Nikonの連結決算:通年の売上推移
年度 | 売上高・収益 | 営業利益 [営業利益率(%)] | 純利益・最終損益 [純利益率(%)] |
---|---|---|---|
1997年 | 3721億円 | 255億円 [6.9%] | 83億円 [2.2%] |
1998年 | 3058億円 | -87億円 [-2.8%] | -182億円 [-6.0%] |
1999年 | 3718億円 | 184億円 [4.9%] | 78億円 [2.1%] |
2000年 | 4840億円 | 614億円 [12.7%] | 209億円 [4.3%] |
2001年 | 4830億円 | 222億円 [4.6%] | -60億円 [-1.2%] |
2002年 | 4690億円 | 42億円 [0.9%] | -81億円 [-1.7%] |
2003年 | 5064億円 | 36億円 [0.7%] | 24億円 [0.5%] |
2004年 | 6385億円 | 305億円 [4.8%] | 241億円 [3.8%] |
2005年 | 7309億円 | 666億円 [9.1%] | 289億円 [4.0%] |
2006年 | 8228億円 | 1020億円 [12.4%] | 548億円 [6.7%] |
2007年 | 9558億円 | 1352億円 [14.1%] | 755億円 [7.9%] |
2008年 | 8797億円 | 482億円 [5.5%] | 281億円 [3.2%] |
2009年 | 7855億円 | -139億円 [-1.8%] | -126億円 [-1.6%] |
2010年 | 8875億円 | 541億円 [6.1%] | 273億円 [3.1%] |
2011年 | 9187億円 | 801億円 [8.7%] | 593億円 [6.5%] |
2012年 | 1兆105億円 | 510億円 [5.0%] | 425億円 [4.2%] |
2013年 | 9806億円 | 629億円 [6.4%] | 468億円 [4.8%] |
2014年 | 8578億円 | 434億円 [5.1%] | 184億円 [2.1%] |
2015年 | 8229億円 | 367億円 [4.5%] | 222億円 [2.7%] |
2016年 | 7493億円 | 8億円 [0.1%] | 40億円 [0.5%] |
2017年 | 7171億円 | 562億円 [7.9%] | 348億円 [4.9%] |
2018年 | 7087億円 | 827億円 [11.7%] | 665億円 [9.4%] |
2019年 | 5910億円 | 67億円 [1.1%] | 77億円 [1.3%] |
2020年 | 4512億円 | -562億円 [-12.5%] | -345億円 [-7.6%] |
2021年 | 5396億円 | 499億円 [9.3%] | 427億円 [7.9%] |
2022年 | 6281億円 | 549億円 [8.7%] | 449億円 [7.1%] |
2023年 | 7172億円 | 397億円 [5.5%] | 325億円 [4.5%] |
出所:ニコン。本決算期は3月末。
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平均利益率
ニコンの1997年から2023年までの営業利益率の平均が5.2%。
競合との比較として、キヤノンの1999年から2023年までの営業利益率の平均が10.0%。
競合との比較として、キヤノンの1999年から2023年までの営業利益率の平均が10.0%。
会社の動向
- ニコンは1917年設立の日本の光学メーカー。カメラ、半導体露光装置(ステッパー)、顕微鏡、測定機器などの電子光学製品に強み。
- 売上高のピークが、日本が円高で困っていた2012年(1兆105億円)で、そこから売上規模が縮小傾向。スマートフォンの台頭により、中核のデジタルカメラの売上が低迷した事が主な要因。また、露光装置関連も不調。
- 2020年は、コロナ問題で営業赤字。その後、デジタルカメラの国内生産を終了し、タイで生産を一本化。交換レンズの国内生産は栃木県大田原市の工場に集約。
- 中核のデジタルカメラの市場規模縮小が続いた事で経営判断が難しかったが、機械的な経営判断を実行。売上高ピーク時の2012年以降はコロナ発生時の2020年しか赤字を出していない。
- 一眼レフやミラーレスなどのカメラ市場が底を打った感があるため、これ以上は売上高が極端に縮小するような事はないはず。
- 2023年のデジタルカメラの世界出荷額が前年比5%増の7143億円で3年連続でプラスへ。(出所:カメラ映像機器工業会)。ニコンにも恩恵。
- 2022年-2023年と2年連続で売上高が上昇。カメラ需要の低迷で悲観されていたが、業績は底を打ったと信じたい。
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Nikonの財政・経営状況
年度 | 総資産 [現金・手元資金] |
負債総額 [有利子負債] |
自己資本・純資産 [自己資本比率(%)] |
---|---|---|---|
2000年 | 5935億円 [337億円] |
4074億円 [1802億円] |
1861億円 [31.4%] |
2005年 | 6909億円 [445億円] |
4478億円 [1788億円] |
2431億円 [35.2%] |
2010年 | 8299億円 [1811億円] |
4407億円 [875億円] |
3892億円 [46.8%] |
2015年 | 9458億円 [2512億円] |
4048億円 [1128億円] |
5410億円 [57.2%] |
2020年 | 9897億円 [3518億円] |
4510億円 [1341億円] |
5387億円 [54.4%] |
2021年 | 1兆396億円 [3703億円] |
4396億円 [1301億円] |
6000億円 [57.7%] |
2022年 | 1兆503億円 [2113億円] |
4319億円 [1340億円] |
6184億円 [58.9%] |
2023年 | 1兆1471億円 [2066億円] |
4620億円 [1667億円] |
6850億円 [59.7%] |
出所:ニコン
- ニコンの財務問題はなし。カメラが売れない時代のため「ニコンは経営危機なのでは?」と思っている人が多いが、債務超過に陥るような心配はなさそう。
- 売上規模が縮小している中でも黒字を出してきた経営陣の判断と社風は信頼アリ。
- 2024年5月時点のニコンの株式時価総額は約5900億円。
Nikon連結社員数と開発投資について
年度 | 従業員数(連結) | 平均年収 | 設備投資額 | 研究開発額 |
---|---|---|---|---|
2005年 | 18725人 | 836万円 | 206億円 | 371億円 |
2010年 | 24409人 | 759万円 | 298億円 | 608億円 |
2015年 | 25729人 | 778万円 | 345億円 | 668億円 |
2020年 | 19448人 | 739万円 | 305億円 | 600億円 |
2023年 | 19444人 | 863万円 | 707億円 | 765億円 |
出所:ニコン
- ニコンの従業員は縮小傾向だったが下げ止まりの兆候。
- 設備投資費は、工作機械などへの投資。
- 研究開発費は、半導体露光装置やFPD露光装置(フラットパネルディスプレイ)や医療関連機器などへの開発費が中心。
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Nikonの海外収益の割合
年度 | 日本 | 米国 | 欧州 | 中国 | その他 |
---|---|---|---|---|---|
2000年 | 33.5% | 25.7% | 14.0% | 26.8% | |
2005年 | 23.7% | 28.7% | 22.7% | 24.9% | |
2010年 | 14.3% | 26.8% | 22.9% | 10.9% | 25.1% |
2015年 | 14.2% | 25.4% | 20.5% | 17.0% | 22.9% |
2020年 | 16.1% | 25.4% | 15.8% | 26.8% | 15.8% |
2023年 | 20.1% | 23.7% | 20.8% | 17.2% | 18.2% |
出所:ニコン
- ニコンは売上高が減少傾向だが、日本向けの売上高は減る事なく横ばい。日本にはカメラ需要や顕微鏡などの需要が根強くある事が要因。また、半導体分野では、i線/KrF/ArFドライ露光機の売上も。
- アメリカやヨーロッパは、ニコンの売上高減少と共に収益減少。
- 中国市場は健闘。露光装置やカメラのほか、顕微鏡、医療関連機器など、中国がまだ技術的に不足している光学製品の売上が多い。
Nikonの収益構造・セグメント別の成績
部門 | 2010年/売上高 [営業利益/利益率(%)] |
2016年/売上高 [営業利益/利益率(%)] |
2022年/売上高 [営業利益/利益率(%)] |
---|---|---|---|
精機事業 (ハイテク装置) |
2094億円 [271億円/12.9%] |
3830億円 [277億円/7.2%] |
2034億円 [244億円/12.0%] |
映像事業 (カメラ等) |
5974億円 [523億円/8.6%] |
2476億円 [510億円/20.6%] |
2286億円 [422億円/18.5%] |
医療関連 (顕微鏡・診断機) |
202億円 [-45億円/-22.3%] |
996億円 [116億円/11.6%] |
|
コンポーネント | 592億円 [-52億円/-8.8%] |
978億円 [52億円/5.3%] |
641億円 [147億円/22.9%] |
産業機器 | 1195億円 [36億円/3.0%] |
出所:ニコン。調整額を含まないデータ。
- 精機事業……半導体露光装置、ディスプレイパネル露光装置の売上高。販売価格や利幅が高いArF露光装置において、ライバルのASMLに劣勢になっているため、売上が上がりにくい。
- カメラ部門……一眼レフ、ミラーレス、コンパクトデジタルカメラ。需要は減少傾向だが、一台あたりの販売価格上昇により、高利益を確保。
- 医療関連(ヘルスケア)……顕微鏡、超広角走査型レーザー検眼鏡など。
- コンポーネント……光学素材、光学部品など
- 産業機器……画像測定システム、光学測定器、工業用顕微鏡など。
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ニコンを含む露光装置の世界シェア
- 最先端の「EUV露光装置(一台あたり約200億円)」はオランダのASMLが独占。この製品はニコンは撤退しているため、しょうがない。
- EUVの次に価格が高い「ArF液浸露光装置(1台あたり約80億円)」においても、ASMLが独占的なシェアをもつようになり、ニコンは収益性が悪い状況となっている。
- ArFドライでは、ニコンのシェアが高いが、このカテゴリーは市場規模が小さいのが悩ましい。
- 「i線」や「KrF」露光装置は、需要が拡大するアナログ半導体/パワー半導体で活躍する装置。最先端でも線幅が広いエリアで使用。今後のニコンは「i線」にも注力していくと表明。
Nikonの半導体露光装置(ステッパー)の売上台数
年度 | i線 | KrF | ArF(ドライ) | ArF液浸 |
---|---|---|---|---|
2005年 | 70台 | 46台 | 43台 | – |
2010年 | 16台 | 12台 | 1台 | 28台 |
2015年 | 15台 | 9台 | 5台 | 6台 |
2020年 | 10台 | 4台 | 7台 | 6台 |
2022年 | 27台 | 6台 | 8台 | 4台 |
出所:ニコン。ニコンはEUV露光装置は撤退している。
- ひと昔前と比べると、露光装置全体の販売台数が落ちている。巻き返しを図りたいがASMLやキヤノンからシェアを奪うのは容易ではない。
- 中核のカメラと共に露光装置までも低迷している事がニコンの悩ましい所。
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Nikonのカメラの販売台数とシェアの推移
年度 | レンズ交換式デジタルカメラ (一眼レフ/ミラーレス) [市場規模:市場シェア(%)] |
交換レンズ [市場規模:市場シェア(%)] |
コンパクトデジカメ [市場規模:市場シェア(%)] |
---|---|---|---|
2000年 | 108万台 | 108万台 | 170万台 |
2005年 | 134万台 [394万台:34.0%] |
202万台 [データなし] |
711万台 [6323万台:11.2%] |
2010年 | 429万台 [1414万台:30.4%] |
636万台 [2327万台:27.3%] |
1426万台 [1億741万台:13.3%] |
2015年 | 404万台 [1304万台:31.0%] |
590万台 [2134万台:27.6%] |
623万台 [2079万台:30.0%] |
2020年 | 84万台 [552万台:15.2%] |
135万台 [911万台:14.8%] |
26万台 [343万台:7.6%] |
2022年 | 70万台 [581万台:12.0%] |
116万台 [940万台:12.3%] |
11万台 [190万台:5.8%] |
出所:ニコン
- 2022年度のカメラ販売台数を2010年度と比較すると、「ミラーレス/一眼レフ」は84%の減少。「交換レンズ」は82%の減少。「コンパクトデジタルカメラ」は99%の減少。
- 特に、コンパクトデジタルカメラは、ほとんどがスマホカメラに置き換わったと考えていい。
ライバルと種類別カメラの販売シェアを比較
製品種類 | ニコン [市場シェア(%)] |
キヤノン [市場シェア(%)] |
ソニー [市場シェア(%)] |
---|---|---|---|
ミラーレス | 53万台 [13.0%] |
154万台 [37.8%] |
125万台 [30.7%] |
一眼レフ | 20万台 [10.8%] |
132万台 [71.4%] |
– |
コンパクトデジカメ | 11万台 [5.3%] |
49万台 [23.6%] |
63万台 [30.3%] |
出所:ニコン、キヤノン、ソニー、カメラ映像機器工業会
- ニコンは「ミラーレスカメラ」と「一眼レフカメラ」のどちらも競合に対して劣勢になっている。
- ミラーレスカメラは、先駆者のソニーが強かったが、2022年度に販売台数でキヤノンが逆転。
- ニコンは、ソニー製CMOSイメージセンサーを採用。ニコンには世界中に愛用者を抱えるため、反撃が期待できそう。
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