連結決算:通年の売上推移
年度 | 売上高・収益 [自動車販売台数] | 営業利益 [営業利益率(%)] | 純利益・最終損益 [純利益率(%)] |
---|---|---|---|
2013年 | 845.30億ユーロ (10兆9889億円) [440万台] | 20.50億ユーロ (2665億円) [2.4%] | 12.46億ユーロ (1619億円) [1.5%] |
2014年 | 960.90億ユーロ [480万台] | 32.23億ユーロ [3.4%] | 5.68億ユーロ [0.6%] |
2015年 | 1105.95億ユーロ [470万台] | 0.93億ユーロ [0.08%] | 3.34億ユーロ [0.3%] |
2016年 | 1110.18億ユーロ [470万台] | 18.14億ユーロ [1.6%] | 18.03億ユーロ [1.6%] |
2017年 | 1057.30億ユーロ [480万台] | 32.91億ユーロ [3.1%] | 35.10億ユーロ [3.3%] |
2018年 | 1104.12億ユーロ [479万台] | 33.30億ユーロ [3.0%] | 36.32億ユーロ [3.3%] |
2019年 | 1081.87億ユーロ [441万台] | 27.00億ユーロ [2.5%] | 66.30億ユーロ [6.1%] |
2020年 | 866.76億ユーロ (11兆2678億円) [343万台] | 21.65億ユーロ (2814億円) [2.5%] | 0.24億ユーロ (31億円) [0.03%] |
出所:FCA Archives。1ユーロ=130円で換算。
FCAの2013年から2020年までの営業利益率の平均が2.3%。
- 2014年に、クライスラーを完全買収した以降、利益率は低いが赤字を出していない。
- 2019年の大幅な最終増益は、傘下だったイタリアの自動車部品メーカーのマニエッティ・マレリの売却益として、37億6900万ユーロ(約4899億円)の計上したため。
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財政・経営状況
年度 | 総資産 | 負債総額 | 自己資本・純資産 [自己資本比率(%)] |
---|---|---|---|
2020年 | 997.30億ユーロ (12兆9649億円) |
211.17億ユーロ (2兆7452億円) |
258.61億ユーロ (3兆3619億円) [25.9%] |
1ユーロ=130円で換算。
- FCA(Fiat Chrysler Automobiles:フィアット・クライスラー・オートモービルズ)は、2014年にフィアットが傘下企業だった米国クライスラーを買収・統合した事により誕生した自動車メーカー。
- 2009年、フィアットは経営不振に陥っていた米国クライスラーに株式20%出資。その後も出資比率を拡大。
- 2014年、フィアットが米国クライスラーを買収。完全子会社化へ。
FCAの保有ブランド
イタリア(フィアット由来)
- FIAT(フィアット)
- abarth(アバルト)
- ALFA ROMEO(アルファロメオ)
- MASERATI(マセラティ)
- Lancia(ランチア)
アメリカ(クライスラー由来)
- CHRYSLER(クライスラー)
- JEEP(ジープ)
- Ram Trucks(ラム・トラックス)
- Dodge(ダッジ)
FCAは、ルイヴィトングループのように良いブランドを多数所有。売上の中核はJEEP、ラム・トラックス、フィアット。
各地域の販売台数
順位 | 国 | 販売台数 | 市場販売シェア |
---|---|---|---|
1位 | アメリカ | 182.1万台 | 12.2% |
2位 | ブラジル | 43.4万台 | 22.2% |
3位 | イタリア | 38.0万台 | 24.7% |
4位 | カナダ | 17.9万台 | 11.6% |
5位 | ドイツ | 12.7万台 | 4.0% |
6位 | フランス | 8.5万台 | 4.2% |
7位 | 中国 | 5.6万台 | 0.3% |
8位 | スペイン | 5.4万台 | 5.3% |
9位 | アルゼンチン | 4.9万台 | 15.2% |
10位 | メキシコ | 4.8万台 | 5.0% |
11位 | イギリス | 3.8万台 | 1.9% |
12位 | 日本 | 2.4万台 | 0.6% |
13位 | 韓国 | 0.9万台 | 0.5% |
14位 | オーストラリア | 0.8万台 | 0.9% |
15位 | インド | 0.6万台 | 0.2% |
- FCAの販売トップが巨大市場アメリカ。アメリカは自動車市場規模が年間1700万台前後(2019年度)の巨大市場で、そこでシェアを確保できているのは大きい。
- FCAの2020年度のグローバル販売台数が343万台だが、そのうちアメリカ市場では182万台を売上。
- FCAの販売台数全体の53%をアメリカが占め、ほとんどがクライスラー由来のブランドである「ラム・トラックス」や「ジープ」の売上。
- そして、肝心のヨーロッパでは販売台数はあまり多くない。
- ブラジルではGMやフォルクスワーゲンを抑えてFCAが販売数トップシェア。
- 巨大市場である中国の販売台数が低いのが痛い。
アメリカの販売数シェア
金額ベースのシェアではなく販売台数シェア。
順位 | メーカー | 2018年 | 2019年 | 2020年 |
---|---|---|---|---|
1位 | GM | 16.7% | 16.5% | 17.1% |
2位 | フォード | 14.1% | 13.8% | 13.7% |
3位 | トヨタ | 13.7% | 13.6% | 14.2% |
4位 | FCA | 12.6% | 12.6% | 12.2% |
5位 | ホンダ | 9.1% | 9.2% | 9.0% |
6位 | 現代/起亜 | 7.2% | 7.6% | 8.2% |
7位 | 日産 | 8.4% | 7.7% | 6.0% |
8位 | その他 | 18.2% | 19.0% | 19.6% |
- FCAのアメリカ市場シェアは2020年度で12.2%。メーカー別の販売台数ランキングでは4位。クライスラー由来のラム・トラックスやJEEPの販売台数が多い。
- 2019年度のRAMピックアップトラックの販売台数が63万台。FCAの業績を牽引。
ヨーロッパ販売台数シェア
順位 | メーカー | 2018年 | 2019年 | 2020年 |
---|---|---|---|---|
1位 | VW | 23.8% | 24.5% | 25.3% |
2位 | PSA | 16.0% | 15.5% | 14.3% |
3位 | ルノー | 10.4% | 10.5% | 10.3% |
4位 | BMW | 6.6% | 6.6% | 7.1% |
5位 | 現代/起亜 | 6.6% | 6.7% | 7.0% |
6位 | M・ベンツ | 6.2% | 6.3% | 6.5% |
7位 | FCA | 6.5% | 6.0% | 5.9% |
8位 | トヨタ | 4.9% | 5.2% | 5.8% |
9位 | フォード | 6.4% | 6.1% | 5.4% |
10位 | その他 | 12.3% | 12.4% | 12.1% |
- ヨーロッパでは、FCAの販売台数シェアは2020年度で5.9%とかなり低い。そして販売シェアは縮小傾向。イタリアを中心に欧州には工場を多く所有するが、生産規模の縮小に向かっている。
- なお、日本勢はトヨタが8位にランクイン。ホンダやマツダなどはトップ10入りしていないが、そこそこ売れている。日産は欧州市場を縮小。
日本市場での人気
日本市場において、FCAジャパンの2020年度の販売台数が2.4万台。日本シェア0.6%で輸入車シェア9.3%。
比較として、2020年度はメルセデスベンツが5.7万台、BMWがMINIブランドも含めて5.6万台、フォルクスワーゲンが3.6万台。FCAはドイツ勢に接近中。
日本では、JEEP、FIAT、アバルト、アルファロメオが売れている。特に日本でのJEEPの人気は根強く、JEEPディーラーが増えていたりする。2020年度の日本市場のジープ新車販売は5757台。
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PSAと経営統合
FCAは、フランスのPSAプジョーシトロエングループと経営統合し、2021年度からステランティス(Stellantis)としてスタートする。
最初、FCAはフランスのルノーに経営統合をもちかけ、企業間合意にまで至ったが、筆頭株主のフランス政府により破断。
そして、PSAにアプローチ。対等合併という形で合意に至り、2019年10月に経営統合を発表。これは将来性に危機感をもつFCAがPSA側にもちかけたもの。
- 米国クライスラー由来の販売数を除くと年間販売台数150万台程度。多数の工場がある欧州での生産規模が小さくなっており、ヨーロッパ企業との規模拡大を必要としていた。
- ガソリンエンジン車から電気自動車に変革する中で、スケールメリットが必要だった。
- EVの製造コストの40%がバッテリーであり、その調達コストを下げるために、どこかの自動車メーカーと組む必要があった。
- フォルクスワーゲン、ルノー日産アライアンス、トヨタとの競争についていくための規模拡大。
経営統合により、車体開発・設計の共通化、部品調達の共有、販売網の共通化など、コスト削減に向けていろいろメリットが生まれる。
しかし、FCAとPSAが経営統合したところで、ガソリンエンジンにおいては核心的な低燃費技術をもっておらず、EVにおいてはバッテリー内製化(量産化)技術をもっていないため、販売台数を拡大していくのは難しいと言える。
そういった危機感により「少しでも再編を」という事で経営統合に向かったという事でもある。
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