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ジャパンディスプレイ(JDI)の売上・営業利益率・純利益の推移

JDIの連結決算:通年の売上推移

ジャパンディスプレイ(JDI)の業績推移:売上高・営業利益・純利益・利益率の推移
年度 売上高・収益 営業利益
[営業利益率(%)]
純利益・最終損益
[純利益率(%)]
2012年 1651億円 101億円
[6.1%]
35億円
[2.1%]
2013年 6145億円 221億円
[3.6%]
287億円
[4.7%]
2014年 7693億円 56億円
[0.7%]
-95億円
[-1.2%]
2015年 9890億円 109億円
[1.1%]
-437億円
[-4.4%]
2016年 8844億円 185億円
[2.1%]
-355億円
[-3.6%]
2017年 7189億円 -617億円
[-8.6%]
-2396億円
[-33.3%]
2018年 6366億円 -272億円
[-4.3%]
-1065億円
[-16.7%]
2019年 5040億円 -385億円
[-7.6%]
-1014億円
[-20.1%]
2020年 3416億円 -262億円
[-7.7%]
-426億円
[-12.5%]
2021年 2959億円 -85億円
[-2.9%]
-80億円
[-2.7%]
2022年 2707億円 -444億円
[-16.4%]
-258億円
[-9.5%]
  • 2012年から2022年までのジャパンディスプレイの営業利益率の平均が-3.1%
  • シャープのディスプレイ部門の2009年から2022年までの営業利益率の平均が-1.9%
  • 韓国サムスンディスプレイの2003年から2022年までの営業利益率の平均は9.7%。
  • LGディスプレイの2000年から2022年までの営業利益率の平均が4.7%。
  • ジャパンディスプレイ(JDI)は、ソニー、東芝、日立の中小型液晶ディスプレイ事業を統合して2012年に発足。
  • 営業利益と純利益、ともに最も業績が良かった2013年は、スマホ普及時で有機EL(OLED)が普及する前。つまり、液晶パネルが主役だった時期。そして、中国メーカーとの競争も低かった。
  • 売上高のピークは2015年の9890億円。その後、中国の液晶ディスプレーメーカーとの競争が本格的に激化。
  • 2010年代中盤から、中国のスマホメーカーが急激にシェアを伸ばした事で、ソニーや韓国LGのスマホ部門の業績が悪化。サムスンも世界シェアが低下。液晶サプライヤーであるジャパンディスプレイのビジネスも変化していく。
  • Appleは2017年発売のiPhoneXから、それまでの液晶から有機EL(OLED)を採用。液晶メーカーのJDIにとってアップルは超大口顧客だったため、大幅な事業縮小が求められていく。
  • iPhoneショックの2017年の最終損失は2396億円の大赤字。(過去最大の損失)
  • 2014年から2022年までの合計最終赤字額は6126億円。その経営難を耐え抜き、事業を継続。
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JDIの財政・経営状況

ジャパンディスプレイの財務状況の推移:総資産・純資産・自己資本比率の推移
年度 総資産
[現金・手元資金]
負債総額
[有利子負債]
自己資本・純資産
[自己資本比率(%)]
2012年 1150億円
[235億円]
1185億円
[637億円]
-35億円
[-3.0%]
2013年 7554億円
[1413億円]
3555億円
[304億円]
3999億円
[52.9%]
2014年 8296億円
[946億円]
4294億円
[835億円]
4002億円
[48.0%]
2015年 8017億円
[550億円]
4492億円
[86億円]
3525億円
[43.7%]
2016年 9000億円
[822億円]
5895億円
[1352億円]
3105億円
[34.3%]
2017年 6050億円
[809億円]
5320億円
[1881億円]
730億円
[11.8%]
2018年 5385億円
[690億円]
5376億円
[1858億円]
9億円
[0.2%]
2019年 3897億円
[664億円]
3363億円
[980億円]
534億円
[13.1%]
2020年 2249億円
[553億円]
1831億円
[951億円]
418億円
[17.6%]
2021年 2582億円
[509億円]
1855億円
[736億円]
727億円
[28.2%]
2022年 2227億円
[258億円]
984億円
[なし]
1244億円
[55.8%]
  • 2017年に大口顧客のAppleがiPhoneに液晶から有機ELを採用。そこから資産規模の縮小が続く。
  • リストラを断行。工場閉鎖が続き、総資産ピーク時の2016年と比較すると現在ではバランスシートも大きく縮小。
  • 会社の資産規模と事業規模は小さくなったが、それだけ大きく赤字を出す事もなくなった。
  • JDIは国の支援を受けていたが、大きく損失が出なくなった現在では、政府や官民ファンドなどからの多額の支援を必要としなくなった。
  • 2023年2月、JDIの株式56.7%を保有する「いちごトラスト」の支援により、約150億円の債権放棄と、債務の株式化(DES:デットエクイティスワップ)という手法によって約867億円の借入金を圧縮。これにより、JDIは実質無借金状態となる。同時に、いちごトラストに総額1736億円の新株予約権を割り当てる資本増強を発表。いちごトラストの出資比率は56.7%から91.6%へ。

JDIの連結社員数と開発投資について

ジャパンディスプレイの全従業員数、平均年収、設備投資費、研究開発費の推移
年度 従業員数(連結) 平均年収 設備投資費 研究開発費
2015年 15722人 734万円 1798億円 233億円
2020年 8443人 725万円 63億円 42億円

工場閉鎖・リストラの経緯

2016年埼玉県深谷市の液晶パネル工場(東芝由来の工場)を閉鎖。
2018年石川県能美市の液晶パネル工場(東芝由来の工場)をJOLEDに200億円で売却。
2019年従業員1200人の削減・解雇を発表。
2020年石川県白山市の工場と生産設備をアップルとシャープへ713億円で売却。
2022年愛知県東浦町の東浦工場(ソニー由来の工場)を2023年に閉鎖すると発表。

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製品別の売上額と全体比

ジャパンディスプレイの製品別の売上推移
製品 2013年/売上高
[全体比(%)]
2018年/売上高
[全体比(%)]
2021年/売上高
[全体比(%)]
モバイル向け 4766億円
[77.6%]
4668億円
[73.3%]
1176億円
[39.8%]
非モバイル向け 1379億円
[22.4%]
574億円
[9.0%]
713億円
[24.1%]
車載向け 1123億円
[17.7%]
1069億円
[36.1%]
  • 非モバイル向けや車載向けの製品売上は大きな変化がないが、スマホなどのモバイル向け製品の売上が大幅減少。アップル依存が低下したという事。
  • モバイル向け液晶パネル工場の閉鎖を次々と決行。今後は大赤字を出しにくい体質へ。

車載向け強化

ジャパンディスプレイによると、変動の激しいモバイル向けを縮小し、付加価値の高い自動車向けディスプレイに力を入れていくと表明。

日本の強みは自動車産業。トヨタ、ホンダ、日産、スズキ、スバル、三菱、マツダなど、日本にはたくさんの自動車メーカーが存在し、日本メーカーのすべてのグローバル生産台数を合計すると年間2500万台(2021年度)ほど。トヨタグループだけでも1000万台ほど生産。

つまり、日本は車載向けディスプレイの需要がかなり多いという事で、JDIはその自動車分野に注力し、安定的な利益を確保していく見込み。

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中小型液晶の市場シェア

ジャパンディスプレイの液晶ディスプレー生産は、中小型液晶パネルに特化。その分野の市場シェアを確認。

中小型液晶パネルの市場シェア推移(2013年~2019年)
メーカー 2013年 2018年 2019年
BOE(中国) 10.3% 11.9% 15.9%
ジャパンディスプレイ 6.0% 17.6% 15.3%
天馬微電子(中国) 10.1% 13.4% 14.6%
LGディスプレイ(韓国) 7.4% 11.5% 12.1%
シャープ 6.1% 9.3% 9.2%
INNOLUX(台湾) 12.5% 6.5% 7.0%
AUO(台湾) 4.6% 5.9% 6.1%
出所:テクノ・システム・リサーチ、IHSマークイット、Omdia。金額ベースの世界シェア。
  • ジャパンディスプレイの世界シェアは、顧客となるアップルの廉価版スマホ「iPhone SE」やタブレットの「iPad」の販売台数に大きく影響される。
  • 車載向けディスプレイ分野は安定的なビジネスができている。
  • 2016年にノートパソコン向けのモニタにも参入。パソコンの市場規模は年間3億台前後で安定しており、変動の少ない市場で安定的な収益を定着させたい意向。
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液晶パネルの市場規模の縮小

ジャパンディスプレイの業績悪化が続いている原因として、液晶パネル市場が減少傾向という問題がある。

液晶ディスプレー全体(大型~中小型)の市場規模の推移(2015年以降)
2015年 2017年 2019年 2021年
1030億ドル 904億ドル 819億ドル 944億ドル
出所:IHSテクノロジー、Omdia。
  • まず、2021年に液晶ディスプレイの市場規模が反転しているが、これはコロナ巣篭り需要による一時的な現象。2022年からは需要が急減している。
  • 全体的に液晶ディスプレイの市場規模が縮小している中、特にJDIが手掛けるモバイル向け液晶ディスプレイは、スマホに有機ELが採用されるようになった事で減少スピードが強い。
  • 大きなきっかけは2017年発売のiPhoneXが有機EL(OLED)を採用した事。
  • また、2021年10月に発売された新型ニンテンドースイッチも有機ELディスプレーを採用。液晶が中核のジャパンティスプレーがモバイルに悲観するのは仕方がない。

中国勢の安売り攻勢

中国が市場に参入してくる業界は、彼らの安売り攻勢によって利益が出なくなってしまうのはよくある話し。液晶パネル業界においても同様の現象が発生。

例えば、中国BOEは中国政府から多額の支援を受けており、そのBOEにジャパンディスプレイが価格競争で勝てなくなっている事実がある。中国政府によるBOE支援は以下。

  • 10年間で約2000億円の補助金。
  • 生産工場やその土地を中国地方政府が負担。
  • 製造における電気代や水道代も無料。
  • BOE初の液晶ディスプレー工場の投資額460億元(約8000億円)のうち、93.5%を中国政府が負担。
  • 中国のディスプレーメーカーは、日本や韓国企業と比較して70%ほどのコストで製造できるとされる。

なぜ中国はディスプレーに力を入れるのか

  • 液晶や有機EL(OLED)を合計したディスプレーの世界市場規模は10兆円レベルと規模が大きい。
  • 完成まで多くの製造会社と雇用をもたらすハイテク製品である。中国はハイテク産業を育てたい。
  • ディスプレー分野で市場を囲ってしまえば、ディスプレーパネルが必要となるテレビやスマホなどの製造工場を中国に集める事ができる。ハイテク企業の集約。
  • 米中対立において、アメリカは半導体に関しては中国制裁に動いているが、ディスプレーに対しては関心をもっていない。

国別のディスプレイシェア

中国、韓国、日本の国別世界ディスプレイ(液晶+有機EL)パネルシェア推移(2017年以降)
2017年 2020年 2021年
中国 21.0% 36.2% 41.5%
韓国 44.4% 36.9% 33.2%
日本 9.3% 7.2% 6.2%
出所:オムディア。日本のシェアは、ジャパンディスプレイとシャープ(ディスプレイ部門)の売上高合計から市場規模で割った数値。(ポジテン算出)
  • 2021年度から中国は韓国をシェアで追い越す。
  • 韓国のサムスンは大型液晶から撤退し、LGも液晶部門を縮小の意向。おそらく今後は、中国がディスプレー市場トップを維持し続けると思われる。
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なぜJDIを守る必要があるのか

一時期は、中国に身売りの話しが出ていたジャパンディスプレイだが、軽々しく売却が許される企業ではない。そのあたりをまとめ。

  • 日本のディスプレイパネル量産メーカーは、シャープとジャパンディスプレイのみ。
  • 2016年にシャープが台湾ホンハイ傘下となったため、ジャパンディスプレイは日本資本で最後の液晶パネル量産メーカーとなった。
  • つまり、ジャパンディスプレイを諦めてしまうと、液晶パネルは全て外国資本メーカーに依存する事になる。
  • ディスプレイ産業は市場規模が大きく、比例して素材・部品メーカーも多いが、その生態系が崩れてしまう恐れあり。
  • 経済安全保障としても問題。仮に自動車分野において、車載ディスプレイの供給を止められてしまうと日本の自動車産業は止まってしまう。
  • 中国や韓国に対して経済で依存する分野が増えると、外交力の弱体化にもつながる。あらゆる理由により、軽々しく「中国メーカーに売却」といった判断はできない。
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