FUJIFILMの連結決算:通年の売上推移
年度 | 売上高・収益 | 営業利益 [営業利益率(%)] | 純利益・最終損益 [純利益率(%)] |
---|---|---|---|
1998年 | 1兆4378億円 | 1653億円 [11.5%] | 715億円 [5.0%] |
1999年 | 1兆4018億円 | 1479億円 [10.6%] | 849億円 [6.1%] |
2000年 | 1兆4404億円 | 1497億円 [10.4%] | 1179億円 [8.2%] |
2001年 | 2兆4011億円 | 1687億円 [7.0%] | 813億円 [3.4%] |
2002年 | 2兆5057億円 | 1603億円 [6.4%] | 486億円 [1.9%] |
2003年 | 2兆5667億円 | 1849億円 [7.2%] | 823億円 [3.2%] |
2004年 | 2兆5274億円 | 1644億円 [6.5%] | 845億円 [3.3%] |
2005年 | 2兆6675億円 | 704億円 [2.6%] | 370億円 [1.4%] |
2006年 | 2兆7825億円 | 1131億円 [4.1%] | 344億円 [1.2%] |
2007年 | 2兆8468億円 | 2073億円 [7.3%] | 1044億円 [3.7%] |
2008年 | 2兆4343億円 | 373億円 [1.5%] | 105億円 [0.4%] |
2009年 | 2兆1817億円 | -421億円 [-1.9%] | -384億円 [-1.8%] |
2010年 | 2兆2171億円 | 1364億円 [6.2%] | 639億円 [2.9%] |
2011年 | 2兆1810億円 | 1093億円 [5.0%] | 428億円 [2.0%] |
2012年 | 2兆1995億円 | 1084億円 [4.9%] | 508億円 [2.3%] |
2013年 | 2兆4181億円 | 1285億円 [5.3%] | 716億円 [3.0%] |
2014年 | 2兆4634億円 | 1644億円 [6.7%] | 1109億円 [4.5%] |
2015年 | 2兆4604億円 | 1806億円 [7.3%] | 1164億円 [4.7%] |
2016年 | 2兆3222億円 | 1723億円 [7.4%] | 1315億円 [5.7%] |
2017年 | 2兆4334億円 | 1233億円 [5.1%] | 1407億円 [5.9%] |
2018年 | 2兆4315億円 | 2098億円 [8.6%] | 1381億円 [5.7%] |
2019年 | 2兆3151億円 (12月 日立の医療機器事業買収発表) | 1866億円 [8.1%] | 1250億円 [5.4%] |
2020年 | 2兆1925億円 | 1655億円 [7.5%] | 1812億円 [8.3%] |
2021年 | 2兆5258億円 (3月 ゼロックスと提携解消) | 2297億円 [9.1%] | 2112億円 [8.4%] |
2022年 | 2兆8590億円 | 2731億円 [9.6%] | 2194億円 [7.7%] |
2023年 | 2兆9609億円 | 2767億円 [9.3%] | 2435億円 [8.2%] |
出所:富士フイルム。本決算期は3月末。
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平均利益率
富士フイルムの1998年から2023年までの営業利益率の平均が6.7%。
比較として、プリンタやカメラ事業、医療関連機器で競合のキヤノンの1999年から2023年までの営業利益率の平均が10.0%。
比較として、プリンタやカメラ事業、医療関連機器で競合のキヤノンの1999年から2023年までの営業利益率の平均が10.0%。
会社の動向
- 富士フイルムは、日本の精密化学・光学メーカー。1934年設立。中核事業は、医療、カメラ、複合機、半導体素材。
- 2001年に売上高が急増しているのは、富士ゼロックスを連結子会社とした事が主な要因。
- 2008年、富山化学を買収し連結子会社化。2018年に完全子会社化。
- 中核のカメラがデジタル化し、フイルムを必要としなくなった事、スマホの台頭でデジカメ市場の規模が縮小した事、ペーパーレス化によりプリンタなどの事務機も停滞している事などにより、売上高は長く停滞。
- 2021年3月31日、1962年から提携していた米国ゼロックスと提携関係を解消。「富士ゼロックス」ブランドの消滅。今後、自社ブランドのもとで欧米市場での製品販売が可能になり、年間約100億円のブランド使用料の負担もなくなる。
- 2021年3月31日、日立製作所の画像診断関連事業を1790億円で買収完了。これにより、富士フイルムの製品ラインナップに、CT、MRI、X線診断装置、超音波診断装置などが加わる。
- 日立の医療装置関連買収により、富士フイルムの事業はキヤノンと競合度が高くなっている。医療系画像診断装置、カメラ、プリンタ、商業印刷機など。
- M&Aが波に乗っていることや事業内容が良い事から、投資家から評価が高い銘柄となっている。
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FUJI FILMの財政・経営状況
年度 | 総資産 [現金・手元資金] |
負債総額 [有利子負債] |
自己資本・純資産 [自己資本比率(%)] |
---|---|---|---|
2000年 | 2兆8305億円 [4663億円] |
1兆2055億円 [3326億円] |
1兆6250億円 [57.4%] |
2005年 | 3兆275億円 [2186億円] |
1兆640億円 [1734億円] |
1兆9635億円 [64.9%] |
2010年 | 2兆7088億円 [3131億円] |
8579億円 [1897億円] |
1兆8509億円 [68.3%] |
2015年 | 3兆3120億円 [6009億円] |
1兆800億円 [3657億円] |
2兆2320億円 [67.4%] |
2020年 | 3兆5492億円 [3948億円] |
13270億円 [5870億円] |
2兆2222億円 [62.6%] |
2021年 | 3兆9553億円 [4863億円] |
1兆4304億円 [7309億円] |
2兆5249億円 [63.8%] |
2022年 | 4兆1343億円 [2686億円] |
1兆3464億円 [4626億円] |
2兆7879億円 [67.4%] |
出所:富士フイルム
- 2021年は、日立の医療機器事業を1790億円で買収、また同時期にゼロックスとの合弁である「富士ゼロックス」の株式を約2500億円で全て買い取り、さらに医薬品受託生産事業に6000億円の投資を発表。そのため、2022年度はキャッシュが大きく減少。
- なお、富士フイルムの財務的な問題はなし。当社の業績と、最近揃った事業ラインナップを考慮すると優良企業と言える。
連結社員数と研究開発投資について
年度 | 従業員数(連結) | 平均年収 | 設備投資費 | 研究開発費 |
---|---|---|---|---|
2001年 | 72569人 | 844万円 | 1555億円 | 1469億円 |
2005年 | 75845人 | 825万円 | 1798億円 | 1822億円 |
2010年 | 78862人 | 1065万円 | 899億円 | 1653億円 |
2015年 | 78150人 | 1071万円 | 741億円 | 1630億円 |
2020年 | 73275人 | 970万円 | 1009億円 | 1522億円 |
2022年 | 73878人 | 1033万円 | 2883億円 | 1541億円 |
出所:富士フイルム。平均年収は有価証券報告書の提出会社の数値。
- 平均年収が高いが、これは有価証券報告書の提出会社(数百人規模)のデータであり、全体的に言えばもっと低い。
- 近年、設備投資費が増加している理由は、医薬品受託製造のシェア拡大に向けた設備投資によるもの。2021年に6000億円の投資を発表し、上位のロンザ(スイス)やサムスン(韓国)を追撃予定。
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国内と外国への収益割合
年度 | 日本 | 米州 | 欧州 | アジア/他 |
---|---|---|---|---|
2000年 | 48.4% | 27.4% | 16.5% | 7.7% |
2005年 | 49.8% | 20.9% | 14.1% | 15.2% |
2010年 | 46.7% | 16.6% | 11.7% | 25.0% |
2015年 | 49.4% | 17.6% | 8.9% | 24.1% |
2020年 | 47.8% | 18.4% | 11.4% | 22.4% |
2023年 | 35.4% | 21.7% | 15.9% | 27.0% |
出所:富士フイルム。米州とは南北アメリカ大陸に存在する国々の事。
- 国内の売上高を維持しながら海外売上比率が上昇。グローバル企業の理想的な形。投資家から好感される理由。
- アジア向けの売上高は、中国や韓国、台湾などがほとんど。
- 中核製品である医療装置/医療機器、高級カメラ、事務機器(複合機)、半導体材料などは、主に先進国に需要があるため、今のところ東南アジアへの売上は伸びにくい。
収益構造:セグメント別の成績
部門 | 2021年/売上高 [営業利益/利益率(%)] |
2022年/売上高 [営業利益/利益率(%)] |
---|---|---|
ヘルスケア (医療関連) |
8017億円 [1005億円/12.5%] |
9179億円 [1005億円/10.9%] |
マテリアル (素材) |
6308億円 [684億円/10.8%] |
6927億円 [677億円/9.8%] |
ビジネスイノベーション (プリンタ等) |
7599億円 [579億円/7.6%] |
8381億円 [695億円/8.3%] |
イメージング (カメラ等) |
3334億円 [370億円/11.1%] |
4103億円 [729億円/17.8%] |
出所:富士フイルム。セグメント間の調整なしのデータ。
- ヘルスケア(医療)……既存の内視鏡の他に、日立から買収したCT、MRI、超音波診断などや、医薬品受託生産の売上高が中心。内視鏡でライバルのオリンパスよりも製品ポートフォリオが揃っている強みを活かしたい。
- マテリアル(素材)……半導体関連材料(CMPスラリー、ポストCMPクリーナー、イメージセンサー用カラーフィルター、カラーレジスト、ポリイミドなど)の売上が中心。なお、インクジェット事業もこの部門に入る模様。
- ビジネスイノベーション……プリンタ、複合機、商業印刷機などの売上高。提携解消後も続くゼロックスへの製品供給の売上もこの部門。
- カメラ部門……ミラーレスは2022年度は36万台を販売。近年はインスタントカメラが売れ筋で、生産が追い付かない状況との事。(2023年9月の「めざましテレビ」の情報より)
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今後の注力事業は医薬品受託生産
富士フイルムの次なる成長事業は医療関係。その一つが医薬品の生産受託(CMO/CDMO)というビジネス。
医薬品(単に薬)は、かつては化学合成をもとに作るのが主流だったが、2000年代以降に遺伝子組み換えや細胞培養などのバイオ技術を利用したバイオ医薬品が求められるようになり、創薬における難易度やコストが上昇。
バイオ医薬品は、変化に敏感な生物を用いて製造するため、化学合成品と比較して設備投資費は3~10倍、品質管理では1.3倍~1.8倍のコストが必要。
そのため、製薬会社は自前生産がリスクとなり、しだいに「開発」と「生産」の分業が進む事になった。富士フイルムは医薬品の生産だけを請け負うビジネスに注力し、高い利益の継続性を見込む。
医薬品受託生産メーカーの市場シェア
順位 | 企業 | 国 | 市場シェア(%) |
---|---|---|---|
1位 | ロンザ | スイス | 33% |
2位 | サムスンバイオロジクス | 韓国 | 21% |
3位 | ベーリンガーインゲルハイム | ドイツ | 8% |
4位 | 富士フイルム | 日本 | 7% |
5位 | バイオベクトラ | カナダ | 4% |
出所:経済産業省資料、みずほ証券。
- 首位のロンザ(スイス)は1897年設立の老舗で、昔からこの分野を育ててきた歴史がある。
- 業界2位の韓国サムスンバイオロジクスは、2010年代からドカっと集中投資で急成長。世界中からの人材集めや設備投資のレベルが他社を圧倒していた。サムスングループの資金力で急速飛躍。
- 富士フイルムは業界4位。2021年に6000億円の設備投資を発表。サムスンバイオロジクスと同レベルの生産量を確保する見込み。
- この分野に積極投資を表明している日本企業は富士フイルムの他にも、AGC、JSR、ニプロ、リコーなど多い。
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