NTT(日本電信電話)の連結決算:通年の売上推移
年度 | 売上高・収益 | 営業利益 [営業利益率(%)] | 純利益・最終損益 [純利益率(%)] |
---|---|---|---|
1985年 | 5兆914億円 (電電公社から民営化) | 7577億円 [14.9%] | 1857億円 [3.6%] |
1986年 | 5兆3536億円 | 8045億円 [15.0%] | 1927億円 [3.6%] |
1987年 | 5兆6620億円 (2月 東証一部上場) (携帯電話事業開始) | 9145億円 [16.2%] | 2672億円 [4.7%] |
1988年 | 5兆8419億円 (ISDN提供開始) | 8154億円 [14.0%] | 2636億円 [4.5%] |
1989年 | 6兆224億円 | 8000億円 [13.3%] | 2279億円 [3.8%] |
1990年 | 6兆2516億円 | 7099億円 [11.4%] | 2210億円 [3.5%] |
1991年 | 6兆3984億円 | 6451億円 [10.1%] | 2262億円 [3.5%] |
1992年 | 6兆5040億円 (携帯事業を分離独立) | 5101億円 [7.8%] | 1533億円 [2.4%] |
1993年 | 6兆6870億円 | 3901億円 [5.8%] | 834億円 [1.2%] |
1994年 | 7兆438億円 | 3902億円 [5.5%] | 854億円 [1.2%] |
1995年 | 7兆9086億円 | 6962億円 [8.8%] | 2736億円 [3.5%] |
1996年 | 8兆8218億円 | 7695億円 [8.7%] | 2515億円 [2.9%] |
1997年 | 9兆4500億円 | 8720億円 [9.2%] | 2145億円 [2.3%] |
1998年 | 9兆4635億円 (10月 傘下のNTTドコモ株式上場) | 7114億円 [7.5%] | 5544億円 [5.9%] |
1999年 | 10兆187億円 | 8238億円 [8.2%] | 2990億円 [3.0%] |
2000年 | 10兆8368億円 (12月 フレッツADSL提供開始) | 8348億円 [7.7%] | 5338億円 [4.9%] |
2001年 | 11兆6816億円 (光ファイバーBフレッツ提供開始) | 615億円 [0.5%] | -8122億円 [-7.0%] |
2002年 | 10兆9231億円 | 1兆3636億円 [12.5%] | 2334億円 [2.1%] |
2003年 | 11兆955億円 | 1兆5603億円 [14.1%] | 6439億円 [5.8%] |
2004年 | 10兆8059億円 | 1兆2109億円 [11.2%] | 7102億円 [6.6%] |
2005年 | 10兆7411億円 | 1兆1907億円 [11.1%] | 4987億円 [4.6%] |
2006年 | 10兆7606億円 | 1兆1070億円 [10.3%] | 4814億円 [4.5%] |
2007年 | 10兆6809億円 | 1兆3046億円 [12.2%] | 6352億円 [5.9%] |
2008年 | 10兆4163億円 | 1兆1098億円 [10.7%] | 5387億円 [5.2%] |
2009年 | 10兆1814億円 | 1兆1177億円 [11.0%] | 4923億円 [4.8%] |
2010年 | 10兆3050億円 | 1兆2149億円 [11.8%] | 5096億円 [4.9%] |
2011年 | 10兆5074億円 | 1兆2230億円 [11.6%] | 4677億円 [4.5%] |
2012年 | 10兆7007億円 | 1兆2020億円 [11.2%] | 5219億円 [4.9%] |
2013年 | 10兆9252億円 | 1兆2137億円 [11.1%] | 5855億円 [5.4%] |
2014年 | 11兆953億円 | 1兆846億円 [9.8%] | 5181億円 [4.7%] |
2015年 | 11兆5410億円 | 1兆3481億円 [11.7%] | 7377億円 [6.4%] |
2016年 | 11兆3910億円 | 1兆5398億円 [13.5%] | 8001億円 [7.0%] |
2017年 | 11兆7996億円 | 1兆6428億円 [13.9%] | 9097億円 [7.7%] |
2018年 | 11兆8798億円 | 1兆6938億円 [14.3%] | 8546億円 [7.2%] |
2019年 | 11兆8994億円 (IOWN構想を発表) | 1兆5622億円 [13.1%] | 8553億円 [7.2%] |
2020年 | 11兆9440億円 (9月 ドコモの完全子会社化を発表) | 1兆6714億円 [14.0%] | 9162億円 [7.7%] |
2021年 | 12兆1564億円 (3月 低料金プランahamo開始) | 1兆7686億円 [14.5%] | 1兆1811億円 [9.7%] |
2022年 | 13兆1362億円 | 1兆8290億円 [13.9%] | 1兆2131億円 [9.2%] |
2023年 | 13兆3745億円 | 1兆9229億円 [14.4%] | 1兆2795億円 [9.6%] |
平均利益率
会社の動向
- 1985年、日本電信電話公社から民営化。1987年に日本電信電話(NTT)は東京証券取引所に上場。日本経済が絶好調だった時期であり、当時はNTTが株式時価総額で世界トップだった。
- NTTが携帯電話事業を開始したのが1987年。なお、ポケットベルサービスを開始したのが1968年、自動車電話サービスを開始したのが1979年。
- 1992年、政府措置による競争を促す目的で携帯電話事業を分離独立。NTTドコモ誕生。
- 2001年の最終損益(-8122億円)の赤字は、ITバブル崩壊の影響が大きな要因。
- 2020年9月、菅政権による携帯電話値下げ要請をきっかけとして傘下のNTTドコモを100%子会社化へ。発表当時は株価が急落したが、最終的にジワジワと上昇し、2023年9月には時価総額16兆円台へ。日本企業ではトヨタに次ぐ2位級の時価総額。
- 1999年に売上高10兆円を突破して以降、国内インフラに注力した事で海外売上が遅れていたが、今後は高い飛躍を決意。IOWN構想の実現に挑む。
- 携帯事業(docomo)の業績推移
- NTTドコモ
NTTの財政・経営状況
年度 | 総資産 [現金・手元資金] |
負債総額 [有利子負債] |
自己資本・純資産 [自己資本比率(%)] |
---|---|---|---|
2005年 | 18兆8862億円 [1兆4108億円] |
12兆1067億円 [5兆1909億円] |
6兆7795億円 [35.9%] |
2010年 | 19兆6656億円 [1兆4352億円] |
11兆6449億円 [4兆5342億円] |
8兆207億円 [40.8%] |
2015年 | 21兆359億円 [1兆883億円] |
9兆7958億円 [4兆1526億円] |
11兆2401億円 [53.4%] |
2020年 | 22兆9655億円 [9357億円] |
14兆7625億円 [7兆6243億円] |
8兆2030億円 [35.7%] |
2021年 | 23兆8622億円 [8346億円] |
14兆8441億円 [7兆3643億円] |
9兆181億円 [37.8%] |
2022年 | 25兆3089億円 [7939億円] |
15兆9583億円 [8兆2305億円] |
9兆3506億円 [36.9%] |
2023年 | 29兆6042億円 [9828億円] |
18兆7111億円 [10兆7140億円] |
10兆8930億円 [36.8%] |
- 2022年度時点のNTTの有利子負債は巨額。2020年にドコモの完全子会社化に向けてTOBに踏み切った事で有利子負債が急増。しかし、業態的に極端な財務悪化の心配はない。
連結社員数と研究開発投資について
年度 | 従業員数(連結) | 平均年収 | 設備投資費 | 研究開発費 |
---|---|---|---|---|
2000年 | 21万5231人 | – | – | – |
2005年 | 19万9113人 | 862万円 | 2兆1919億円 | 1352億円 |
2010年 | 21万9343人 | 871万円 | 1兆8701億円 | 1273億円 |
2015年 | 24万1448人 | 889万円 | 1兆6872億円 | 1057億円 |
2020年 | 32万4667人 | 931万円 | 1兆7283億円 | 1043億円 |
2022年 | 33万8651人 | 971万円 | 1兆8624億円 | 2528億円 |
- 近年の研究開発費の増加は、5G技術関連やIOWN(光技術)の開発コストによるものが大きい。
2022年度の財務状況を競合と比較
年度 | 総資産 [現金・手元資金] |
負債総額 [有利子負債] |
自己資本・純資産 [自己資本比率(%)] |
---|---|---|---|
NTT | 25兆3089億円 [7939億円] |
15兆9583億円 [8兆2305億円] |
9兆3506億円 [36.9%] |
KDDI | 11兆9176億円 [4803億円] |
6兆2528億円 [1兆6514億円] |
5兆6648億円 [47.5%] |
ソフトバンク | 43兆9364億円 [6兆9252億円] |
33兆2872億円 [19兆4782億円] |
10兆6492億円 [24.2%] |
- ソフトバンクは借金だらけとはいえ、総資産規模でNTTを遥かに上回っている。「NTTの成長が止まっている」と言われるのは、急成長するソフトバンクの影響もあるはず。
- 3社のうち、KDDIが最も安定的な財務力をもつ。そして、財務規律を守って安定的に成長してきた経緯がある。孫正義の考え方とは真逆の存在。
2022年度の従業員数、平均年収、研究開発投資額を競合と比較
企業 | 従業員数(連結) | 平均年収 | 設備投資費 | 研究開発費 |
---|---|---|---|---|
NTT | 33万8651人 | 971万円 | 1兆8624億円 | 2528億円 |
KDDI | 4万9659人 | 943万円 | 6275億円 | 263億円 |
ソフトバンク | 6万3339人 | 1339万円 | 7991億円 | 3194億円 |
- NTTの連結従業員や設備投資費用が競合よりも圧倒的に多い理由は、全国に整備する固定電話や光回線(光ファイバー網)への対応があるため。
- KDDIは、研究開発費が少ない中で衛星通信に注力。
- ソフトバンクは研究開発費が多いが、このほとんどは傘下のARM(半導体設計メーカー)によるもの。そのARMは2023年9月にナスダック上場。
NTTの主要グループ会社
- NTT東日本/NTT西日本……固定電話、ブロードバンドサービス(フレッツ光など)。NTTの完全子会社。
- NTTドコモ……携帯電話サービス事業。NTTの完全子会社。
- NTTコミュニケーションズ……長距離・国際通信事業。NTTドコモの完全子会社。
- NTTデータグループ……システム/ソフトウェア開発、ITコンサル、クラウド。主要株主はNTT(57.7%)。上場企業。
- NTTコムウェア……NTTグループ内事業のシステム開発。主要株主はNTTドコモ(66.6%)、NTT(33.4%)
NTT docomoの完全子会社化
2020年9月にNTTはドコモの完全子会社化を発表。この流れは以下。
#22000年、第二電電、ケイディディ、日本移動通信が合併し、その後「KDDI」誕生。そして携帯電話事業のセルラーグループ各社が合併して「au」も誕生。
#32006年、ソフトバンクがボーダフォン買収。携帯キャリア市場が、NTTドコモ、au、ソフトバンクの大手3社寡占となる。
#42008年、日本国内でソフトバンクからiPhoneが独占販売。2011年にauもiPhoneを販売開始。これにより、ソフトバンクやauの携帯電話加入者数が急増し、ドコモと比較してそれなりのシェアを確保する事になっていく。なお、ドコモは2013年からiPhone販売開始。
#52010年代以降、au/KDDIやソフトバンクの財務も安定するようになる。ソフトバンク(孫正義)は、狂気的な投資に熱を入れ始めるようにまでに至る。
#62020年9月、菅政権により携帯事業者に対し、携帯電話料金の値下げを要請。それがきっかけとなり、NTT側も携帯料金値下げを受け入れる代わりとして日本政府にドコモの完全子会社化を要求。日本政府は、auやSBのシェアが強くなった事や、NTTが世界で飛躍してもらう必要があった事などの理由により了承。
IOWNでゲームチェンジャーに
IOWN(アイオン)とは、NTTが主導する情報通信の全てを光技術にしたい構想。
例えば、半導体ならば今までは電気信号を通じて「0」と「1」のデジタルデータを処理していたが、その電気を光で処理しようとするのがIOWNの構想。光を利用するため、電気代を大幅に抑える事ができる。
2019年にNTTの研究所が世界初となる「光トランジスタ」を実現した事で、道筋が見えてきた。
世界中に存在するデータセンターの消費電力は、世界の電力消費量の2~4%ほどあるとされ、原子力発電でいえば15基分以上(2022年度)。また、個人用パソコンやスマホなどにおいても世界中で消費される電力量は膨大。
そのデータセンターやパソコン、スマホなどのコンピューティングは電気を大量に消費するため悩ましい問題となっているが、そのコンピューティングの全てを電気ではなく光技術で処理するというのがNTTが進めるIOWN。
つまり、NTTは業界がひっくり返るような野望をもつ。まだまだ時間がかかるが、実現できれば世界の電力使用量を大幅に削減する事ができる。今後に期待。