Pfizerの連結決算:通年の売上推移
年度 | 売上高・収益 | 営業利益 [営業利益率(%)] | 純利益・最終損益 [純利益率(%)] |
---|---|---|---|
2000年 | 259.58億ドル | 54.71億ドル [21.1%] | 37.26億ドル [14.4%] |
2001年 | 289.47億ドル | 99.63億ドル [34.4%] | 77.88億ドル [26.9%] |
2002年 | 297.58億ドル | 112.69億ドル [37.9%] | 91.26億ドル [30.7%] |
2003年 | 447.36億ドル | 32.46億ドル [7.3%] | 39.10億ドル [8.7%] |
2004年 | 525.16億ドル | 140.07億ドル [26.7%] | 113.61億ドル [21.6%] |
2005年 | 512.98億ドル | 115.34億ドル [22.5%] | 80.85億ドル [15.8%] |
2006年 | 483.71億ドル | 130.28億ドル [26.9%] | 193.37億ドル [40.0%] |
2007年 | 484.18億ドル | 92.78億ドル [19.2%] | 81.44億ドル [16.8%] |
2008年 | 482.96億ドル | 80.49億ドル [16.7%] | 81.04億ドル [16.8%] |
2009年 | 500.09億ドル | 86.30億ドル [17.3%] | 86.35億ドル [17.3%] |
2010年 | 651.65億ドル | 134.12億ドル [20.6%] | 82.57億ドル [12.6%] |
2011年 | 610.35億ドル | 139.67億ドル [22.9%] | 100.09億ドル [16.4%] |
2012年 | 546.57億ドル | 152.64億ドル [27.9%] | 145.70億ドル [26.7%] |
2013年 | 515.84億ドル | 151.84億ドル [29.4%] | 220.03億ドル [42.7%] |
2014年 | 496.05億ドル | 132.49億ドル [26.7%] | 91.35億ドル [18.4%] |
2015年 | 488.51億ドル | 118.24億ドル [24.2%] | 69.60億ドル [14.2%] |
2016年 | 528.24億ドル | 121.45億ドル [23.0%] | 72.15億ドル [13.7%] |
2017年 | 525.46億ドル | 137.22億ドル [26.1%] | 213.08億ドル [40.6%] |
2018年 | 408.25億ドル | 56.72億ドル [13.9%] | 111.53億ドル [27.3%] |
2019年 | 409.05億ドル | 67.10億ドル [16.4%] | 160.26億ドル [39.2%] |
2020年 | 416.51億ドル | 82.50億ドル [19.8%] | 91.59億ドル [22.0%] |
2021年 | 812.88億ドル | 194.33億ドル [23.9%] | 219.79億ドル [27.0%] |
2022年 | 1003.30億ドル | 349.44億ドル [34.8%] | 313.72億ドル [31.3%] |
2023年 | 584.96億ドル | 2.22億ドル [0.4%] | 21.19億ドル [3.6%] |
平均利益率
会社の動向
- 1849年、ニューヨークでファイザー設立。
- 1949年、抗生物質「テラマイシン」の開発で世界的な創薬メーカーとしての成功を築く。
- 1953年、田辺製薬(現在の田辺三菱製薬)との合弁のもとで日本進出。1989年に米国ファイザーの完全子会社化へ。
- 1990年代に、高脂血症薬「リピトール」、抗うつ薬「ゾロフト」、勃起不全薬「バイアグラ」、非ステロイド性抗炎症剤「セレブレックス」などの成功により、世界トップの製薬メーカーへ成長。
- 2021年と2022年は、ファイザー製コロナワクチンの世界的需要増加により、売上が急増。コロナワクチンだけで、2021年は367.81億ドル、2022年度は378.06億ドルを売上。
- コロナ特需前の2018年~2019年の業績がファイザーの実態。売上高が低迷しており、将来性に不安を抱える。
- 会社規模のわりに、新薬の自社開発が上手くいっていないとされる。
- 今後、次世代がん治療向けのバイオ医薬品に注力していく見通し。
Pfizerの財政・経営状況
年度 | 総資産 [現金・手元資金] |
負債総額 [有利子負債] |
自己資本・純資産 [自己資本比率(%)] |
---|---|---|---|
2005年 | 1175.65億ドル [222.26億ドル] |
519.38億ドル [179.36億ドル] |
656.27億ドル [55.8%] |
2010年 | 1950.14億ドル [280.12億ドル] |
1067.49億ドル [384.10億ドル] |
882.65億ドル [45.3%] |
2015年 | 1673.81億ドル [232.90億ドル] |
1023.84億ドル [389.78億ドル] |
649.98億ドル [38.8%] |
2020年 | 1542.29億ドル [122.23億ドル] |
907.56億ドル [398.36億ドル] |
634.73億ドル [41.2%] |
2021年 | 1814.76億ドル [310.69億ドル] |
1040.13億ドル [384.36億ドル] |
774.62億ドル [42.7%] |
2022年 | 1972.05億ドル [227.32億ドル] |
1012.88億ドル [358.29億ドル] |
959.16億ドル [48.6%] |
- 2022年時点のファイザーの財務的な問題はなし。
- 新薬の開発が滞っており、また、売上をもたらす主力医薬品(エリキュース、イブランスなど)の特許切れが迫っているため、近年は株主還元よりも財務の安定化に向かっているところがある。
- 2023年12月時点のファイザーの株式時価総額は1514億ドル。比較として、米国メルクは2663億ドル、米国イーライリリーは創薬メーカー世界トップの5377億ドル。
Pfizerの全社員数とR&Dの推移
年度 | 従業員数(連結) | 研究開発費 |
---|---|---|
2010年 | 11万600人 | 94.83億ドル |
2015年 | 9万7900人 | 76.90億ドル |
2020年 | 7万8500人 | 87.09億ドル |
2023年 | 8万8000人 | 106.79億ドル |
- 業績低迷により、世界中の開発拠点で従業員のリストラ傾向。
- 2022年度のファイザーのグローバル従業員数は8万3000人。同業との比較として、米国メルクが6万9000人、米国アッヴィが5万人、米国イーライリリーが3万9000人、武田薬品が4万9000人。
近年の大型買収
2009年米ワイス社を680億ドルで買収。
2015年アイルランドのアラガン社を1600億ドルで買収。
2023年標的がん治療に強みをもつ米シージェンを430億ドルで買収すると発表。
医薬品別の収益構造
医薬品 | 2021年/売上高 [売上比率(%)] |
2022年/売上高 [売上比率(%)] |
---|---|---|
コミナティ (コロナワクチン) |
367.81億ドル [45.2%] |
378.06億ドル [37.7%] |
パキロビット (抗ウイルス剤) |
0.76億ドル [0.1%] |
189.33億ドル [18.9%] |
エリキュース (抗血液凝固剤) |
59.70億ドル [7.3%] |
64.80億ドル [6.5%] |
プレベナー (肺炎球菌ワクチン) |
52.72億ドル [6.5%] |
63.37億ドル [6.3%] |
イブランス (乳がん治療薬) |
54.37億ドル [6.7%] |
51.20億ドル [5.1%] |
ビンダケル (TTR型アミロイドーシス薬) |
20.15億ドル [2.5%] |
24.47億ドル [2.4%] |
ゼルヤンツ (免疫抑制剤) |
24.55億ドル [3.0%] |
17.96億ドル [1.8%] |
イクスタンジ (アンドロゲンR拮抗薬) |
11.85億ドル [1.5%] |
11.98億ドル [1.2%] |
インライタ (抗悪性腫瘍剤) |
10.02億ドル [1.2%] |
10.03億ドル [1.0%] |
- 2021年-2022年は、コロナワクチン特需で売上急増。
- 2022年度は、コロナ感染者(患者)に対する治療薬としてパキロビットの需要が急増。189.33億ドルを売上。
- 抗凝固薬「エリキュース」の特許切れが2026年、アメリカでは2028年に迫る。
- 肺炎球菌薬「プレベナー」の特許切れが2026年。
- 乳がん治療薬「イブランス」の特許切れが2027年。
- ファイザーは売上が多い主力製品の特許切れの問題を多く抱える。加えて新薬開発について明るいニュースが少ない事も株価が低迷している理由。
国内と外国への売上比率
国/地域 | 2016年/売上高 [全体比(%)] |
2019年/売上高 [全体比(%)] |
2022年/売上高 [全体比(%)] |
---|---|---|---|
アメリカ | 263.69億ドル [49.9%] |
238.52億ドル [58.3%] |
424.73億ドル [42.3%] |
ヨーロッパ | 264.55億ドル [50.1%] |
87.01億ドル [21.3%] |
219.82億ドル [21.9%] |
ほか先進国 | 64.65億ドル [15.8%] |
157.78億ドル [15.7%] |
|
新興国 | 127.33億ドル [31.1%] |
200.97億ドル [20.0%] |
- アメリカは肥満からもたらされる生活習慣病により、薬をよく飲むお国柄がある。製薬メーカーのプロパガンダの影響もあり。
あの有名製品の特許切れについて
バイアグラ
勃起不全/ED治療薬。一般成分名はシルデナフィル。2013年~2014年までに欧米や日本で特許切れ。日本では後発品「シルデナフィル錠」として、医療機関で安く購入できるようになっている。(保険適用外)。
なお、バイアグラの登場によって勃起不全に悩む中年~高齢男性の強い味方になってくれるアイテムとなったが、これにより高齢男性が子供をもうける割合が増加したなどというデータは証明されておらず。
セレブレックス
非ステロイド性消炎鎮痛剤。一般成分名は「セレコキシブ」。2014年にアメリカやヨーロッパで特許切れ。日本でも2019年に特許切れ。後発品登場により、慢性的な腰痛・関節痛などに悩む人が安く使用できるように。(保険適応)
セレコキシブは、ロキソニンやイブプロフェンなどで問題となる胃粘膜や腸粘膜への副作用が少ない。そのため、痛みや炎症を伴う症状に対して広く長く使用される傾向があり、常用している人が多い。製薬メーカー側から言えば、長く売上をもたらす医薬品となる。
そのため、ファイザーは2019年に日本で特許が切れた後はジェネリック市場に参入し、全く同じ製品を後発品として販売中。しかし、薬価がかなり低く定められたため、収益性が低いのが難点。
なお、筆者の2022年頃の調べでは、薬局側はセレコキシブというと慣性的にファイザーの後発品を扱っている所が多かった。「ひとまず同じモノを」「患者さんが慣れているモノを」などの回答が多かった。
セレコキシブのジェネリックに参入している日本メーカーは、ニプロ、日医工、第一三共、沢井、キョーリン、東和、日新、陽進堂などかなり多いが、今後、医療機関に対する営業力を高めたいところ。
世界の医薬品メーカーの研究開発費
企業 | 2010年/研究開発費 [総売上に対する割合(%)] |
2015年/研究開発費 [総売上に対する割合(%)] |
2022年/研究開発費 [総売上に対する割合(%)] |
---|---|---|---|
ファイザー (米国) |
94.83億ドル [13.9%] |
76.90億ドル [15.7%] |
114.30億ドル [11.4%] |
メルク (米国) |
111.11億ドル [24.2%] |
67.04億ドル [17.0%] |
135.48億ドル [22.9%] |
アッヴィ (米国) |
24.95億ドル [16.0%] |
42.85億ドル [18.7%] |
65.10億ドル [11.2%] |
イーライリリー (米国) |
48.84億ドル [21.2%] |
47.96億ドル [24.0%] |
71.90億ドル [25.2%] |
ロシュ (スイス) |
90.50億スイスフラン [19.1%] |
93.32億スイスフラン [19.4%] |
140.53億スイスフラン [22.2%] |
ノバルティス (スイス) |
90.70億ドル [17.6%] |
89.35億ドル [18.1%] |
99.96億ドル [19.8%] |
武田薬品 (日本) |
2889億円 [20.4%] |
3459億円 [19.1%] |
6333億円 [15.7%] |
- 2022年度のファイザーは、コロナワクチンやバイオ医薬品向けの開発で、通常よりも研究開発費が上がっている。
- 新薬を確保しないと、特許切れが続く2026年頃からメガファーマグループから脱落する可能性アリ。