは京セラなど。

MiCoの業績(2019年度)
売上高2361億億ウォン(約236億円)
営業利益287億ウォン(約28億円)
営業利益率12.2%
時価総額2021年4月時点で4728億ウォン(約472億円)

LOT Vacuum(ロットバキューム)

ロットバキュームは、主に半導体/ディスプレイ製造装置用のドライ真空ポンプなどに強みをもつメーカー。2020年にサムスンから189億9000万ウォン(約19億円)の出資を受ける。

LOT VacuumはサムスンやSK、LGだけではなく、中国のディスプレイメーカーのBOEにも真空ポンプを供給しているとされ、実績が上がっているメーカーではある模様。

半導体向けドライ真空ポンプは、日本では荏原製作所が圧倒的シェアが高い分野だが、今後、本格的に競合となっていく可能性あり。

LOT Vacuumの業績(2020年度)
売上高1712億ウォン(約200億円)
時価総額2021年4月時点で3087億ウォン(約308億円)

New Power Plasma(ニューパワープラズマ)

ニューパワープラズマは、ウェハー洗浄装置や半導体製造装置の主要コンポーネントであるRFジェネレーターに強みをもつ企業。サムスンは127億ウォン(約12億円)を出資。

New Power Plasmaの業績(2020年度)
売上高2088億ウォン(208億円)
時価総額2021年4月時点で2800億ウォン(約280億円)

YIKコーポレーション

YIKは半導体テスト装置に強みをもつメーカー。サムスンは473億ウォン(約47億円)出資。

YIKコーポレーションの業績(2020年度)
売上高1719億ウォン(171億円)
時価総額2021年4月時点で5070億ウォン(約507億円)

S&Sテック

S&Sテックは半導体回路原版メーカー。サムスンは659億ウォン(約65億円)出資。

YIKコーポレーションの業績(2020年度)
売上高283億ウォン(28億円)
時価総額2021年4月時点で6639億ウォン(約663億円)

FST

FSTは、半導体マスク保護素材などに強みをもつ。サムスンから430億ウォン(約43億円)出資を受ける。

FSTの業績(2020年度)
売上高951億ウォン(約95億円)

DNF

日本経済新聞によると、DNFは半導体製造用の特殊素材メーカーとの事だが、かなり情報が少ない。恐らく韓国内でも存在感が低すぎると思われる。サムスンはDNFに210億ウォン(約21億円)出資。

DNFの業績(2020年度)
売上高951億ウォン(約95億円)

ソウルブレイン(SoulBrain)

ソウルブレインは半導体関連などの化学材料のメーカー。日韓衝突時の輸出規制品3つのうちの一つが「フッ化水素」だったが、ソウルブレインはそれを製造するメーカーであったため、韓国では注目される事になった。この企業にサムスンは249億ウォン(約25億円)出資。

なお、韓国はフッ化水素を国産化したところで、すでに日本企業が品質と信頼、そして世界中の供給網を確立してしまっているので、韓国が世界的なシェアを勝ち取っていくにはかなり難しい。つまり売上が上がりにくい。

特に、半導体業界はTSMCと信頼関係を構築しないとシェアを確保する事が難しいが、サムスン資本が入った企業とTSMCが信頼関係を構築できるとは思わない。フッ化水素は、サムスンやSKハイニックス向けの納品が中心となるはず。

ソウルブレインの業績(2020年度)
売上高2357億ウォン(約235億円)
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脅威となる企業は?

サムスンと資本関係にある企業をいろいろピックアップしてみたが、脅威となる企業を3つあげるとするならば以下。

  • SEMES
  • Wonik IPS
  • KC tech

最も規模も財務力も大きいのがサムスン100%子会社のSEMESだが、サムスングループなのでサムスンとライバルにあるキオクシアやマイクロン、TSMC、中国メモリメーカーなどの半導体製造企業との信頼関係の構築は難しい。

つまり、SEMESの半導体装置の販売先は親会社のサムスンしかなく、ビジネスには限界があるという事。

Wonik IPS社とKC-tech社の2社は、今後は本格的に日本企業の脅威となる可能性はある。しかし、最先端向けの製品(付加価値が高い製品)について言えば日本企業のライバルにるのはまだまだ先の話しに違いない。

そして半導体製造メーカーは、信頼が確立しているメーカーの装置を慣性的に使用するものなので、他社がマネできないコア技術でもない限り、韓国勢が世界シェアを一気に獲得するような事はありえない。

韓国の半導体製造装置や素材ビジネスは、今のところすぐには日本企業の脅威とはならないが、あと10年以上経過すると業界シェアが少し変わってしまう事はありえる。どうなることやら。

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