Eisaiの連結決算:通年の売上推移
年度 | 売上高・収益 | 営業利益 [営業利益率(%)] | 純利益・最終損益 [純利益率(%)] |
---|---|---|---|
1998年 | 2848億円 | 386億円 [13.6%] | 158億円 [5.5%] |
1999年 | 3024億円 | 371億円 [12.3%] | 112億円 [3.7%] |
2000年 | 3617億円 | 589億円 [16.3%] | 233億円 [6.4%] |
2001年 | 4317億円 | 726億円 [16.8%] | 356億円 [8.2%] |
2002年 | 4666億円 | 759億円 [16.3%] | 410億円 [8.8%] |
2003年 | 5002億円 | 831億円 [16.6%] | 501億円 [10.0%] |
2004年 | 5330億円 | 868億円 [16.3%] | 555億円 [10.4%] |
2005年 | 6013億円 | 957億円 [15.9%] | 634億円 [10.5%] |
2006年 | 6741億円 | 1053億円 [15.6%] | 706億円 [10.5%] |
2007年 | 7343億円 | 177億円 [2.4%] | -170億円 [-2.3%] |
2008年 | 7817億円 | 918億円 [11.7%] | 477億円 [6.1%] |
2009年 | 8032億円 | 864億円 [10.8%] | 403億円 [5.0%] |
2010年 | 7689億円 | 1131億円 [14.7%] | 674億円 [8.8%] |
2011年 | 6480億円 | 957億円 [14.8%] | 585億円 [9.0%] |
2012年 | 5737億円 | 705億円 [12.3%] | 483億円 [8.4%] |
2013年 | 5995億円 | 664億円 [11.1%] | 383億円 [6.4%] |
2014年 | 5485億円 | 283億円 [5.2%] | 433億円 [7.9%] |
2015年 | 5479億円 | 519億円 [9.5%] | 549億円 [10.2%] |
2016年 | 5391億円 | 591億円 [11.0%] | 394億円 [7.3%] |
2017年 | 6001億円 | 772億円 [12.9%] | 518億円 [8.6%] |
2018年 | 6248億円 | 862億円 [13.4%] | 634億円 [10.1%] |
2019年 | 6956億円 | 1255億円 [18.0%] | 1218億円 [17.5%] |
2020年 | 6459億円 | 518億円 [8.0%] | 421億円 [6.5%] |
2021年 | 7562億円 | 538億円 [7.1%] | 480億円 [6.3%] |
2022年 | 7444億円 | 400億円 [5.4%] | 554億円 [7.4%] |
2023年 | 7417億円 | 534億円 [7.2%] | 424億円 [5.7%] |
出所:エーザイ
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平均利益率
エーザイの1998年から2022年までの営業利益率の平均が12.3%。
会社の動向
- エーザイは、1936年設立の合資会社「桜ヶ岡研究所」がルーツ。1941年12月6日に日本衛材株式会社を設立。太平洋戦争開戦(1941年12月8日)の2日前。
- 1960年代から1990年代にかけて、末梢性神経障害治療薬「メチコバール」、胃炎薬「セルベックス」などが会社の成長を支えた。セルベックスは市販薬「セルベール」としても販売。
- 一時期は売上/業績が低迷していたが、抗がん剤「レンビマ」、抗てんかん薬「フィコンパ」などの成功により業績回復。
- 2018年、エーザイは米国メルク社と提携を発表。メルク社がもつ免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」と、エーザイ創製の抗がん剤「レンビマ」の併用療法の共同開発が目的。契約一時金1000億円、販売によるマイルストーンで最大6100億円の収入を約束する契約を締結し、株価急伸。
- 2023年7月、エーザイと米国バイオジェンで共同開発した世界初のアルツハイマー治療薬「レカネマブ」がアメリカFDAに正式承認。しかし、イーライリリーからもアルツハイマー病に対する治療薬が登場した事で、思ったほどの利益にならない不安もある。
- 巨大市場において、中国では後発品の販売強化、インドでは原薬から一貫した後発薬医薬品の受託生産を拡大。新薬開発が困難な事や、日本国内での薬価引き下げなどにより、収益を多角化する目的。小さい利益でもコツコツと増やす。
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Eisaiの財政・経営状況
年度 | 総資産 [現金・手元資金] |
負債総額 [有利子負債] |
自己資本・純資産 [自己資本比率(%)] |
---|---|---|---|
2005年 | 7472億円 [1833億円] |
2280億円 [4億円] |
5192億円 [69.5%] |
2010年 | 1兆463億円 [1028億円] |
6359億円 [3439億円] |
4104億円 [38.6%] |
2015年 | 9740億円 [1793億円] |
3972億円 [2036億円] |
5768億円 [59.2%] |
2020年 | 1兆900億円 [2487億円] |
3621億円 [899億円] |
7279億円 [66.8%] |
2021年 | 1兆2393億円 [3096億円] |
4678億円 [949億円] |
7715億円 [62.2%] |
2022年 | 1兆2634億円 [2674億円] |
4408億円 [1261億円] |
8226億円 [65.1%] |
出所:エーザイ
- 現金/手元資金が有利子負債を上回る実質無借金経営。今のところ財務関連の心配は必要なし。
- 2023年11月時点のエーザイの株式時価総額は約2兆3100億円。比較として、武田薬品は約6兆6700億円、第一三共が約7兆7600億円、アステラスが約3兆2200億円。
連結社員数と研究開発投資について
年度 | 従業員数(連結) | 平均年収 | 設備投資費 | 研究開発費 |
---|---|---|---|---|
2005年 | 9081人 | 1094万円 | 209億円 | 932億円 |
2010年 | 11560人 | 1094万円 | 144億円 | 1450億円 |
2015年 | 9877人 | 1093万円 | 75億円 | 1223億円 |
2020年 | 11237人 | 1042万円 | 320億円 | 1503億円 |
2022年 | 11076人 | 1050万円 | 252億円 | 1729億円 |
出所:エーザイ
- 2022年度のエーザイの連結従業員数は11076人。比較として、武田薬品は49095人、第一三共は17435人。アステラスが14484人。
- エーザイの平均年収は、国内創薬メーカーの平均レベル。
- 設備投資費は、主に日本国内工場における製造設備、および研究設備の拡充によるもの。
- エーザイは、アルツハイマー薬や抗がん剤に向けた研究開発費が多い。
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エーザイと競合の研究開発費を比較
企業 | 2010年/研究開発費 [売上比率(%)] |
2015年/研究開発費 [売上比率(%)] |
2022年/研究開発費 [売上比率(%)] |
---|---|---|---|
エーザイ | 1450億円 [18.9%] |
1223億円 [22.3%] |
1729億円 [23.2%] |
武田薬品 | 2889億円 [20.4%] |
3459億円 [19.1%] |
6333億円 [15.7%] |
第一三共 | 1943億円 [20.1%] |
2087億円 [21.2%] |
3416億円 [26.7%] |
アステラス | 2173億円 [22.8%] |
2257億円 [16.4%] |
2761億円 [18.2%] |
大塚HD | 1645億円 [15.1%] |
2010億円 [14.1%] |
2752億円 [15.8%] |
中外製薬 | 547億円 [14.4%] |
819億円 [16.4%] |
1437億円 [11.4%] |
塩野義製薬 | 509億円 [18.0%] |
497億円 [16.0%] |
1023億円 [24.0%] |
ファイザー (アメリカ) |
94.13億ドル [13.9%] |
76.90億ドル [15.7%] |
114.30億ドル [11.4%] |
ロシュ (スイス) |
90.50億スイスフラン [19.1%] |
93.32億スイスフラン [19.4%] |
140.53億スイスフラン [22.2%] |
メルク (アメリカ) |
111.11億ドル [24.2%] |
67.04億ドル [17.0%] |
135.48億ドル [22.9%] |
ノバルティス (スイス) |
90.70億ドル [17.6%] |
89.35億ドル [18.1%] |
99.96億ドル [19.8%] |
アッヴィ (アメリカ) |
24.95億ドル [16.0%] |
42.85億ドル [18.7%] |
65.10億ドル [11.2%] |
イーライリリー (アメリカ) |
48.84億ドル [21.2%] |
47.96億ドル [24.0%] |
71.90億ドル [25.2%] |
出所:各メーカーの有価証券報告書。
- エーザイの研究開発費は日本国内5位クラス。そして、売上に対する割合も高い。
- 2018年にエーザイと提携した米国メルク社の2022年度は、135.48億ドルの研究開発費を計上。
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収益構造:セグメント別の成績
部門 | 2010年/売上高 [売上比率(%)] |
2016年/売上高 [売上比率(%)] |
2022年/売上高 [売上比率(%)] |
---|---|---|---|
日本 | 3504億円 [45.6%] |
2911億円 [54.0%] |
2154億円 [28.3%] |
米州 | 3030億円 [39.4%] |
1172億円 [21.7%] |
2127億円 [28.6%] |
欧州・中東 アフリカ |
444億円 [5.8%] |
378億円 [7.0%] |
722億円 [9.7%] |
中国 | 313億円 [4.1%] |
493億円 [9.1%] |
1108億円 [14.9%] |
アジア ラテンアメリカ |
347億円 [6.4%] |
498億円 [6.7%] |
|
一般医薬品 | – | – | 235億円 [3.2%] |
その他事業 | 389億円 [5.1%] |
90億円 [1.7%] |
600億円 [8.1%] |
出所:エーザイ
- 日本国内は、薬価の引き下げやジェネリック移行により、収益が低下傾向。国内メーカーはどこも同じ現象。
- 最大市場のアメリカでも成績は不安定。代えが効かない薬を投入したいが、利権も含めてかなりハードルが高い。
- 中国市場は、2012年頃から後発品の販売を進めてきた事で、そこそこ高い売上高を確保。
- エーザイの一般医薬品(市販品)で有名なのがチョコラBB。ニキビや肌荒れに効くビタミンを配合するお薬で、長期的に愛用する人が多い事から売上に継続性がある。なお、チョコラBBグループの2022年度の売上高は141億円。
2022年度のグローバル医薬品の売上収益
- 抗がん剤「レンビマ」……2496億円
- 抗がん剤「ハラヴェン」……413億円
- 抗てんかん剤「フィコンパ」……371億円
- 不眠症治療剤「デエビゴ」……294億円
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世界初のアルツハイマー治療薬への期待と不安
2023年7月、エーザイと米国バイオジェンの共同開発のアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」がアメリカFDAに承認された。
レカネマブは、アルツハイマー病に対して認可された世界初で唯一の治療薬であり、これがエーザイの高い収益性をもたらすと期待される。アメリカでの投与対象者は、2026年までに10万人規模になる見通し。
しかし、米国イーライリリーが開発するアルツハイマー病治療薬「ドナネマブ」も承認される見通しで、エーザイ開発のレカネマブと競合する事になり、想定したような収益が見込めないかもしれない。
レカネマブの不安材料
- アルツハイマー病は、まだ不明な事が多いが、脳内に「アミロイドβ」というたんぱく質が異常に蓄積することが大きな原因とされる。
- エーザイ/バイオジェン共同開発の「レカネマブ」は「アミロイドβ」が形成される前の「物質」を抑制するのに対し、イーライリリー開発の「ドナネマブ」は原因物質「アミロイドβ」そのものを除去する(直接作用)。
- 治験結果ではイーライリリーの「ドナネマブ」のほうが若干良い結果が出ているとされる。(まだ結論は難しい)
- レカネマブの副作用として、まれに脳内出血を起こす可能性があるとされる。そのため、MRI検査(脳検査)のもとでの治療が推奨される。
- イーライリリーの「ドナネマブ」の副作用は、脳の血管周辺に液体が溜まることによる頭痛やめまい、視覚障害など。
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