シャープの「液晶/ディスプレイ事業」の売上推移(通期)
年度 | 売上高 | 営業利益 [営業利益率(%)] |
---|---|---|
2009年 | 8872億円 | 111億円 [1.2%] |
2010年 | 1兆269億円 | 170億円 [1.7%] |
2011年 | 7209億円 | -422億円 [-5.9%] |
2012年 | 8467億円 | -1389億円 [-16.4%] |
2013年 | 9910億円 | 415億円 [4.2%] |
2014年 | 9071億円 | 301億円 [3.3%] |
2015年 | 7715億円 | -1291億円 [-16.7%] |
2016年 | 8420億円 | 35億円 [0.4%] |
2017年 | 1兆865億円 | 370億円 [3.4%] |
2018年 | 9596億円 | 270億円 [2.8%] |
2019年 | 1兆1572億円 | 149億円 [1.3%] |
2020年 | 8127億円 | 18億円 [0.2%] |
2021年 | 8596億円 | 203億円 [2.4%] |
2022年 | 7599億円 | -664億円 [-8.7%] |
2023年 | 6149億円 | -832億円 [-13.5%] |
出所:シャープ。2019年度は複合機事業を含む「8Kエコシステム部門」の数値。
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平均利益率
2009年から2022年までのシャープ液晶パネル事業の営業利益率の平均が-1.9%。
比較として、韓国LGディスプレイの2000年から2022年までの営業利益率の平均が4.7%。サムスンディスプレイの2003年から2022年までの営業利益率の平均が9.7%。
比較として、韓国LGディスプレイの2000年から2022年までの営業利益率の平均が4.7%。サムスンディスプレイの2003年から2022年までの営業利益率の平均が9.7%。
シャープ/ディスプレイ事業の動向
- シャープの業績悪化は、液晶ディスプレイパネル部門の悪化と同義。社運をかけて巨額設備投資にふみきった液晶事業だが、2008年リーマンショック以降、一度も利益率5%に達する事がなかった。
- 台湾ホンハイグループ傘下となった2016年以降、液晶パネル部門の業績は低空飛行で安定。
- 昔と比べてディスプレイ関連の設備投資費用が減少しており、2021年度の設備投資額は165億円。多額のコストを必要としなくなっている。また、プレーヤーの減少で市場も安定化。
- 2022年度は、物価高による市況悪化によって赤字転落。
- 2024年5月、大阪の堺工場「堺ディスプレイプロダクト(SDP)」における大型テレビ用液晶ディスプレイパネルの生産停止を決定。三重県亀山工場の中小型液晶パネル工場も生産縮小を発表。国策中国メーカーとの価格競争についていけなかった事が要因。
- 全体成績
- シャープ連結(全体)の業績推移
- 競合の業績推移
- サムスンディスプレイ
- LGディスプレイ
- ジャパンディスプレイ
- 中国BOE
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液晶ディスプレイ市場シェア
メーカー | 中小型液晶 パネルシェア |
大型液晶 パネルシェア |
---|---|---|
シャープ(日本) | 9.2% | 4.7% |
イノラックス(台湾) | 7.0% | 12.2% |
LGディスプレイ(韓国) | 12.1% | 24.0% |
BOE(中国) | 15.9% | 20.7% |
AUO(台湾) | 6.1% | 13.0% |
サムスン(韓国) | – | 9.3% |
TCL CSOT(中国) | 4.8% | 6.2% |
出所:Omdia。サムスンは早くから中小型液晶パネルから撤退。
- シャープの親会社のホンハイは台湾のディスプレイメーカー「台湾INNOLUX(イノラックス)」と資本関係をもつ。ホンハイがシャープを買収した事で実質的に経営方針が一部で共通化。
- ホンハイが資本参加するシャープとイノラックス(台湾)のシェアを合計すると、中小型パネルが16.2%、大型パネルが16.9%。(2019年度)
シャープの利益率を競合と比較
年度 | シャープ (ディスプレイ部門) |
LGディスプレイ | サムスンディスプレイ | ジャパンディスプレイ |
---|---|---|---|---|
2012年 | -16.4% | 3.1% | 9.7% | 6.1% |
2013年 | 4.2% | 4.3% | 10.0% | 3.6% |
2014年 | 3.3% | 5.1% | 2.5% | 0.7% |
2015年 | -16.4% | 5.3% | 8.3% | 1.1% |
2016年 | 0.4% | 4.9% | 8.2% | 2.1% |
2017年 | 3.4% | 8.9% | 15.6% | -8.6% |
2018年 | 2.8% | -0.4% | 8.0% | -4.3% |
2019年 | 1.3% | -5.8% | 5.0% | -7.6% |
2020年 | 0.2% | -0.1% | 7.3% | -7.7% |
2021年 | 2.4% | 7.5% | 14.0% | -2.9% |
2022年 | -8.7% | -8.0% | 17.3% | -16.4% |
出所:各メーカーの決算書より。
- シャープが手掛ける「液晶パネル」は、中国メーカーの量産攻勢により、どのメーカーも利益が出にくくなっている。サムスンは液晶から撤退し、LGディスプレイも規模を縮小。
- サムスンの利益率が高い理由は、スマホ/モバイル向けの有機ELパネル(OLED)の生産で占有的な地位をもつため。しかし、中国勢も有機ELパネルに参入し、サムスンを猛追。
- ジャパンディスプレイは、モバイル向けの中小型液晶パネルの生産を縮小し、付加価値の高い自動車向けにシフト。
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なぜ液晶で失敗したのか
- 一般には過剰投資が原因とされる。(しかし、これを結論付けるのは残酷)
- 日本企業だけでも競争プレイヤーが多かった。(シャープ、ソニー、パナソニック、東芝、日立、NEC、三菱など多数)
- 液晶ディスプレイが普及する頃、ちょうどリーマンショック(2008年)が重なり、世界的な市況悪化と同時に、円高で利益が出にくかった。
- 韓国のサムスンやLGディスプレイが人件費が安くて政府補助がある中国で巨額投資、大量生産。一方のシャープは技術流出を恐れ、日本での製造に注力。製造・販売コストで優位性をもてなかった。
- 2010年代中盤から中国BOEやCSOTなどの中国政府の多額の補助金を受けたメーカーが急成長。シャープは、さらに利益が出にくくなる。
- アップルは2017年発売のiPhoneXから有機ELを採用。スマホ向け液晶パネルの需要の減少。
- シャープは液晶パネルのサプライヤーである事と同時に、テレビ事業も手掛けるため、液晶パネルの外販先がライバル企業という形だった。つまり、顧客との関係づくりが難しかった。もし、シャープがサプライヤー専業だったら、ソニーやパナソニック、東芝などがライバルではなく協力関係となり、競合の設備投資を抑える事ができたかもしれない。
利益率アップのための戦略
- 需要が悪化すれば、すぐに生産調整できる形をとっている。
- 主力の三重県亀山工場では生産量を落とし、カメラ部品を製造。
- 2023年、2015年に撤退したアメリカ市場に再び参入。巨大市場に向けて規模の勝負に出る。
- サプライヤーとして外販も強化。ソニーやパナソニックにも納入。2020年~2022年にかけて液晶パネル生産から撤退したサムスンにも液晶パネルを供給。
- テレビ分野で世界トップシェアのサムスンが自前生産からシャープに依存する形となった事は、シャープにとって幸運だった。辛抱強く耐え続け「運」を待つ。それがシャープの経営戦略の一つという事。
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