サムスン・ディスプレイの売上推移
年度 | 売上高 | 営業利益 [営業利益率(%)] |
---|---|---|
2003年 | 4.37兆ウォン (4370億円) | 0.89兆ウォン (890億円) [20.4%] |
2004年 | 9.09兆ウォン | 1.90兆ウォン [20.9%] |
2005年 | 8.72兆ウォン | 0.60兆ウォン [6.9%] |
2006年 | 13.92兆ウォン | 0.86兆ウォン [6.2%] |
2007年 | 17.06兆ウォン | 2.12兆ウォン [12.4%] |
2008年 | 21.52兆ウォン | 2.35兆ウォン [10.9%] |
2009年 | 22.20兆ウォン | 1.38兆ウォン [6.2%] |
2010年 | 29.92兆ウォン | 1.99兆ウォン [6.7%] |
2011年 | 29.24兆ウォン | -0.75兆ウォン [-2.6%] |
2012年 | 33.00兆ウォン | 3.21兆ウォン [9.7%] |
2013年 | 29.84兆ウォン | 2.98兆ウォン [10.0%] |
2014年 | 25.73兆ウォン | 0.66兆ウォン [2.5%] |
2015年 | 27.49兆ウォン | 2.30兆ウォン [8.3%] |
2016年 | 26.93兆ウォン | 2.23兆ウォン [8.2%] |
2017年 | 34.47兆ウォン | 5.40兆ウォン [15.6%] |
2018年 | 32.47兆ウォン | 2.62兆ウォン [8.0%] |
2019年 | 31.05兆ウォン | 1.58兆ウォン [5.0%] |
2020年 | 30.59兆ウォン | 2.24兆ウォン [7.3%] |
2021年 | 31.71兆ウォン | 4.46兆ウォン [14.0%] |
2022年 | 34.38兆ウォン | 5.95兆ウォン [17.3%] |
2023年 | 30.98兆ウォン | 5.57兆ウォン [18.0%] |
出所:Samsung。()内の日本円表記は1ウォン=0.1円で換算。サムスン電子のDP部門(ディスプレイパネル部門)の成績。セグメントが変わる前はLCD(液晶)部門の成績。なお、このデータはディスプレイパネルの業績であり、完成品としてのテレビの売上高は含まれていない。
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平均利益率
2003年から2022年までのサムスンディスプレイの営業利益率の平均は9.7%。
比較として、LGディスプレイの2000年から2022年までの営業利益率の平均が4.7%。シャープのディスプレイ部門の2009年から2022年までの営業利益率の平均が-1.9%。
比較として、LGディスプレイの2000年から2022年までの営業利益率の平均が4.7%。シャープのディスプレイ部門の2009年から2022年までの営業利益率の平均が-1.9%。
会社の動向
- サムスンディスプレーは、サムスン電子が株式85%を持つ子会社。決算報告では「DP部門」として公開。(2023年時点)
- 液晶分野では、中小型液晶パネルは競争が激しいため、大型の液晶パネルに注力。工場は中国に集中投資。
- 2001年、サムスンは有機EL(OLED)ディスプレイパネル開発のため、NECと合弁設立。その後、NECは資金難により撤退し、NECが保有するOLED関連の知的財産をサムスンに売却。
- サムスンは2009年から自社スマホ「Galaxy」に有機ELディスプレイ(OLED)を採用したとされる。
- 2010年代中盤から、中国メーカーの液晶パネルの技術と生産量が増加し、液晶では利益が出なくなる。この現象はシャープやジャパンディスプレイなども同様。
- アップルは2017年発売の「iPhone X」からサムスン製の有機ELパネル(OLED)を採用。それ以降、サムスンは有機ELパネルの外販で大きく利益を出していく。
- 2020年、赤字が続いた液晶事業から撤退を発表。液晶工場を中国TCL華星光電技術(CSOT)に売却。今後は有機ELパネルに注力。
- 全体とセグメント別の業績推移
- サムスン電子(全体)
- サムスン半導体
- サムスンのTV/家電
- サムスンのモバイル事業
- サムスングループ内企業の業績推移
- サムスン電子(全体)
- サムスンSDI
- SEMCO(サムスン電機)
- SEMES(半導体装置メーカー)
- サムスンバイオロジクス
- 競合の業績推移
- LGディスプレイ
- シャープ(ディスプレイ部門)
- ジャパンディスプレイ
- 中国BOE
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ディスプレイパネルメーカーの業績比較
企業 | 2019年/売上高 [営業利益/利益率(%)] |
2022年/売上高 [営業利益/利益率(%)] |
---|---|---|
サムスン電子 (韓国) |
3兆1050億円 [1264億円/5.0%] |
3兆4380億円 [5950億円/17.3%] |
BOE (中国) |
2兆3200億円 [380億円/1.6%] |
3兆5680億円 [-440億円/-1.2%] |
LGディスプレー (韓国) |
2兆3480億円 [-1360億円/-5.7%] |
2兆6152億円 [-2085億円/-8.0%] |
AUO (台湾) |
1兆824億円 [-812億円/-7.5%] |
9996億円 [-960億円/-9.6%] |
イノラックス (台湾) |
1兆72億円 [-792億円/-7.8%] |
8948億円 [-1268億円/-14.2%] |
シャープ (日本:液晶部門) |
1兆1313億円 [149億円/1.3%] |
7599億円 [-664億円/-8.7%] |
ジャパンディスプレイ (日本) |
5040億円 [-385億円/-7.6%] |
2707億円 [-444億円/-16.4%] |
出所:各メーカーの決算報告。日本円換算は、1ウォン=0.1円、1台湾ドル=4.0円、1中国元=20円で算出。
- 2022年度は、市況悪化の中、サムスンだけが唯一黒字。しかも利益率も17.3%と他社を圧倒。これは2021年に赤字続きだった液晶部門から完全撤退して、占有的な力をもつ「モバイル向け有機ELパネル」分野に特化した事が要因。
- 業界首位級の中国BOEは、中国政府からの補助金、電気代・水道代の優遇、税制の恩恵などがある中でも2022年度は業績悪化。
- この中で、JDI(ジャパンディスプレイ)だけが大型液晶パネルを生産しておらず、中小型の液晶パネルだけのビジネスなので、他社と比較して売上高が少ない。なお、JDIの中小型液晶パネルシェアは2019年でシェア15.3%(世界2位)となっている。
中国のディスプレイ企業
韓国のサムスンディスプレイやLGディスプレイを脅かす存在となる中国のディスプレイパネルメーカー以下。
- BOE
- Tianma(天馬微電子)
- TCL CSOT(TCLグループ)
- Ever Display Optronics
- Visionox
上記のメーカーは、有機ELパネル(OLED)に注力しており、韓国勢を追撃する見通し。
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2021年度のディスプレイパネル市場規模
- テレビ用液晶パネル……420億ドル
- スマートフォン用有機ELパネル……330億ドル
- ノートパソコン用液晶パネル……182億ドル
- モニタ用液晶パネル……173億ドル
- スマホ/タブレット用液晶パネル……169億ドル
合計1274億ドル。日本円で16兆5620億円(1ドル=130円換算)。
(出所:グランドビューリサーチ。2021年度の市場規模)
世界のエレクトロニクス産業の市場規模が約200兆円~250兆円と言われる中で、ディスプレイ分野は10%弱の存在。その市場をリードするのが、中国勢と韓国勢。
韓国勢は中国企業にシェアで抜かれる
国 | 2017年 | 2020年 | 2021年 |
---|---|---|---|
中国 | 21.0% | 36.2% | 41.5% |
韓国 | 44.4% | 36.9% | 33.2% |
日本 | 9.3% | 7.2% | 6.2% |
出所:オムディア。日本のシェアは、ジャパンディスプレイとシャープ(ディスプレイ部門)の売上高合計から市場規模で割った数値。(ポジテン算出)
- 調査会社オムディアによると、2021年の世界ディスプレイ市場で、中国のLCDとOLEDの合計売上高が648億ドルで、41.5%の市場シェアを獲得。国単位では韓国勢(サムスン+LG)を抜いてシェア1位となった。
- 韓国勢は、有機EL分野には強いが、液晶では中国メーカーに対して劣勢となっており、工場の撤退や生産縮小が続いていた。現在でも市場規模が大きい液晶パネル分野で存在感が低下したため、シェアで抜かれてしまった。
- 韓国がディスプレイ分野で首位陥落となったのは2004年以降17年ぶりとされる。
- なお、シャープやジャパンディスプレイなど日本勢のシェアは下げ止まっている感はある。DRAMメーカーのように全滅にならないようにしたい。
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サムスンの有機ELパネルと大型液晶パネルの世界シェア
年度 | 有機ELパネルシェア | 大型液晶パネルシェア |
---|---|---|
2014年 | 94.1% | 17.0% |
2015年 | 92.6% | 17.5% |
2016年 | 95.5% | 13.0% |
2017年 | 92.3% | 8.9% |
2018年 | 84.4% | 11.7% |
2019年 | 73.5% | 9.3% |
出所:オムディア
- サムスンの有機ELパネルの競合は、韓国LGディスプレイと中国BOE。サムスンは「モバイル向けの有機ELパネル」に強く、LGディスプレイは「大型有機ELパネル」に強い。
- 近年はBOEがモバイル向け有機ELパネルでシェアを伸ばしており、サムスンは年々シェアを落とし続けている。将来的にスマホ向け有機ELパネルの生産量でもサムスンを追い抜く可能性あり。量産技術が安定すれば、アップルiPhone向けへの納品量トップになる見込み。
- 大型液晶パネル分野では、中国メーカーの成長と共にサムスンは年々シェアが下落。そして、2020年に液晶から撤退を発表。
大型液晶パネルの2019年市場シェア
サムスンは、2020年に大型液晶パネル生産から撤退すると発表。(実際の売却はコロナ巣篭り需要急増で1年ほど延期)。撤退前の2019年の大型液晶パネルの成績を確認。
順位 | 企業 | 国 | 市場シェア(%) |
---|---|---|---|
1位 | LGディスプレイ | 韓国 | 24.0% |
2位 | BOE | 中国 | 20.7% |
3位 | AUO | 台湾 | 13.0% |
4位 | イノラックス | 台湾 | 12.2% |
5位 | サムスン | 韓国 | 9.3% |
6位 | TCL華星光電 | 中国 | 6.2% |
7位 | シャープ | 日本 | 4.7% |
出所:オムディア。なお、ジャパンディスプレイは大型液晶パネルは手掛けていない。
- サムスン(シェア9.3%)は、保有する中国工場をTCL華星光電(シェア6.2%)に売却。単純に合算すると、TCLは15%ほどのシェアに浮上する事になる。
- 大型液晶パネルの生産から撤退したサムスンは、ソニーやパナソニックなどと同じように液晶パネルをいくつかのサプライヤーから分散的に購入する立場となっている。シャープもサムスンのサプライヤーとなっている模様。
- なお、サムスンは中小型液晶パネルは早々に諦めている。中小型はプレーヤーが多すぎる激戦分野であり、日本ではシャープの他に、ソニー、東芝、日立なども生産していた。なお、その3社はのちに統合し、2012年にジャパンディスプレイ誕生となる。
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スマホ向け有機ELディスプレイ出荷台数が初の大幅減少
2022年、世界的な金利高による不況により、スマートフォン市場の需要が急落。サムスンが得意とするスマホ向け有機ELパネルの出荷数が初めて減少している。
2021年8億770万枚
2022年7億6200万枚(前年比4570万枚の減少)
2022年7億6200万枚(前年比4570万枚の減少)
- スマートフォンの世界販売台数が年々低下しているため、スマホ向けOLEDの大幅需要拡大は見込めない。今後はタブレット用OLEDやノートパソコン用OLEDの需要拡大を取り込む意向。
- サムスンディスプレイは、2022年度のパネル出荷枚数は減少した中で17.3%の利益率を出しているが、将来的に中国BOEの量産が本格化すると、今後はサムスンの利益率も減少してくる可能性あり。
- アップルは価格面の他に、ライバルのサムスンからのサプライヤー依存度を下げたい事情があり、BOEのOLEDパネルを積極採用する意向がある。また、中国のシャオミ、OPPO、VIVOなどのスマホメーカーにおいても、価格が高いサムスン製よりも自国メーカーのBOE製OLEDを採用していく見込み。
- サムスンディスプレイの一番の脅威は、中国BOEのOLED量産において、歩留り(良品率)が上がってくる事に違いない。
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