General Motorsの決算(通年)の売上推移
年度 | 売上高・収益 [自動車販売台数] | 営業利益 [営業利益率(%)] | 純利益・最終損益 [純利益率(%)] |
---|---|---|---|
2004年 | 1953.51億ドル [809万台] | -5.45億ドル(赤字) [-0.3%] | 27.07億ドル [1.4%] |
2005年 | 1946.55億ドル [838万台] | -178.06億ドル(赤字) [-9.1%] | -104.17億ドル(赤字) [-5.4%] |
2006年 | 2033.67億ドル [909万台] | -21.55億ドル(赤字) [-1.1%] | -20.34億ドル(赤字) [-1.0%] |
2007年 | 1799.84億ドル [936万台] | -426.85億ドル(赤字) [-23.7%] | -385.42億ドル(赤字) [-21.4%] |
2008年 | 1489.79億ドル [835万台] | -310.51億ドル(赤字) [-20.8%] | -309.43億ドル(赤字) [-20.8%] |
2009年 | 1045.88億ドル [748万台] | -210.23億ドル(赤字) [-20.1%] | 1046.90億ドル [100.1%] |
2010年 | 1355.87億ドル [838万台] | 51.08億ドル [3.8%] | 46.68億ドル [3.4%] |
2011年 | 1502.75億ドル [902万台] | 56.56億ドル [3.8%] | 75.85億ドル [5.0%] |
2012年 | 1522.56億ドル [929万台] | -303.63億ドル(赤字) [-19.9%] | 48.59億ドル [3.2%] |
2013年 | 1552.30億ドル [971万台] | 51.31億ドル [3.3%] | 37.70億ドル [2.4%] |
2014年 | 1559.28億ドル [992万台] | 15.30億ドル [0.9%] | 28.04億ドル [1.8%] |
2015年 | 1523.55億ドル [984万台] | 55.38億ドル [3.6%] | 96.87億ドル [6.4%] |
2016年 | 1663.79億ドル [996万台] | 86.86億ドル [5.2%] | 94.27億ドル [5.7%] |
2017年 | 1455.88億ドル [960万台] | 86.61億ドル [5.9%] | -38.80億ドル(赤字) [-2.7%] |
2018年 | 1470.49億ドル [838万台] | 44.45億ドル [3.0%] | 79.16億ドル [5.4%] |
2019年 | 1372.37億ドル [771万台] | 54.81億ドル [4.0%] | 65.81億ドル [4.8%] |
2020年 | 1224.85億ドル [682万台] | 66.34億ドル [5.4%] | 62.47億ドル [5.1%] |
2021年 | 1270.04億ドル [629万台] | 93.24億ドル [7.3%] | 98.37億ドル [7.7%] |
- 2008年のアメリカ金融危機(リーマンショック)の以前から赤字が続き、同時に財務も急激に悪化。
- 本業の儲けである営業利益が黒字化せず、2005年の営業損失は178億円の赤字。2007年の営業損失は426億ドルの赤字。
- 純利益においてもマイナスが続き、2005年は104億ドル、2006年は20億ドル、2007年は385億ドル、2008年が309億ドルの最終赤字。
- そして火に油を注ぐように2008年頃の金融危機が発生。さらに巨額負債を抱え2009年に経営破綻へ。クライスラーも2009年に倒産。フォードは自己再建。
- アメリカ政府はGMに公的資金を投入し再建へ。そして、公的資金を完済した2010年以降は、安定的な利益を出すように。
- 2017年度の最終赤字は、オペル/ボクスホール売却などの欧州撤退に関する費用計上。
GMの経営と財政
年度 | 総資産 | 負債総額 | 自己資本・純資産 [自己資本比率(%)] |
---|---|---|---|
2005年 | 4760.78億ドル | 4604.42億ドル | 145.97億ドル [3.0%] |
2010年 | 1388.98億ドル | 1017.39億ドル | 371.59億ドル [26.7%] |
2015年 | 1943.38億ドル | 1540.15億ドル | 403.23億ドル [20.7%] |
2020年 | 2351.94億ドル | 1855.17億ドル | 496.77億ドル [21.1%] |
2021年 | 2447.18億ドル | 1789.03億ドル | 658.15億ドル [26.9%] |
2009年の経営破綻後は、財務の強化に努め、自己資本も強化されている。
セグメント別の収益
部門 | 2019年/売上高 [全体からの割合] |
2020年/売上高 [全体からの割合] |
2021年/売上高 [全体からの割合] |
---|---|---|---|
全体の総売上高 | 1372.37億ドル | 1224.85億ドル | 1270.04億ドル |
自動車部門 | 1226.97億ドル [89.4%] |
1086.73億ドル [88.7%] |
1135.90億ドル [89.4%] |
金融サービス部門 | 145.40億ドル [10.6%] |
138.12億ドル [11.3%] |
134.14億ドル [10.6%] |
GMが2009年に経営破綻した理由は、販売台数を増やすためにゼロ金利レベルの自動車ローンを拡大した事が要因の一つ。
つまり、過度な金融サービスで経営が悪化していたワケだが、現在の金融部門は全体売上の10%前後で、ヨーロッパの自動車メーカーを基準に言えば、GMの金融サービス部門の依存度はかなり低い。
過去の失敗を教訓にして「金融部門は全体の10%前後」というような社内規律が存在しているのかもしれない。
アメリカ依存
ゼネラルモーターズの業績は、地元アメリカ市場への依存度が非常に高い。
地域 | 2019年 [全体からの割合] |
2020年 [全体からの割合] |
2021年 [全体からの割合] |
---|---|---|---|
アメリカ | 978.87億ドル [79.8%] |
892.04億ドル [82.1%] |
927.71億ドル [81.7%] |
アメリカ以外 | 248.10億ドル [20.2%] |
194.69億ドル [17.9%] |
208.19億ドル [18.3%] |
地元アメリカへの高依存は「選択と集中」という言葉に置き換えられる。数量を追う経営から一転し、利益率を追及する経営へ。
結果として世界販売台数が縮小しているが、アメリカのような巨大市場でしっかりと合理的な生産と販売台数を確保していけば問題なし。むしろその方が安定的。
現在のGMは「選択と集中」が特に進んでいるため、大赤字を出すような体質にはなっていない。再び「倒産」となってしまう可能性は低い。
GMの3大市場の成績
年度 | アメリカの販売台数 [米国シェア(%)] |
中国の販売台数 [中国シェア(%)] |
欧州の販売台数 [欧州シェア(%)] |
---|---|---|---|
2015年 | 308万台 [17.3%] |
373万台 [14.9%] |
109万台 [6.3%] |
2016年 | 304万台 [17.0%] |
391万台 [13.8%] |
116万台 [6.2%] |
2017年 | 300万台 [17.1%] |
404万台 [14.3%] |
68.5万台 [3.6%] |
2018年 | 295万台 [16.7%] |
364万台 [12.9%] |
3673台 [0.02%] |
2019年 | 281万台 [16.5%] |
309万台 [12.2%] |
3590台 [0.02%] |
2020年 | 254万台 [17.2%] |
290万台 [11.6%] |
1000台未満 [0.01%未満] |
2021年 | 221万台 [14.4%] |
289万台 [11.2%] |
1000台未満 [0.01%未満] |
- アメリカでは、コロナや半導体不足で販売台数を落としているが、基本的に安定的な売上台数を確保。
- 中国市場では、米中対立の影響なのか、しだいに販売台数を落としている。米中対立が本格化した2018年から2020年の2年間で販売台数を95万台落とす。
- 2017年、GMはイギリスEU離脱をきっかけにグループ内のオペル(ドイツ)とボクスホール(英国)をPSAグループに売却し、赤字続きだった欧州から撤退。以降はヨーロッパ市場で大幅に販売台数が減少。
- GMの欧州市場での損失は、過去17年間で総額224億ドルとされる。
- 現在のGMは、アメリカと中国の2つの巨大市場への依存度がかなり高くなっている。
GMの日本市場の成績
ゼネラルモーターズ・ジャパンの日本市場における販売台数はかなり少ない。2021年度では、シボレーもキャデラックも共に登録台数が1000台未満。GMの業績において無視できるレベル。
保有ブランドと販売台数
- シボレー(大衆車だが世界基準でいえば車体は大きめ)
- GMC(ピックアップトラックやSUVに特化したブランド)
- ビュイック(中大型の乗用車ブランド)
- キャデラック(高級車ブランド)
年度 | シボレー | ビュイック | キャデラック |
---|---|---|---|
2019年 | 387万台 | 107万台 | 39万台 |
なぜ経営破綻したのか
2009年6月、ゼネラルモーターズは連邦倒産法申請し、経営破綻している。主な理由は以下。
- ストライキによる人件費の高騰。GMの賃金(約73ドル/時間)は米国製造業の平均賃金(約31ドル/時間)の約2倍だった。
- 従業員の医療費や企業年金などの福利厚生費の高騰。
- 販売台数を増やすためのゼロ金利融資(自動車ローン)の無理な拡大。その後の不良債権化。
- 2008年のアメリカ金融危機が重なる不運により、2009年に経営破綻。負債総額は1728億ドル。
再建プロセス
- アメリカ政府が60%、カナダ政府が12%の株式を保有し、実質的な国有企業として再建。
- アメリカ工場の従業員を6万2000人から4万人へ。
- ディーラー数を6200店から3600店に削減。
- 販促目的の金融サービス部門の厳格化。
- 資本提携先の株式売却(資本提携の解消)。サーブ(スウェーデン)、スズキ(2008年解消)、富士重工業(現スバル:2005年解消)、いすゞ自動車(2006年解消)などの株式売却。
そして、2010年に米国政府からの公的資金を完済。さらに2013年12月にアメリカ政府保有のGM株式全ての売却が完了。つまり、GMの国有化が解消。
車載バッテリーとEV投資について
- 2025年までのEV投資は350億ドルを予定。
- ホンダと提携し、大衆車クラスの電気自動車の共同開発。
- バッテリーサプライヤーは韓国LGエナジー。
電気自動車の中核部品は車載電池。バッテリーはEVの安全性とメーカーの信頼につながってくるが、すでにサプライヤーである韓国LGエナジーのバッテリー発火が多発している問題を抱えている。
まだ販売台数が少ないため大きな問題とはなっていないが、売上台数が増えたところでバッテリー問題が多発し、大規模リコールとなれば、再び経営が不安定になる可能性あり。
韓国企業のバッテリーが原因で名門GMが陥落するような事があってはならない。