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第一三共

第一三共の業績推移:売上高・営業利益率・純利益・財務状況

第一三共の連結決算:通年の売上推移

第一三共の業績推移:売上高・営業利益・純利益・利益率の推移
年度 売上高・収益 営業利益
[営業利益率(%)]
純利益・最終損益
[純利益率(%)]
2005年 9259億円
(9月 第一製薬と三共の統合で発足)
1547億円
[16.7%]
877億円
[9.5%]
2006年 9295億円
(4月 アステラスの一般医薬品会社ゼファーマ買収)
1357億円
[14.6%]
785億円
[8.4%]
2007年 8801億円 1568億円
[17.8%]
977億円
[11.1%]
2008年 8421億円 889億円
[10.6%]
-2155億円
[-25.6%]
2009年 9521億円 955億円
[10.0%]
419億円
[4.4%]
2010年 9674億円 1221億円
[12.6%]
701億円
[7.2%]
2011年 9387億円 982億円
[10.5%]
104億円
[1.1%]
2012年 9979億円 1005億円
[10.1%]
666億円
[6.7%]
2013年 8991億円 1129億円
[12.6%]
609億円
[6.8%]
2014年 9194億円 744億円
[8.1%]
3221億円
[35.0%]
2015年 9864億円 1304億円
[13.2%]
823億円
[8.3%]
2016年 9551億円 889億円
[9.3%]
535億円
[5.6%]
2017年 9602億円 763億円
[7.9%]
603億円
[6.3%]
2018年 9297億円 837億円
[9.0%]
934億円
[10.0%]
2019年 9818億円 1388億円
[14.1%]
1291億円
[13.1%]
2020年 9625億円 638億円
[6.6%]
760億円
[7.9%]
2021年 1兆449億円 730億円
[7.0%]
670億円
[6.4%]
2022年 1兆2785億円 1206億円
[9.4%]
1092億円
[8.5%]
2023年 1兆6016億円 2115億円
[13.2%]
2007億円
[12.5%]
出所:第一三共
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平均利益率

第一三共の2005年から2022年までの営業利益率の平均が11.1%。
比較として、武田薬品工業の2004年から2022年までの営業利益率の平均が16.7%、アステラスの2005年から2022年までの営業利益率の平均が16.8%。

会社の動向

  • 2005年9月、第一製薬と三共が経営統合して「第一三共」発足。世界戦略に向けた判断。
  • 第一三共は歴史的に循環器系に強かったが、近年は癌治療に注力。新しいタイプの抗がん剤「抗体薬物複合体(ADC)」に強み。ADCは抗体に薬物を結合させたバイオ医薬品の一種。一般的な抗がん剤のように、正常な細胞までダメージを及ぼす悪影響が少ない。
  • 第一三共の主力製品である乳がん治療薬「エンハーツ」もADCの一つで、その成功により企業価値が高まった。そして、エンハーツは乳がん治療以外にも使用されていく見通し。
  • 抗がん剤、疼痛(とうつう)、中枢神経系疾患、心不全、腎障害、希少疾患などを次世代領域と位置付け、グローバル体制で研究開発を進める。
  • 2023年5月、ジェネリック医薬品を手掛ける子会社の「第一三共エスファ」を調剤薬局大手クオールホールディングスに売却を発表。競争の激化、原材料/生産コスト上昇など、利益の確保が難しい事が理由。
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第一三共の財政・経営状況

第一三共の財務状況の推移:総資産・純資産・自己資本比率の推移
年度 総資産
[現金・手元資金]
負債総額
[有利子負債]
自己資本・純資産
[自己資本比率(%)]
2005年 1兆5961億円
[4010億円]
3586億円
[169億円]
1兆2375億円
[77.5%]
2010年 1兆4802億円
[3024億円]
5925億円
[2994億円]
8877億円
[57.4%]
2015年 1兆9005億円
[2222億円]
6670億円
[2010億円]
1兆2335億円
[64.9%]
2020年 2兆852億円
[3805億円]
8131億円
[1838億円]
1兆2721億円
[61.0%]
2021年 2兆2214億円
[6625億円]
8705億円
[1635億円]
1兆3509億円
[60.8%]
2022年 2兆5089億円
[4419億円]
1兆630億円
[1431億円]
1兆4459億円
[57.6%]
出所:第一三共
  • 有利子負債が少なく、現金/現金同等物も十分に保有。財務は安定的。
  • 第一三共の2023年11月時点の株式時価総額は、約7兆7600億円。比較として、国内売上トップの武田薬品の時価総額が6兆6700億円。第一三共の新タイプの抗がん剤への期待が株価押し上げの大きな要因。

連結社員数と研究開発投資について

第一三共の連結従業員数、平均年収、設備投資費、研究開発費の推移
年度 従業員数(連結) 平均年収 設備投資費 研究開発費
2005年 18434人 302億円 1587億円
2010年 30488人 975万円 373億円 1943億円
2015年 15249人 1092万円 233億円 2087億円
2020年 16033人 1117万円 401億円 2274億円
2022年 17435人 1119万円 715億円 3416億円
出所:第一三共
  • 2022年度の第一三共の連結従業員数は17435人。比較として、武田薬品は49095人、アステラスは14484人、エーザイは11076人、塩野義製薬が5680人。大塚HDが33482人。(大塚HDは食品関連事業も含む)
  • 2022年度の研究開発費は3416億円。国内では武田薬品(6333億円)に次いで2番目に多い。
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国内/外国への収益割合

第一三共の海外売上比率:国別/地域別の売上比率の推移(2005年以降)
年度 日本 北米 欧州 その他
2005年 66.8% 19.7% 10.6% 2.9%
2010年 49.4% 27.1% 10.8% 12.8%
2015年 56.3% 28.4% 8.0% 7.3%
2020年 58.3% 19.9% 11.8% 10.0%
2023年 37.5% 31.2% 19.4% 12.0%
出所:第一三共
  • 日本国内向けの売上高は停滞傾向。薬価の引き下げ、後発品(ジェネリック医薬品)への移行などが要因。
  • 北米やヨーロッパ向けが緩やか成長。アメリカは肥満率が高く、比例して生活習慣病の発症も高い事から医薬品の使用量が多い。

収益構造:セグメント別の成績

第一三共の売上内訳:部門別の業績推移(2015年以降)
年度 医療用医薬品
[売上比(%)]
ヘルスケア
[売上比(%)]
その他
[売上比(%)
2015年 9303億円
[94.3%]
533億円
[5.4%]
27億円
[0.3%]
2020年 8929億円
[92.8%]
674億円
[7.0%]
21億円
[0.2%]
2023年 1兆5234億円
[95.1%]
758億円
[4.7%]
23億円
[0.2%]
出所:第一三共
  • 医療用医薬品……主力の乳がん治療剤「エンハーツ」、抗凝固剤「リクシアナ」、神経障害性疼痛治療剤「タリージェ」などの売り上げが中核。
  • ヘルスケア……市販医薬品/スキンケア製品などの第一三共ヘルスケアは、有名ブランドを多く保有するが、売上高規模でいえば1割未満。
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市販医薬品は有名な商品たくさん

第一三共は、歴史的に市販向け一般医薬品に注力してきた歴史がある。さらに2006年4月にアステラス傘下の一般用医薬品会社「ゼファーマ」を買収した事もあり、知名度のある市販医薬品を多数保有。

  • ルルA錠……解熱鎮痛成分「アセトアミノフェン」と、抗炎症成分「トラネキサム酸」を主成分とした総合風邪薬。
  • プレコール……「イソプロピルアンチピリン」「アセトアミノフェン」の2つの解熱鎮痛成分を主成分とした風邪薬。
  • カコナール……イブプロフェンを主成分とした総合風邪薬や、漢方主体のひきはじめの風邪薬など。
  • ガスター10……「ファモチジン」が主成分のH2ブロッカー制酸剤。胃酸過多を抑制。
  • 第一三共胃腸薬……胃腸薬。消化不良、胃もたれ、健胃作用。
  • タカヂア錠……「タカヂアスターゼ」を主成分とした消化剤。
  • ロキソニン……「ロキソプロフェン」が主成分の鎮痛剤。頭痛、腰痛、生理痛などに即効性。

スキンケア系

  • トランシーノ……シミ、そばかす、肝斑(かんぱん:女性特有のシミ)向けの美白用製品。外用や内服薬。
  • システィナC……L-システイン剤。シミ、そばかす、にきび跡の色素沈着、美白効果。
  • エバユース……ビタミン剤。主にニキビや肌荒れ向け。
  • クロマイN軟膏……「クロラムフェニコール」「フラジオマイシン硫酸塩」の2つの抗生物質と、抗真菌剤「ナイスタチン」が主成分。おでき、毛嚢炎、吹き出物、ニキビなどの外用治療薬。
  • ピロエース……抗真菌成分「ラノコナゾール」が主成分。主に水虫やマラセチア毛包炎などに効く。
  • マキロン……殺菌成分「ベンゼトニウム塩化物」を主成分とした傷口への消毒薬。皮膚修復成分「アラントイン」や抗ヒスタミン成分「クロルフェニラミンマレイン酸塩」も配合。

製品名はTVコマーシャルでも活発に宣伝している事から、一度は聞いた事がある商品名も多いはず。なお、近年は美白製品の「トランシーノ」の売上成長が高いとされる。

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国内医薬品メーカーの研究開発費

第一三共と国内製薬メーカーの研究開発費の推移(2010年以降)
企業 2010年/研究開発費
[売上比率(%)]
2015年/研究開発費
[売上比率(%)]
2022年/研究開発費
[売上比率(%)]
第一三共 1943億円
[20.1%]
2087億円
[21.2%]
3416億円
[26.7%]
武田薬品 2889億円
[20.4%]
3459億円
[19.1%]
6333億円
[15.7%]
アステラス 2173億円
[22.8%]
2257億円
[16.4%]
2761億円
[18.2%]
大塚HD 1645億円
[15.1%]
2010億円
[14.1%]
2752億円
[15.8%]
エーザイ 1450億円
[18.9%]
1223億円
[22.3%]
1729億円
[23.2%]
中外製薬 547億円
[14.4%]
819億円
[16.4%]
1437億円
[11.4%]
塩野義製薬 509億円
[18.0%]
497億円
[16.0%]
1023億円
[24.0%]
ファイザー
(アメリカ)
94.13億ドル
[13.9%]
76.90億ドル
[15.7%]
114.30億ドル
[11.4%]
ロシュ
(スイス)
90.50億スイスフラン
[19.1%]
93.32億スイスフラン
[19.4%]
140.53億スイスフラン
[22.2%]
メルク
(アメリカ)
111.11億ドル
[24.2%]
67.04億ドル
[17.0%]
135.48億ドル
[22.9%]
ノバルティス
(スイス)
90.70億ドル
[17.6%]
89.35億ドル
[18.1%]
99.96億ドル
[19.8%]
アッヴィ
(アメリカ)
24.95億ドル
[16.0%]
42.85億ドル
[18.7%]
65.10億ドル
[11.2%]
イーライリリー
(アメリカ)
48.84億ドル
[21.2%]
47.96億ドル
[24.0%]
71.90億ドル
[25.2%]
出所:各メーカーの決算報告書、または有価証券報告書。
  • 研究開発費の国内トップはタケダ薬品。2018年にシャイアー(アイルランド)を買収し、業績規模が拡大した事で日本の製薬メーカーでダントツトップへ。
  • 第一三共も、注力するがん治療薬に向けて、売上高に対して高い割合(26.7%:2022年度)の研究開発予算をつぎ込んでいる。
  • 癌や泌尿器系に強いアステラスや、精神疾患向け医薬品に強みをもつ大塚製薬においても、高い研究開発費をもつ。
  • なお、ファイザー、ロシュ、ノバルティス、メルク、アッヴィなどのグローバルTOP5の製薬企業の研究開発費は1兆円単位。

国内製薬メーカーの平均年収の比較

第一三共と国内製薬会社の平均年収の比較推移(2010年以降)
企業 2010年 2015年 2020年 2022年
第一三共 975万円 1092万円 1117万円 1119万円
武田薬品 925万円 960万円 1077万円 1097万円
アステラス 1001万円 1069万円 1051万円 1061万円
エーザイ 1094万円 1093万円 1042万円 1050万円
大塚HD 1197万円 1116万円 992万円 1040万円
塩野義製薬 801万円 890万円 903万円 910万円
中外製薬 931万円 935万円 1100万円 1214万円
出所:各メーカーの有価証券報告書のデータ。
  • スイスのロシュ傘下の中外製薬が平均年収トップ。第一三共を含め、日本勢の平均年収に大きな差はなし。
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