SHARPの連結決算:通年の売上推移
年度 | 売上高・収益 | 営業利益 [営業利益率(%)] | 純利益・最終損益 [純利益率(%)] |
---|---|---|---|
1998年 | 1兆7455億円 | 381億円 [2.2%] | 46億円 [0.3%] |
1999年 | 1兆8547億円 | 744億円 [4.0%] | 281億円 [1.5%] |
2000年 | 2兆128億円 | 1059億円 [5.3%] | 385億円 [1.9%] |
2001年 | 1兆8037億円 | 735億円 [4.1%] | 113億円 [0.6%] |
2002年 | 2兆32億円 | 994億円 [5.0%] | 325億円 [1.6%] |
2003年 | 2兆2572億円 | 1216億円 [5.4%] | 607億円 [2.7%] |
2004年 | 2兆5398億円 | 1510億円 [5.9%] | 768億円 [3.0%] |
2005年 | 2兆7971億円 | 1637億円 [5.9%] | 886億円 [3.2%] |
2006年 | 3兆1277億円 | 1865億円 [6.0%] | 1017億円 [3.3%] |
2007年 | 3兆4177億円 | 1836億円 [5.4%] | 1019億円 [3.0%] |
2008年 | 2兆8472億円 | -554億円 [-1.9%] | -1258億円 [-4.4%] |
2009年 | 2兆7559億円 | 519億円 [1.9%] | 43億円 [0.2%] |
2010年 | 3兆219億円 | 788億円 [2.6%] | 194億円 [0.6%] |
2011年 | 2兆4558億円 | -375億円 [-1.5%] | -3760億円 [-15.3%] |
2012年 | 2兆4785億円 | -1462億円 [-5.9%] | -5453億円 [-22.0%] |
2013年 | 2兆9271億円 | 1085億円 [3.7%] | 115億円 [0.4%] |
2014年 | 2兆7862億円 | -480億円 [-1.7%] | -2223億円 [-8.0%] |
2015年 | 2兆4615億円 | -1619億円 [-6.6%] | -2559億円 [-10.4%] |
2016年 | 2兆506億円 | 625億円 [3.0%] | -239億円 [-1.2%] |
2017年 | 2兆3273億円 | 901億円 [3.9%] | 702億円 [3.0%] |
2018年 | 2兆3948億円 | 774億円 [3.2%] | 640億円 [2.7%] |
2019年 | 2兆2623億円 | 515億円 [2.3%] | 137億円 [0.6%] |
2020年 | 2兆4259億円 | 831億円 [3.4%] | 532億円 [2.2%] |
2021年 | 2兆4955億円 | 847億円 [3.4%] | 740億円 [3.0%] |
2022年 | 2兆5481億円 | -257億円 [-1.0%] | -2608億円 [-10.2%] |
出所:シャープ
- 1998年から2021年までのシャープの営業利益率の平均は2.5%。比較として、パナソニックの2001年から2021年までの営業利益率の平均が3.2%。
- 2001年からリーマンショック前の2007年までのシャープの営業利益率の平均は5.4%で、パナソニック(2.9%)やソニー(2.1%)よりも高かった。この勢いが液晶への巨額投資に向かった要因かもしれない。
- リーマンショックの2008年以降の円高により、三重県亀山工場(2004年稼働)や、大阪府堺工場(2009年稼働)の収益性がしだいに悪化。さらにライバルの韓国勢の大規模投資に続き、中国企業の低価格攻勢により、巨額赤字を連発するようになり、資金繰りに奔走。
- 最終的に2016年に台湾ホンハイ精密工業(フォックスコン)へ身売りとなる。
- 利益率が高い事業を保有していないため、投資家からの期待値が低い。株価低迷の理由。
シャープの親会社「鴻海精密工業」の業績や財務状況
●鴻海精密工業(フォックスコン)の売上・営業利益率・財務の推移
スポンサーリンク
SHARPの財政・経営状況
年度 | 総資産 [現金・手元資金] |
負債総額 [有利子負債] |
自己資本・純資産 [自己資本比率(%)] |
---|---|---|---|
2000年 | 2兆36億円 [2216億円] |
1兆601億円 [4380億円] |
9435億円 [47.1%] |
2005年 | 2兆5602億円 [2994億円] |
1兆4526億円 [4870億円] |
1兆989億円 [42.9%] |
2010年 | 2兆8856億円 [2478億円] |
1兆8370億円 [8472億円] |
1兆486億円 [35.6%] |
2011年 | 2兆6141億円 [1953億円] |
1兆9690億円 [1兆1271億円] |
6451億円 [23.9%] |
2012年 | 2兆877億円 [1919億円] |
1兆9529億円 [1兆1744億円] |
1348億円 [6.0%] |
2013年 | 2兆1816億円 [3795億円] |
1兆9745億円 [1兆935億円] |
2071億円 [8.9%] |
2014年 | 1兆9619億円 [2584億円] |
1兆9174億円 [9742億円] |
445億円 [1.5%] |
2015年 | 1兆5706億円 [2753億円] |
1兆6018億円 [7310億円] |
-312億円(債務超過) [-2.7%] |
2016年 | 1兆7736億円 [4821億円] |
1兆4658億円 [6574億円] |
3078億円 [16.6%] |
2017年 | 1兆9086億円 [4223億円] |
1兆5069億円 [6377億円] |
4017億円 [19.8%] |
2018年 | 1兆8485億円 [2666億円] |
1兆4912億円 [6672億円] |
3573億円 [18.5%] |
2019年 | 1兆8119億円 [2250億円] |
1兆5410億円 [7932億円] |
2709億円 [14.1%] |
2020年 | 1兆9272億円 [3419億円] |
1兆5631億円 [7249億円] |
3641億円 [18.2%] |
2021年 | 1兆9562億円 [2873億円] |
1兆4869億円 [6265億円] |
4693億円 [23.2%] |
2022年 | 1兆7730億円 [2621億円] |
1兆5645億円 [7244億円] |
2085億円 [11.8%] |
出所:シャープ
- 2008年のリーマンショック前までは財務への心配がほとんどなかった。
- 2010年以降、しだいに財務が悪化。そして2015年に債務超過に陥り、2016年に上場を維持したまま台湾のホンハイ精密工業(フォックスコン)に買収される。
- 現在、財政面は以前よりも少し強化されているが万全とは言えない。利益率は低いが黒字が続いている事や、親会社のホンハイの財務がそこそこ強いため、再びどこかに身売りになるような事はないはず。
連結社員数と開発投資について
年度 | 従業員数(連結) | 平均年収 | 設備投資費 | 研究開発費 |
---|---|---|---|---|
2005年 | 46872人 | 743万円 | 2189億円 | 1852億円 |
2010年 | 55580人 | 712万円 | 1725億円 | 1739億円 |
2015年 | 43511人 | 633万円 | 452億円 | 1301億円 |
2020年 | 50478人 | 743万円 | 915億円 | 867億円 |
出所:シャープ
- 2015年の452億円の設備投資費のうち、228億円がディスプレイ投資。2020年の915億円の設備投資費のうち631億円がディスプレイ投資。シャープ/ホンハイは、まだまだディスプレイで勝負していく模様。
スポンサーリンク
セグメント別の売上構造
部門 | 2021年/売上高 [営業利益:利益率(%)] |
2022年/売上高 [営業利益:利益率(%)] |
---|---|---|
スマートライフ (白物家電) |
4461億円 [482億円:10.8%] |
4687億円 [282億円:6.0%] |
8Kエコシステム (テレビ・複合機等) |
5676億円 [249億円:4.4%] |
5918億円 [134億円:2.3%] |
ICT (スマホ/PC等) |
3240億円 [40億円:1.2%] |
3258億円 [-55億円:-1.7%] |
ディスプレイ | 8596億円 [203億円:2.4%] |
7599億円 [-664億円:-8.7%] |
電子部品 | 3968億円 [69億円:1.8%] |
4755億円 [147億円:3.1%] |
出所:シャープ
- スマートライフ……白物家電部門。利益の中心は、洗濯機、エアコン、冷蔵庫、空気清浄機(プラズマクラスター)、調理家電など。製造コストを抑えるため、国内生産を大幅縮小。利益率の向上を目指す。
- 8Kエコシステム……テレビ、複合機など。テレビは全体的に世界シェアが落ちているが、日本国内はシェア20.1%(2021年度)と高シェアをキープ。複合機は新興国に強み。
- ICT……スマートフォンやPC事業など。AQUOSフォンは、国内販売台数432万台販売でシェア11.8%(2021年度)。また、東芝PC事業「Dynabook」を2020年に買収し完全子会社化。PC事業に本格参入。
- ディスプレイデバイス……液晶パネル製造・販売部門。液晶の需要が減っているスマホ向けを縮小し、テレビ、PCモニタ、ノートパソコン、自動車向けディスプレイでシェアを確保したい。
- 電子部品……センサ、半導体レーザ、高周波製品、スマホ向けカメラモジュールなど。カメラモジュールは、iPhone向けへの販売拡大を目指す。ライバルは韓国LGイノテック。
スポンサーリンク
ピックアップ液晶
やはりシャープといえば「液晶」「亀山ブランド」。その業績推移を確認。
年度 | 売上高 | 営業利益 [営業利益率(%)] |
---|---|---|
2009年 | 8872億円 | 111億円 [1.2%] |
2010年 | 1兆269億円 | 170億円 [1.7%] |
2011年 | 7209億円 | -422億円 [-5.9%] |
2012年 | 8467億円 | -1389億円 [-16.4%] |
2013年 | 9910億円 | 415億円 [4.2%] |
2014年 | 9071億円 | 301億円 [3.3%] |
2015年 | 7715億円 | -1291億円 [-16.7%] |
2016年 | 8420億円 | 35億円 [0.4%] |
2017年 | 1兆865億円 | 370億円 [3.4%] |
2018年 | 9596億円 | 270億円 [2.8%] |
2019年 | 1兆1572億円 | 149億円 [1.3%] |
2020年 | 8127億円 | 18億円 [0.2%] |
2021年 | 8596億円 | 203億円 [2.4%] |
2022年 | 7599億円 | -664億円 [-8.7%] |
出所:シャープ。2019年度は複合機事業を含む「8Kエコシステム部門」の数値。
- 2009年から2022年までのシャープ液晶事業の営業利益率の平均が-1.9%。比較として、韓国LGディスプレイの2000年から2022年までの営業利益率の平均が4.7%。サムスンディスプレイの2003年から2022年までの営業利益率の平均が9.7%。
- シャープの業績悪化は、液晶ディスプレイパネル部門の悪化と同義。社運をかけて巨額設備投資にふみきった液晶事業だが、2008年リーマンショック以降、一度も利益率5%に達する事がなかった。大きく赤字を出す年も3回。
- 台湾ホンハイグループ傘下となった2016年以降は液晶パネル部門で営業赤字を出していない。
- 昔と比べてディスプレイ関連の設備投資費用が減少しており、2021年度の設備投資額は165億円。多額のコストを必要としなくなっている。また、プレーヤーの減少で市場も安定化。
- 2022年度は、物価高による市況悪化によって赤字転落。
ライバル他社の成績推移
●サムスンディスプレイの業績推移
●LGディスプレイの業績推移
●ジャパンディスプレイの業績推移
●中国BOEの業績推移
なぜ液晶で失敗したのか
- 一般には過剰投資が原因とされる。(しかし、これを結論付けるのは残酷)
- 液晶ディスプレイが普及する頃、ちょうどリーマンショック(2008年)が重なり、世界的な市況悪化と同時に、円高で利益が出にくかった。
- 韓国のサムスンやLGディスプレイが人件費が安くて政府補助がある中国で巨額投資、大量生産。一方のシャープは技術流出を恐れ、日本での製造に注力。製造・販売コストで優位性をもてなかった。
- 2010年代中盤から中国BOEやCSOTなどの中国政府の多額の補助金を受けたメーカーが急成長。シャープは、さらに利益が出にくくなる。
- アップルは2017年発売のiPhoneXから有機ELを採用。スマホ向け液晶パネルの需要の減少。
- シャープは液晶パネルのサプライヤーである事と同時に、テレビ事業も手掛けるため、液晶パネルの外販先がライバル企業という形だった。つまり、顧客との関係づくりが難しかった。もし、シャープがサプライヤー専業だったら、ソニーやパナソニック、東芝などがライバルではなく協力関係となり、競合の設備投資を抑える事ができたかもしれない。
液晶ディスプレイ市場シェア
メーカー | 中小型液晶 パネルシェア |
大型液晶 パネルシェア |
---|---|---|
シャープ(日本) | 9.2% | 4.7% |
イノラックス(台湾) | 7.0% | 12.2% |
LGディスプレイ(韓国) | 12.1% | 24.0% |
BOE(中国) | 15.9% | 20.7% |
AUO(台湾) | 6.1% | 13.0% |
サムスン(韓国) | – | 9.3% |
TCL CSOT(中国) | 4.8% | 6.2% |
出所:Omdia。サムスンは早くから中小型液晶パネルから撤退。
- ホンハイは台湾のディスプレイメーカー「台湾INNOLUX(イノラックス)」と資本関係があり、ホンハイがシャープを買収した事で実質的に経営方針が一部で共通化。
- ホンハイが資本参加するシャープとイノラックス(台湾)のシェアを合計すると、中小型パネルが16.2%、大型パネルが16.9%。(2019年度)
スポンサーリンク
シャープの業績回復の理由
2016年にホンハイに買収された後、シャープの業績が回復している理由は何か。
- 問題だった液晶パネル分野において、2020年~2022年にサムスンが液晶パネルから撤退。パナソニックも2021年に液晶から撤退。LGディスプレイも生産縮小となり、世界的にプレーヤーが減少。競争が低下。結果として、シャープのディスプレイ事業も安定化へ。
- 親会社のホンハイは製造受託メーカー(EMS)として幅広い顧客と製造拠点をもち、テレビの受託製造も手掛ける。例えば、ソニーのテレビ「ブラビア」もホンハイが受託製造。つまり、シャープ買収で液晶パネル製造とテレビ製造の2つのボリュームが大きくなった事で、規模の利点が拡大。生産性の向上でシャープの液晶&テレビ事業も安定化へ。
- シャープの家電事業においても、ホンハイの他社製品受託生産事業との相性が良く、それが生産性向上につながっている。
- ホンハイは、安売りを仕掛けてくる中国勢と戦えるノウハウをもっている。製造受託業界で世界トップの理由。
スポンサーリンク
関連記事