ソニーセミコンダクタソリューションズの通年売上推移
年度 | 売上高・収益 [イメージセンサー売上高] | 営業利益 [営業利益率(%)] | 外部顧客への売上高 [全体比(%)] |
---|---|---|---|
1999年 | (9月 京セラからカメラ付き携帯電話世界初登場) | – | – |
2000年 | 4620億円 | 547億円 [11.8%] | 2377億円 [51.5%] |
2001年 | 3385億円 | -126億円 [-3.7%] | 1823億円 [53.9%] |
2002年 | 3760億円 | 63億円 [1.7%] | 2047億円 [54.4%] |
2003年 | 4904億円 | 198億円 [4.0%] | 2532億円 [51.6%] |
2004年 | 5805億円 | -99億円 [-1.7%] | 2463億円 [42.4%] |
2005年 | 6253億円 | -532億円 [-8.5%] | 2408億円 [38.5%] |
2006年 | 7800億円 | – | 2057億円 [26.4%] |
2007年 | 8500億円 (6月 米国で世界初のスマホiPhone登場) | – | 2378億円 [28.0%] |
2008年 | 5800億円 | – | 2050億円 [35.3%] |
2009年 | 4900億円 (裏面照射型CMOSイメージセンサー商品化) | – | 2997億円 [61.2%] |
2010年 | 5000億円 | – | 3583億円 [71.7%] |
2011年 | 4800億円 | – | 3758億円 [78.3%] |
2012年 | 4800億円 [2800億円] (積層型CMOSイメージセンサー発表) | – | 3019億円 [62.9%] |
2013年 | 4700億円 [3200億円] | – | 3368億円 [71.7%] |
2014年 | 6100億円 [4500億円] | – | 4966億円 [81.4%] |
2015年 | 7391億円 [4776億円] | 145億円 [1.9%] | 5994億円 [81.1%] |
2016年 | 7731億円 [5486億円] (カメラ複数化スマホiPhone7Plus登場) | -78億円 [-1.0%] | 6597億円 [85.3%] |
2017年 | 8500億円 [6494億円] | 1640億円 [19.2%] | 7268億円 [85.5%] |
2018年 | 8793億円 [7114億円] | 1439億円 [16.3%] | 7706億円 [87.6%] |
2019年 | 1兆706億円 [9302億円] | 2356億円 [22.0%] | 9852億円 [92.0%] |
2020年 | 1兆125億円 [8722億円] (8月 米国による中国ファーウェイへの半導体輸出規制発表) | 1459億円 [14.4%] | 9378億円 [92.6%] |
2021年 | 1兆764億円 [9526億円] | 1556億円 [14.5%] | 9922億円 [92.2%] |
2022年 | 1兆4022億円 [1兆2563億円] | 2122億円 [15.1%] | 1兆3014億円 [92.8%] |
2023年 | 1兆6027億円 | 1935億円 [12.1%] | 1兆5039億円 [93.8%] |
平均利益率
会社の動向
- ソニーセミコンダクタソリューションズは、半導体を中核としたソニーグループの完全子会社。CMOSイメージセンサー、各種LSI、レーザー、ディスプレイデバイスなどを手掛ける。
- センサーチップの設計から製造、カメラモジュールの開発まで一貫して手掛ける。
- 世界で初めて携帯電話にカメラが搭載されたのが1999年9月発売の京セラ製端末から。モバイル向けCMOSイメージセンサーの売上は、そこから始まっている。
- 2007年6月にアメリカで発売された世界初のスマートフォン「iPhone」の登場により、モバイル向けイメージセンサーの売上もスマホ向けが中心となっていく。
- 2016年発売の「iPhone7 Plus」から、スマートフォンのカメラが複数搭載されるようになり、イメージセンサーの需要も拡大していく。
- 2016年度は営業利益が赤字となっているが、これは熊本地震(2016年4月)による被害で工場停止した事が要因。工場内部や製造装置も被害を受け、完全復旧は約5か月後。
- 2022年度の売上高1兆4022億円のうち、CMOSイメージセンサーは1兆2563億円で、売上比率は89.6%。そのうち、スマートフォンなどのモバイル向けが1兆304億円で、イメージセンサーの売上のうち、82.0%がモバイル向けという事になる。
- ソニーが得意とするデジタルカメラは、スマホの登場で販売減少に向かう事になったが、そのスマホ用のイメージセンサーの売上がカバーした形となった。
- また、ソニーはスマホ(Xperia)事業においても、スマホで利益を出す事よりも、大手スマホメーカーのイメージセンサーサプライヤーとなって利益を出す事を優先。
設備投資費と研究開発費
年度 | 設備投資費 | 研究開発費 |
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2012年-2014年 | 1440億円 | 2400億円 |
2015年-2017年 | 3576億円 | 3450億円 |
2018年-2020年 | 5746億円 | 4500億円 |
2021年-2023年 | 9300億円 | 6400億円 |
2024年-2026年 | 6500億円(見通し) | 8000億円超(見通し) |
- 2022年度は3500億円を投資。主に長崎工場向け。
- 2024~2026年の設備投資額は2021年~2023年比で70%レベルとされる。設備投資の増額を抑えても今までの設備で戦えると強気。
- 設備投資は抑えられるが、研究開発費は削減しないとの事。
イメージセンサー世界シェア
メーカー | 2014年 | 2018年 | 2022年 |
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ソニー | 40.2% | 50.1% | 42% |
サムスン | 15.2% | 20.5% | 19% |
オムニビジョン | 15.7% | 11.5% | 11% |
オンセミ | 5.2% | 5.6% | 6% |
- スマホ/タブレット向けに限ったイメージセンサーの市場シェアは、ソニー(45%)、サムスン(26%)、オムニビジョン(11%)。(2021年度、出所:ストラテジー・アナリティクス)
- 2018年と比較して2022年は、ややSONYのシェアが低下しているが、2020年5月と8月のアメリカ政府によるファーウェイ制裁の影響が大きい。
- 2022年夏頃からインフレ不況によりスマホ市況が悪化したが、それでもソニーは大きな減産はしなかった。一方、サムスンは通常は月産3~4万枚ウエハーほどの生産量から月産数千枚ウエハーほどに大きく減産したと報道されている。
- 2022年度のソニーのイメージセンサー事業は増収増益。2021年度と比較して売上高が30.2%増加、利益率も14.5%→15.1%へ上昇。一方、サムスンの半導体部門は業績悪化で減収減益。メモリ部門は大赤字。
- ソニーは、このままの勢いでCMOSイメージセンサー世界シェア60%を目指す意向。大きな目標を掲げるだけの生産能力、技術や知的財産などの裏付けがある。
- なお、ソニーはスマートフォン(Xperia)の販売台数よりも、世界のスマホメーカに対してイメージセンサーのサプライヤーとして戦ったほうがトータルでの利益が良いと考えている模様。
市況悪化の影響を受けにくい
ソニーのイメージセンサーの売上は、約8割はスマホなどのモバイル向けで、顧客はアップル、シャオミ、OPPO、VIVOなどの大手スマホメーカー。
それらの顧客に対しては汎用的な製品ではなく、顧客のモバイル製品に合わせた特定のイメージセンサーを供給している。つまり、代替品が無い存在。そのため、ソニーの半導体部門は景気の変動によって極端に業績を落とすリスクが低い。これがサムスンと違うところ。
自動車向けイメージセンサーのシェア
順位 | 企業 | 国 | 市場シェア(%) |
---|---|---|---|
1位 | オンセミコンダクター | アメリカ | 40% |
2位 | オムニビジョン | 中国/アメリカ | 28% |
3位 | ソニー | 日本 | 15% |
4位 | サムスン | 韓国 | 4% |
- 車載向けイメージセンサーの市場シェアは22億ドル(2022年度)。
- ソニーの車載向けイメージセンサーは後発だったが、技術的な優位性がある事から年々シェアは上昇。
- 特にクルマが自動運転化すると、イメージセンサーが多く必要になってくる。ソニーはその分野の市場拡大を狙う。
- 対象物までの距離や形状を測定する車載LiDARの部品量産も2023年に開始。2025年には、グローバル自動車メーカーの上位20社のうち、75%に納品できる見込みとの事。
- 自動運転技術でホンダと提携。ソニーのイメージング・センシングの強みを自動車分野につなげたい。
ソニーの「イメージセンサー」開発の歴史
1970年ソニーはCCDという撮像素子に着目し、イメージセンサーの開発に着手。なお、インテルの設立が1968年で、DRAMを発表したのが1970年なので、ソニーはインテルと同時期に事業が始まっている。
1980年CCDイメージセンサー「ICX008」を商品化。このセンサーは、全日空のジャンボ旅客機内の離着陸の様子を機内に映し出すカメラに搭載された。
1985年CCDイメージセンサーを搭載した初の家庭用ビデオカメラ「CCD-V8」発売。しかし、価格が高い問題があった。
1989年手頃価格のハンディカム8ミリビデオカメラ「CCD-TR55」が大ヒット。ソニーのイメージセンサー事業が波に乗るように。また、同時に高速伝送、低消費電力が実現できる「CMOSイメージセンサー」の開発も進める。
1999年京セラから世界初のカメラ搭載ケータイが発売。ノイズの問題がある表面照射型CMOSイメージセンサーの搭載だったため画質が悪かった。
2009年表面照射型CMOSイメージセンサーの欠点を改善した「裏面照射型CMOSイメージセンサー」を世界で初めて商品化。従来よりも2倍の高感度、低ノイズを実現。そして、引き続きモバイル向けの開発を進める。
2012年裏面照射型CMOSイメージセンサーと信号処理ロジックチップを重ねた「積層型CMOSイメージセンサー」を発表。高感度/低ノイズで高速処理が実現し、これが現在のスマートフォンやタブレット端末で主役となる。
2017年画素チップ、信仰処理回路チップにDRAMを加えた3層構造の積層型CMOSイメージセンターを商品化。スマホでもスーパースローカメラの実現。
2020年AI処理機能を搭載した世界初のインテリジェントビジョンセンサー「IMX500」を発表。積層型CMOSイメージセンサーの論理回路部にAIエンジンを組み込み、撮った画像をすぐにAIが画像処理を行う事が可能。
2021年世界初「2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサー技術」を開発。それまで同一基板上で形成していたフォトダイオードと画素トランジスタの層を、ソニーが持つ積層技術を活かして別々の基板に形成。画素サイズが小さくても撮像特性を向上させることが可能。高価格帯スマホ向けに2023年度から出荷開始。
豊富な知的財産をもつ
ソニーは、カメラ事業とイメージセンサー開発の歴史が長いだけあって、知的財産(特許)関連では突出した強みをもつ。半導体工場も多く保有し、競合と比較して生産能力も突出して高い。
成長分野のモビリティ分野や、セキュリティ(監視カメラ)などにおいて、イメージセンサーは爆発的に需要が高まるため、ソニーの半導体部門は極端に業績不振に陥る事はない。
工場拠点と生産品
- 鹿児島工場……アナログLSIなどを生産。ソニーは九州にたくさんの工場をもつが、1973年に鹿児島県霧島市の設立された「鹿児島テクノロジーセンター」が九州初工場。
- 熊本工場……CMOSイメージセンサー、CCDイメージセンサー、OLEDマイクロディスプレイなどを生産。TSMCとの合弁工場(JASM)も熊本。
- 長崎工場……CMOSイメージセンサーを生産。2008年にPS3向け半導体製造工場だった長崎工場と設備を東芝との合弁に移管したが、2011年に合弁の長崎工場をソニーが530億円で買い戻し。
- 大分工場……CMOSイメージセンサーを生産。2015年に東芝が大分工場の画像センサー事業から撤退し、その工場と製造設備の一部をソニーが取得。
- 山形工場……CMOSイメージセンサを生産。2014年にルネサスから取得した山形県鶴岡工場。
- 宮城工場……生産品は半導体レーザーなど。