連結決算:通年の売上推移
年度 | 売上高・収益 [自動車販売台数] | 営業利益 [営業利益率(%)] | 純利益・最終損益 [純利益率(%)] |
---|---|---|---|
2006年 | 565.94億ユーロ (7兆3572億円) [337万台] | 11.32億ユーロ (1471億円) [2.0%] | 1.83億ユーロ (237億円) [0.3%] |
2007年 | 586.76億ユーロ [342万台] | 17.52億ユーロ [3.0%] | 8.85億ユーロ [1.5%] |
2008年 | 543.56億ユーロ [326万台] | 5.50億ユーロ [1.0%] | -3.63億ユーロ [-0.7%] |
2009年 | 484.17億ユーロ [318万台] | -6.89億ユーロ [-1.4%] | -11.61億ユーロ [-2.4%] |
2010年 | 545.02億ユーロ [360万台] | 12.02億ユーロ [2.2%] | 8.62億ユーロ [1.6%] |
2011年 | 583.29億ユーロ [354万台] | 3.66億ユーロ [0.6%] | 4.30億ユーロ [0.7%] |
2012年 | 538.60億ユーロ [281万台] | -50.72億ユーロ [-9.4%] | -52.16億ユーロ [-9.7%] |
2013年 | 526.27億ユーロ [281万台] | -17.14億ユーロ [-3.3%] | -24.56億ユーロ [-4.7%] |
2014年 | 515.92億ユーロ [293万台] | 1.24億ユーロ [0.2%] | -5.55億ユーロ [-1.1%] |
2015年 | 546.76億ユーロ [297万台] | 19.76億ユーロ [3.6%] | 12.02億ユーロ [2.2%] |
2016年 | 540.30億ユーロ [314万台] | 26.11億ユーロ [4.8%] | 21.49億ユーロ [4.0%] |
2017年 | 652.10億ユーロ [363万台] | 30.87億ユーロ [4.7%] | 23.58億ユーロ [3.6%] |
2018年 | 740.27億ユーロ [388万台] | 44.00億ユーロ [5.9%] | 32.95億ユーロ [4.5%] |
2019年 | 747.31億ユーロ [348万台] | 46.68億ユーロ [6.4%] | 35.84億ユーロ [4.8%] |
2020年 | 607.34億ユーロ (7兆8954億円) [251万台] | 30.54億ユーロ (3970億円) [6.3%] | 20.22億ユーロ (2628億円) [4.2%] |
- グループPSAは、プジョー、シトロエン、DSオートモービルズ、オペル、ボクスホールなどのブランドをもつフランスの自動車メーカー。1976年にプジョーがシトロエンを買収し誕生。旧社名は「PSAプジョーシトロエングループ(PSA Peugeot Citroen)」
- 2008年や2009年の赤字は、アメリカ発の金融危機の影響。
- 2012年~2013年の赤字は、ギリシア危機などによるヨーロッパ事業の業績悪化と、リストラと再編費用を計上した事による。
財政・経営状況
年度 | 総資産 | 負債総額 | 自己資本・純資産 [自己資本比率(%)] |
---|---|---|---|
2020年 | 735.10億ユーロ (9兆5563億円) |
496.36億ユーロ (6兆4526億円) |
238.74億ユーロ (3兆1036億円) [32.5%] |
保有ブランド
- PEUGEOT(プジョー:フランス)
- CITROEN(シトロエン:フランス)
- DS Automobiles(DSオートモービルズ:フランス)
- OPEL(オペル:ドイツ)
- VAUXHALL(ボクスホール:イギリス:オペルの子会社)
プジョーとシトロエンは、日本国内で見かけることが少ないため、世界的にどれくらいの存在感をもつのかわかりにくいが、ヨーロッパでは日本でいうところのホンダや日産、マツダのようなポジション。
DSオートモビルズは、シトロエンから派生した高級車ブランド。オートモービル(automobile)とは「自動車」という意味。
ブランド別の売上数
ブランド | 2018年/販売台数 | 2019年/販売台数 | 2020年/販売台数 |
---|---|---|---|
プジョー | 174万台 | 145万台 | 111万台 |
シトロエン | 104万台 | 98万台 | 71万台 |
DSオートモービル | 5.3万台 | 6.1万台 | 4.3万台 |
その他 | 93万台 | 97万台 | 64万台 |
PSA合計 | 388万台 | 348万台 | 251万台 |
- 2020年度はコロナ問題があったとはいえ、販売台数の落ち込みは半端じゃない。
- シトロエンは年間71万台しか売れなかった。
販売地域
全体の50~60%がヨーロッパで販売。他にはアフリカや南米で販売台数が多い。アメリカや中国のような巨大市場で存在感を示せていないのが痛い。
シトロエンとプジョーは、以前はアメリカ・カナダに進出していたが、販売不振などを理由に1985年にシトロエン撤退、1991年にプジョー撤退。
しかし、2019年にプジョーブランドで再参入。どこまで販売台数を伸ばせるかは未知数。
PSAの欧州シェア
順位 | メーカー | 2018年 | 2019年 | 2020年 |
---|---|---|---|---|
1位 | VW | 23.9% | 24.5% | 25.4% |
2位 | PSA | 16.0% | 15.6% | 14.4% |
3位 | ルノー | 10.5% | 10.4% | 10.3% |
4位 | BMW | 6.6% | 6.6% | 7.0% |
5位 | 現代/起亜 | 6.7% | 6.7% | 6.9% |
6位 | M・ベンツ | 6.2% | 6.3% | 6.4% |
7位 | FCA | 6.5% | 6.0% | 5.9% |
8位 | トヨタ | 4.9% | 5.2% | 5.8% |
- プジョーとシトロエンは欧州市場シェア2位。販売においてはヨーロッパ依存が強いが、そのヨーロッパでもシェアを落としている。2018年シェア16.0%→2020年シェア14.4%。
- ステランティスとして経営統合するFCAにおいてもシェアを落としている。2018年シェア6.5%→2020年シェア5.9%。
- なお、欧州市場では韓国のヒョンデ/キアグループとトヨタがシェアを伸ばしている。トヨタは理解できるが、なぜ韓国勢が。現代起亜グループはデザイン重視の安いSUVが売れているらしい。
生産拠点
PSAの生産拠点は当然フランスが中心(6拠点)。他にはスペイン、ポルトガル、イタリア、スロバキア、チェコ、中国など。古い工場が多いため、業界では生産性が悪いとの評判。
工場リストラに踏み切るとストライキが起こったり、大株主であるフランス政府から介入を受けたりするため、いろいろ経営判断が難しい背景がある。
フランス政府が株を保有
フランスPSAグループも、同国のルノーと同じようにフランス政府が大株主。ルノーと同じように、フランスの雇用を守ること、フランスに投資することなどを要求される。
フランスは歴史的にドイツ勢(フォルクスワーゲン、メルセデスベンツ、BMWなど)の強力な自動車産業にのみこまれないように政府が働きかけてきた経緯がある。
イギリスやスペイン、イタリアなどと比較すると、フランスは力強く自動車産業が残っているが、それはフランス政府の力が影響しているのかもしれない。しかし、政府の関与が逆にプジョーやシトロエンのグローバル的な飛躍を阻んでいたりする。
株主構成
- プジョー創業家 13.68%
- フランス政府 13.68%
- 中国の東風汽車集団 13.68%(2014年3月に資本参加)
ステランティスとして船出
PSAグループは、イタリアのFCA(フィアット・クライスラー・オートモービル)と対等合併により経営統合し、2021年度からステランティス(Stellantis)としてスタートする。グループPSAという自動車会社は消滅。
合併する理由は、自動車産業は規模が大きいほうが経営メリットがあるため。(スケールメリット)
- 経営統合による開発費用の削減。
- 車体設計の共通化。
- 部品共通化と部品の大量調達によるコスト削減。
- 特にEVは規模が大きくなるほどバッテリーの調達コスト削減につながる。(車載電池は原価の4割と大きい)
PSAグループの年間生産台数200万台から300万台規模は、メルセデスベンツやBMWレベルの規模だが、その2社は高級車メーカーであり、PSAのような大衆車メーカーでいえば中途半端な規模となる。
トヨタやフォルクスワーゲンとの競争についていけなくなる。そこでFCA側がPSAに対等合併を持ちかけ経営統合へ。
しかし、統合したところで、PSAとFCAのどちらも低燃費技術(ハイブリッド技術など)が乏しく、EVではバッテリー内製化のための量産技術などもないため、爆発的な飛躍は難しい。
少なくとも、トヨタやフォルクスワーゲンのように年間1000万台レベルを販売するような自動車メーカーにはならないはず。
ゼネラルモーターズやフォードにおいても数量を追う経営から方向転換しているが、ステランティスにおいても数を追うような投資はしないと予想できる。